広々とした受付スペースに足を踏み入れると、数々の名作がお出迎え。思わず胸が熱くなる空間

グループ各社の多様な文化を束ねた船出のコンセプト

——まずは簡単に部署の業務内容をご紹介いただけますか。

波多江:総務本部ファシリティサービス部は、大崎本社のファシリティ全般を一括管理しており、社員食堂や講堂といった共有エリアの運営・管理から、備品や設備の更新まで幅広く担当しています。併せて、セガとサミーの総務機能をシェアードサービスとして行っているため、例えば、サミーの全国27カ所のオフィス管理やセガのモーションキャプチャースタジオ等の建物管理も私たちの部署が担っています。

総務本部ファシリティサービス部 部長 設備管理課 課長の波多江文吾さん

——2018年、大崎に拠点を集約されました。どのようなコンセプトでオフィスをつくられたのでしょうか。

波多江:セガサミーホールディングスは2004年に設立しました。ホールディングスは汐留(港区)、セガは大鳥居(大田区)、サミーは池袋(豊島区)などと、各本社の拠点がバラバラでした。グループシナジーの創出を掲げてはいたものの、物理的な距離もあって、なかなか実現が難しい状況だったのです。

 

そこで2018年、本社機能の集約を機に、「壮大な旅を予感させる港」をコンセプトとしたオフィス「GRAND HARBOR」を構築しました。グループ各社それぞれが独自に築いてきた企業文化をどうつなぎ合わせるかが、当初の大きなテーマでした。加えて、当社が掲げるGroup Mission / Purposeを日常的に感じられるオフィスを目指したのです。

反対側に目を向けると、数々の人気キャラクターたちがずらり。グループの歴史と魅力がギュッと詰まった圧巻の展示

——受付エリアには実際の製品や、ゲームの筐体などが並んでいて、テーマパークのような雰囲気ですね。

波多江:もともとはここまで製品を置く想定ではなかったんです。ただ、エンタテインメントコンテンツ事業、遊技機事業、ゲーミング事業と、まったく業態の異なる事業を一つの企業グループとして見せるには、受付に実際の製品を並べたほうが分かりやすいだろうと、後から設置しました。

 

例えば、「北斗の拳」の初代パチスロ機を展示していますが、実際には操作できず自動回転でしか見られないにもかかわらず、往年のパチスロファンの方はかなり興味を示してくれます。カジノ機器は実際に稼働しているものをそのまま設置し、マックスベット(最大の賭け金)に設定してあるので、現実だったら破産してしまうくらい自由に楽しんでいただけますよ(笑)。

CABIN(客室)をイメージした待合エリア。世界地図や世界時計、旅行鞄が並び、足を踏み入れた瞬間から胸が高揚する特別な空間

役員も同じ空間で執務、誰もが声をかけやすい風土へ

——新オフィスになってから8年が経ちましたが、社員同士のコラボレーションや交流の面でどのような進展がありましたか。

波多江:社員食堂でグループ各社の製品やサービスとコラボしたメニューを出したり、それぞれの創業を祝う日にイベントを実施したりしています。こうした場を通じて、お互いがお互いを知れるようになったことは大きな変化です。オフィスを集約しなければ、自分から情報を取りにいかない限りグループ会社のことを知り得なかったわけですから。

 

また、社員同士だけではなく、経営陣と社員の距離を縮めるための工夫もしています。新オフィスの設計段階から、役員も一般社員と同じ空間で執務するレイアウトにしたのです。個室の役員室は横に一応残していますが、基本的には外に席を構え、社員が話しかけやすい環境をつくっています。

 

実際、役員のデスクがすぐ隣にあるので、社員はよく声をかけられるようになりました。逆に社員から話しかける時も、従来のように個室に入っていると状況がわからないため「大丈夫だろうか」と躊躇しますが、オープンな環境だと様子を見ながら「今、ちょっとよろしいですか」などと声をかけやすいです。最初のころはフロアを社長が歩いているのを見て驚いたりもしましたが、今ではすっかり日常の光景です。

コロナ禍を契機に社員食堂をリニューアル

——この8年の間に、オフィスの中身で変化した部分はありますか。

波多江:大きな転機はコロナ禍でした。出社を控える時期があり、フロアの一部をビルオーナー会社と相談の上、返却するなど、さまざまな再構築を行いました。中でも象徴的なのが社員食堂の改装です。もともと約720席あった食堂ですが、出社率の低下や在宅勤務の広がりによって、従来の広さを見直すことになりました。

波多江:そこで新しい働き方に対応するため、食堂の一部を「FREEPORT」として再構築しました。人との交流を促すコミュニケーションエリアと、創造力を広げるインスピレーションエリアがあり、インスピレーションエリアにはライブラリースペース「The Library」なども設けています。

波多江:また、執務エリアには、より集中したい人向けに「ANCHOR」というスペースも新設しました。Web会議用の個室ブース以外は基本的に会話NGとし、とにかく仕事に集中できる環境を整えています。

