ゆかりの地、日本橋への回帰

——まず、このたびの東京本社移転の背景と経緯を教えてください。

角田:移転の計画は2019年から本格的に始動しました。その前年に経営層で移転の意思決定がなされ、プロジェクトチームが立ち上がりました。組織横断的なメンバーで構成し、オフィス構築などを専門とする外部パートナー企業にも入っていただきながら、新しいレイアウトや移転計画を組み立てていきました。

総務部の角田チームリーダー

実は、日本橋という場所は住友化学にとって非常に縁のある土地なのです。かつて関西から東京へ進出した際、この場所に拠点を開いたという歴史があります。

 

前オフィスの新川(東京住友ツインビルディング東館)には1993年に移転したのですが、そこから30年近くが経過し、交通利便性なども考慮して日本橋への回帰を前提に新しいオフィスの検討を始めました。

本格和室『一如庵』やイベントホールを備えた多機能な社員食堂

「わくわくワークプレイス」とは?

——新オフィスのコンセプト「INNOVATION REACTOR ~わくわくワークプレイス~」について、詳しく紹介してください。

山本:社員がワクワクしながら働ける職場、思わず出社したくなるような環境を提供することで、一人一人に活気が生まれ、結果として業務効率の向上につながる。そんなオフィスを目指しました。

 

「REACTOR」は反応釜という意味で、化学反応が起きる装置を指します。社員が部署や部門の枠を超えて自由に混ざり合い、協業することでイノベーションが生まれる。総合化学メーカーらしく、オフィスを反応釜に見立てて、日々ワクワクしながらアイデアが湧き出る。そんな場所にしたいという思いを込めています。

 

また、当時の岩田社長(現会長)が新聞のインタビューで「スキップして出社したくなるくらい働きやすい職場を実現したい」と語っていたことも、軽やかで楽しいといったコンセプトを作る上での後押しになりました。

一人で静かに過ごす席から、グループで囲めるテーブルまで、バリエーション豊かな座席が用意された社員食堂

——そうしたコンセプトを具現化するため、オフィスにどのような工夫を施されたのでしょうか?

角田:執務エリアの中心部には、コーヒーマシンやオフィスコンビニ、デジタルサイネージ、文具コーナー、複合機、シュレッダーなどを集約して配置しました。これにより、社員が自然と集まり、交流が生まれる仕組みになっています。

 

また、執務デスクの合間には多数のミーティングスペースを設け、タイムリーに打ち合わせや相談、意思決定ができるようにしました。一方で、窓際にはWeb会議用のブースや、集中しやすいデスクを設置しています。交流ゾーンと集中ゾーンをバランスよく配置することで、社員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を用意しました。

美味しいコーヒーと焼き菓子で心身をチャージ。社員が集まり、自然な交流が生まれるきっかけに

若手の声を反映したオフィス

——若手社員の意見も積極的に取り入れたと伺いました。

山本:プロジェクトメンバーは若手中心で選びました。今後長く勤めてもらうわけですし、彼ら、彼女らが働きやすいと感じる環境にすることが会社の将来にとって重要だと考えたからです。若手ならではの新しい発想、斬新かつ画期的なアイデアに期待していました。実際に、グループアドレス(部署ごとのフリーアドレス)や、窓際ゾーンを打合せ・集中スペース等にする(ひな壇の廃止)、中・小会議室を各フロアに配置する等、様々な意見を取り入れました。

 

また、実際に生まれたユニークな空間が、16階の食堂スペース隣にある多目的ラウンジ内の和室です。「一如庵」と名付けておりますが、その名称は住友の事業精神の理念である「自利利他 公私一如」に由来しています。
靴を脱いで畳の上でリラックスしながら仕事ができる空間がほしいという意見から生まれました。障子で仕切れば個室としても使えますし、茶道部のための茶道セットも備えています。結果的に、非常にユニークでシンボル的な存在になりました。

掘りごたつ席での懇親会ができるスペース
総務部の山本さん

——部署別フリーアドレス制を導入されましたが、その効果は現れていますか?

角田:業務上のコミュニケーションが必要なメンバー同士が、日々近くに座れるようになりました。在宅勤務や出張、外出などで全員がそろわない場合でも、出社している社員が自由にスペースを有効活用できています。

 

また、完全なフリーアドレスではなく部署ごとにエリアを固定しているため、他部署の社員が訪ねてきた際にも人を見つけやすくなっています。各フロアには全社的な共有スペースも全体の2〜3割程度設けており、普段とは違う場所で働くことも可能です。

 

以前は自分の席だけで一日の仕事が完結していました。今はハサミ一つ取りに行くにも、プリンターを使うにも、すべて中央の共有スペースへ足を運ぶ必要があります。それによって他の社員とすれ違う機会が格段に増え、偶発的な会話や交流が生まれやすくなっています。

壁面の大型ディスプレイが目を引く、白を基調とした開放的なエントランス。洗練されたデザインと映像技術が融合した空間
エントランスにはオープンブースも完備。来客時のちょっとした打ち合わせや、クイックな商談に最適

多様なライフスタイルを尊重し合う風土

——在宅勤務などの制度はあるのでしょうか?

