インタビューを受けてくださった人事部の中里さん。(写真右側)

ビジネスの力で宮崎をさらに活性化させる

ITベンチャーといえば、東京などの大都市に拠点を構えるイメージが強いかもしれない。にもかかわらず、クラフはなぜ本拠地に宮崎を選んだのだろうか。そこには地方創生にかける代表の熱い思いがあった。

 

――宮崎で創業された背景についてお聞かせください。

 

中里桃子さん(以下、中里さん) 実は、代表である藤崎が宮崎県出身なんです。

宮崎は、地方ならではの課題といいますか、仕事の選択肢が少ないため、若い人たちの多くは県外に出て行くんですね。宮崎に残って就職したくても、スキルが身につく仕事が少なく、需要と供給のバランスがなかなか安定しない現実があります。

 

創業にあたっては、これまでIT業界で培ってきたキャリアをいかし、宮崎に住むIT未経験の方々に、IT業界へと転身できるキッカケの場所となりたい、そして、地方に住んでいても社会に必要とされる力をつけられる、都会と同じように活躍できる場所をつくりたいという強い想いから生まれた会社です。

社員は宮崎出身者が多く、皆さん穏やかなで優しい方ばかりだ。

――実際、どんな方々が働かれていますか?

 

中里さん 私も含め、社員は地元で働きたいと願っていた宮崎の人ばかりです。当社のユニークなところは、もともとITとは関係のない、様々な職歴を持つ人が集まっているところかもしれません。

 

前職が飲食店だったり、工場勤務だったり、ガスの配送業務だったり。それまで全く違う業界で働いていた人がたくさん入社しています。当社では未経験の人でも都会と同じレベルの経験を積める仕組みをつくっているので、やる気さえあればしっかりとしたスキルが身につきます。

 

具体的には、採用時に適性検査を取り入れており、そこでポテンシャルを見極めます。タイピングの速さをチェックしたり、指示された通りのタスクができているかを確認したりする中で、性格的な向き・不向きを判断しています。そうすることで、「やっぱり合わない」という入社後のズレを防げるんです。

 

セキュリティ診断士の業務では、地道な作業が続きます。コツコツと積み重ねることが得意な人であれば、経験を問わず向いている職業だと思います。

磐石な研修制度で、地方にIT人材を育てる

Webアプリケーションの脆弱性診断を行うクラフでは、社内で「セキュリティ診断士」という独自の資格をつくり、従業員を育てている。高い専門性が必要と言われるこの分野で、未経験者が活躍できる理由を尋ねてみた。

 

――「セキュリティ診断士」について詳しく教えてください。

 

作田幸雄さん(以下、作田さん) Webサイトやブログ、SNS、ネットバンキングなどのWebアプリケーションに対して、ハッカーが攻撃する隙がないかをチェックする仕事です。

 

Webサービスは年々増えていますが、それとともにセキュリティ診断の需要も増加傾向にあります。今までは知識のあるエンジニアが属人的に行うことが多かったのですが、柔軟に対応できる人が少ないという課題がありました。これを解決すべく、親会社の株式会社SHIFT SECURITYとともにつくり上げた仕組みが「セキュリティ診断士」です。

 

――未経験の人が、専門性を必要とする仕事に就くには大変な努力がいるのでは?

 

作田さん もちろん努力は必要ですが、効率的に学べるような教育体制を整えています。エンジニアの持つ知識を体系化しているので、未経験の人でも半年の研修で一人前に育ちます。

 

リモートワークも選択できますが、原則、新しく入社した方には出社してもらい、わからないところがあったときは先輩社員に聞いてもらうようにしています。先輩も未経験で入社した人がほとんどなので質問もしやすく、スムーズに社内に溶け込めているようです。

年齢給の導入に踏み切った理由

昨今、IT業界といえば能力給を採用している企業が多いが、IT人材が少ない地方では、そうした仕組みが馴染みにくい。クラフでは同社の理念に基づいた給与制度を導入しており、地方での雇用に貢献している。

 

――大都市と地方では、給与に差があるのが現実かと思います。この課題をどう解決されているのでしょうか。

 

中里さん 当社では正社員に対して「年齢給」を採用しています。地元でがんばろうと決めた人たちは宮崎への愛があり、その多くが穏やかに暮らすことを望んでいます。そうした従業員にとっては、人生の見通しを立てられることが安心につながるので、年齢を重ねるごとにお給料が上がる年齢給にしているんです。ITベンチャーとしては珍しいかもしれませんね。

 

また、契約社員に対しては未経験からでも着実にステップアップできるように、5つの職級を用意しています。評価システムには次のステップに上がるために何をすれば良いのかを具体的に示しているので、前職の経験や年齢・性別にかかわらず昇級のチャンスがあります。

「安心」を提供する会社であり続けるために

――リモートワークはどの程度浸透していますか?

 

中里さん 研修中の従業員以外はほとんど出社する必要がないので、8割くらいがリモートで働いています。ただ昨年、新しいオフィスに移ったので、出社する社員がまた増えていますね。

 

オフィスは、宮崎駅に隣接する新築ビルの最上階にあって、1フロアをすべてお借りしています。景色がよくて、とても気持ちがいいんですよ。宮崎では、IT企業といってもまだまだ馴染みがありません。ですが、「あのビルに入っているなら安心ね」と、ご家族にも好評です。

 

――新オフィスの特徴を教えてください。

 

中里さん オフィスの設計にはコロナ対策も取り入れています。出社する際は、会社のシステムを通して出社予約や座席指定をしたり、ソーシャルディスタンスを確保できるようゆったりとしたデスクの配置にしたり。安心感を意識したデザインになっています。

 

余談ですが、実は「安心」は当社のキーワードなんです。「『安心』を提供する会社で在り続ける」がミッションなので、それをオフィスにも反映させました。

クラフ宮崎本社。オフィスデザインの詳細はコチラ

 

――素敵なミッションですね。

 

中里さん お客様はもちろん、従業員やその家族にも安心を感じていただきたいと思っています。セキュリティ診断士の仕事はしっかりと仕組み化されているので、ご家族が病気のときには気兼ねなく休んでもらえるのも、安心して働ける理由の一つかもしれません。急病以外にも、納期が厳しくて人手が必要なときは、他のチームから応援を呼んで対応できるようにしているため、基本的に残業もありません。

「セキュリティー診断士」として働かれている皆さん。

当社に入ってから、プライベートの時間が増えて生活が充実したと言ってくれる社員も多くいます。

 

今後は地域の方々との交流を広げ、宮崎にこんな会社があるんだよということを知っていただきたいと考えています。

 

今年の2月には代表の藤崎が、市内の中学校で「働く」をテーマにした講義を行いました。これをきっかけに、県内の中学生や高校生のキャリア形成をサポートする機会を積極的に創出していく予定です。

 

また、オフィスが入る駅前の立地を活かし、周辺の清掃活動やIT・セキュリティに関する公開講座も企画しています。

 

 

今後も、地元・宮崎の人に「ここで働きたい」と思ってもらえるよう、安心を提供する会社であり続けたいですね。

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取材のウラ側

地方ではまだまだ馴染みが薄いITベンチャー。にもかかわらず、クラフは創業わずか3年という短い期間で、従業員数100名を超す宮崎有数の企業になった。「安心」をキーワードに、未経験者を広く受け入れるその姿勢から、地方の企業が学べることは決して少なくないだろう。今後ますます需要が高まると予想されるセキュリティ診断においてはもちろん、地方でワークライフバランスを実現するモデルとしても、同社はさらに存在感を増していくに違いない。