角田:育児や介護が必要な場合や、自宅の方が業務効率が向上すると判断される場合は、週2回まで在宅勤務が利用できます。例えば、終日Web研修を受講する際などは、出社しても個室にこもることになるため、在宅勤務を選択するケースもあります。

開放感あふれる応接室エリア。多彩なスペースが円滑なコミュニケーションを促進
各応接室の名称には、住友化学にゆかりのある元素記号を採用

「困ったらSYNERGYCAへ」という新たなコミュニケーション

——オフィス移転とほぼ同時に開設された「SYNERGYCA 共創ラウンジ」について教えてください。

古山:以前の拠点(新川オフィス)にはショールームすらなく、ご来客の待合室に古い住友ゆかりの文書や社史などが数冊並んでいる程度でした。これまで「自社のことを社外に知ってもらう」という活動にはあまり積極的ではなかったのだと思います。

 

かつては素材メーカーとして、特定のお客様(企業)とのお付き合いがあれば、事業を成長させていくことができたかもしれません。しかし時代の変化とともにビジネスの在り方も推移し、より広く異業種や社会全体と接点を持つことの重要性が増しました。そんな時代において、自社のプレゼンスをどう発信していくべきか、そして得られた接点からどのように新しい価値創造へと繋げたら良いか、ということを考えるようになりました。そこで、東京本社移転のタイミングで、物理的な発信と共創の拠点を構えることを企画しました。それが「SYNERGYCA 共創ラウンジ」です。

SYNERGYCA 共創ラウンジの古山プロデューサー

SYNERGYCAは、私たちの製品がどう社会で活用されているかを分かりやすく知っていただける場所、そして会議室とは異なる雰囲気の中で新たな対話が生まれるような、奥行きのある場所にしたいという想いを形にし、「共創ラウンジ」として2021年12月にオープンすることとなりました。その名前のとおり、当社の技術を楽しく身近に感じていただきながら、次の一歩を共に考えることで新しい価値が生まれて来る、そんな空間を目指しています。必要に応じてプロのファシリテーターの力も借りながら、ここで生まれる価値が最大化されるように運営しています。

 

現在私は、この施設を拠点としながら、SYNERGYCAへのご来客の皆さんの体験価値を最大化するようなプロデュースはもちろんのこと、社内外のつながりや連携が生まれるような、そしてそれが未来に向けたあたらしい取り組みのきっかけとなるような企画を考え、運営することも仕事としています。

円を重ねたデザインが印象的な「SYNERGYCA」。互いを知り、活発に語り合うための工夫が随所に見られる柔らかな雰囲気
外光が降り注ぐ、開放感あふれるオープンスペース。リフレッシュした気分で、自由に、フラットに意見やアイデアを交わせる空間

――SYNERGYCAの具体的な取り組みと、導入による変化を教えてください。

古山:社内外の方が見学できる展示スペースという役割の他に、SYNERGYCAには大きく二つの役割があると考えています。共創ラウンジですから一つ目は社内外をつなぐ「共創のハブ」としての役割です。以前は、社外から誰かと繋いでほしい、こういう事のできる人にコンタクトをしたい、と相談を受けても、社員個人のネットワークの範囲で連携するに留まることが多かったと思いますが、オープンから4年を経て、少しずつ「困ったらSYNERGYCAへ」という流れができて来ていると思います。SYNERGYCAをこれまでに利用してくれた社員が沢山いますので、そういったネットワークも活用しながら、社内のメンバーに声をかけ、議論の場をセッティングしています。実際に複数の協業がスタートしており、SYNERGYCAでの出会いが将来の大きな成果に繋がることに期待しています。

 

2つ目は「発信」です。最近、まだ世の中に出ていない試作品などの「技術の種(シーズ)」を展示するスペースを設けました。今まで接点のなかった人たちに見ていただき、フィードバックを得ることで、新たなつながりやアイデアを生むきっかけになれば、という想いから生まれたスペースです。大きな会社で、当社グループの中でさえも他部署や他社の持っている技術を全て知ることは困難ななか、この取り組みをきっかけとしたコラボレーションが生まれつつあり、効果を実感しています。また、私たち自身が発信媒体となって、社内外へ住友化学や会社の取り組みについて、さらにはより広く「化学(科学)の面白さ」を伝えていくことにも取り組んでいます。他の企業様の企画に参画してワークショップを開催したり、会社紹介をしたり、すぐには成果に結びつかないかもしれませんが、広い視野、長い目で捉えて取り組むようにしています。

継続的なオフィス改善は必須

——東京本社移転から4年が経ち、オフィス内では新たな動きも生まれているのでしょうか?

角田:社員一人ひとりの多様なライフスタイルや時勢にともなう働き方の変化に合わせ、継続的なオフィス改善が必要だと考えています。例えば、執務エリア中央の共有スペースは「集中している人の横で話すのは気が引ける」という声がありました。そこで、新スペースでは配置を見直すなどの工夫をしています。

 

また、人が集まる仕掛けとしてコーヒーマシンを設置していましたが、さらにオフィスコンビニ(お菓子)の設置も後から導入しました。こうしたPDCAをさらに加速させるため、2025年11月には各部門からの組織横断的なメンバーによる新たなプロジェクトチームを立ち上げています。今後も、社員がより働きやすいと感じる環境を追求していきたいですね。

執務エリアの一角には、コーヒーやお菓子を備えたリフレッシュコーナーを設置
外を眺めながら作業できる窓際のソロワークスペース。開放的な景色が気分転換を促し、作業の生産性を高めてくれる

——最後に、皆さんが住友化学で働くうえで感じる魅力を教えてください。

古山: 「やりたいこと」がある人に対して、それを発信すれば(筋が通っていれば)やらせてくれる、非常に懐の深い会社だと感じています。私自身、研究職として入社しましたが、共同研究に携わった後、「事業を作りたい」と志願して異動させてもらったり、さらには理系出身でありながら人事部で経験を積んだりと、多様な部署を渡り歩いてきました。

 

長く勤務する中で、「辞めようかな」と思った瞬間が何度か訪れたのも事実です。でも、上司は私を理解しようと努めてくれたり、思い切って仕事を任せてくれたりして、ここまで「大事に育ててもらった」という実感があります。それが、会社への恩返しをしたい、この会社でまだ自分にできることがある気がする、という気持ちに繋がって、今に至るのだと考えています。

 

もう一つの魅力は、「密かにすごい人」が至る所にいることです。フルマラソンの記録保持者や自転車レースの優勝者、研究で大きな賞を獲った人などが普通に働いています。皆さん驚くほど遠慮深くて自分からは語りませんが、そうした一芸に秀でるまでやり抜く力を持った人たちが、真摯に仕事に向き合っている姿にはいつも刺激をもらっています。

 

角田: 社員はみんな真面目で謙虚、本当に「良い性格の人」に囲まれているなと日々実感します。今回のオフィス移転プロジェクトもそうですが、一人一人が会社の未来を想って着実に動く。そんな穏やかで誠実な社風が、住友化学の一番の強みだと思います。

 

山本: 私は一つ一つの仕事の「丁寧さ」と「確実さ」に魅力を感じます。例えば、本社移転時やオフィスレイアウト変更時には、各部署の担当の方々と打ち合わせを行いますが、一つずつ丁寧にコミュニケーションをとってくれます。また、こちらが依頼したことに対してもすぐに協力してくれる、その安心感こそが、この会社での「働きやすさ」の根幹にあるのではないでしょうか。

——ありがとうございました。

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取材のウラ側

取材で最も驚いたのは、16階の食堂に本格的な和室が設けられていることです。昼は食事、夜は掘りごたつ形式で懇親会も開ける多機能な空間で、お店の予約が難しい大人数の集まりにも便利です。食事は食堂のスタッフの方が腕を振るって提供してくださるそうで、その充実ぶりにも驚かされました。
また、食堂全体は昼食時以外、モニター付きソファ席で会議やWeb会議ができるワークスペースとして開放されています。利便性とリラックスを兼ね備えたこの場所は、部署を超えた交流や社員の一体感を育む、「わくわくワークプレイス」を象徴する拠点となっていました。

編集部が推したい福利厚生や支援制度
1.従業員の健康支援施策

産業保健スタッフや健康保険組合と連携し、従業員の生活習慣改善や、メンタルヘルス不調の未然防止に取り組まれています。また、社員食堂での栄養バランスメニューの提供、運動習慣の定着を目的としたウォーキングイベントの開催、各所スポーツジムとの提携によるトレーニング環境の充実など、従業員が心身ともに健康的な生活を送れるよう、多くの健康支援施策が推進されています。

2. 充実した育児・介護支援

国内5拠点に事業所内保育所を設置しているほか、託児所やベビーシッター、介護施設などを会員価格で利用できる育児介護支援サービスが導入されています。また、育児・介護事由での時短勤務や在宅勤務が利用できるなど、ライフイベントとキャリアの両立を図ることができます。

3. 多彩な休暇制度

有休平均取得率が80%以上となっているなど、仕事とプライベートを両立しやすい環境が整っています。ライフサポート休暇(不妊治療休暇)や出産サポート休暇、休暇請求権の消滅した有給休暇(最大60日)など、育児・介護で取得できる様々な休暇制度もあります。