波多江:直近では昨年8月に社員食堂自体もリニューアルしました。コロナ禍以前は社員が連れ立って食事をとる光景が多く見られましたが、コロナ禍を境に一人で食事する社員が急増しました。ところが、従来は窓際の一部しか個人席がなく、4人席や8人席を一人で使わざるを得ない状況が常態化していたのです。この課題を解消するため、約1年半かけて計画を練り上げてリニューアルに踏み切りました。

波多江:同時に着目したのが、食堂のアイドルタイムの活用です。朝、昼、晩の食事提供時間以外、特に午後3時から6時にかけては、あれだけ広いスペースがほとんど使われていませんでした。そこで、皆で打ち合わせができるコンセプトブースを設けて、これまで一切設置していなかったモニターを4席分導入しました。電源コンセントも各所に大幅増設し、充電しながら作業できる環境を整えました。結果として、食事をとる場としてだけでなく、打ち合わせや個人作業の場としても機能する、時間帯によって表情を変える多目的な空間へと生まれ変わりました。

 

実際、会議室にこもるより、食堂のほうがオープンで、カジュアルに話し合えるという声もあります。カフェは午後5時まで営業しているので、ドリンクを飲みながらの雑談の場としても活用されていますね。会議室で顔を合わせるとどうしてもよそよそしくなりがちですが、リラックスできる食堂で対面すると、また違ったコミュニケーションが生まれるように感じます。

——社員食堂に関して、コラボメニューも大きな特徴だと伺いました。

野田:はい、グループ各社が持つコンテンツやIP(知的財産)の記念日に合わせて提供しているのが、コラボメニューです。大崎のグループ本社には22社、約6,500名が勤務しており、正直なところ、各社がどんな事業を手がけているのか知らない社員も少なくありません。そこで、さまざまな会社の人が集まる社員食堂という場を活用し、各社への理解や交流のきっかけをつくることを目的にしています。

総務本部 ファシリティサービス部 設備管理課の野田哲郎さん

野田:例えば、「サミーの日」(3月31日)、「セガの日」(6月3日)、セガの看板キャラクターである「ソニック」や「ぷよぷよ」の周年記念など、グループ各社の製品やサービス、IPと連動したコラボレーションメニューを展開しています。また、国際女性デーなど、社内イベントや季節の行事に合わせた特別メニューも提供しています。こうした取り組みは、実施を重ねる中でグループ各社から「うちもやりたい」という相談が増え、現在では年間20回を超えるコラボレーションメニューやイベントメニューを展開しています。

 

今年8月には、社員食堂の8周年を記念して、鶏肉の唐揚げの盛り放題(最大15個)を実施したところ、一日平均1400食のうち約640食が盛り放題メニューで、半数近くの利用者が注文するほどの盛況ぶりでした。

 

波多江: ちなみに、過去にはセガの日にコーポレートカラーである青色のチャーハンを出したことがあるのですが、まったく人気がありませんでした(笑)。その後、試行錯誤を重ねて、今年は青いゼリーにしたところ、こちらは好評でした。

 

野田:基本的にコラボメニューの企画案は各担当者が考案してくれます。 そのこだわりには私たちも助けられています。社員が食堂の様子などをSNSに投稿することもあり、社外への情報発信にもつながっていますね。

▼セガ設立記念日に合わせて行われた「セガの日」コラボメニュー

 

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“名物クルー”が社員の交流を生み出す

——「 FREEPORT」の活用について、もう少し詳しく教えていただけますか。

波多江:ハード面だけを整えても人は自然には集まりません。何かしら運営面での仕掛けが必要だと考え、「FREEPORT」では無料のコーヒーやフレーバードリンクを提供することにしました。これが大成功で、月間の提供数はおよそ1万4000杯にのぼります。夏はアイスコーヒーやアイスティーに切り替えたり、「3」のつく日はフレーバーウォーターを炭酸入りにしたりと、季節や日にちに応じて工夫を凝らしています。「今日は3の日だから、FREEPORTに行ってみよう」などと、社員同士のちょっとしたコミュニケーションのきっかけにもなっているようです。

無料のコーヒーやフレーバードリンクが提供される「FREEPORT」

波多江:さらに、「FREEPORT」には給食会社の方に専属クルーとして常駐してもらっています。設備面の気付きを共有してもらう役割もありますが、何より社員同士のコミュニケーションの橋渡し役を担ってくれていて、いつ訪れても誰かがそのクルーと話をしているんです。私自身も、そこで初めて出会ったグループ会社の新入社員と自然に会話が始まったことがあります。今ではなくてはならない“名物クルー”です。

——会議室にもユニークな仕掛けがあるとか。

野田:私たちはエンタテインメント企業ですから、来訪されたお客さまにも楽しんでいただきたいという思いが強くあります。来客用会議室は全25室あり、AからYまでの頭文字で始まる、世界各地の港町の名前がついています。「Y」はヨコハマ、「A」はアムステルダムといった具合です。あえて「Z」の部屋はつくっていません。これは「Z」から始まる会議室を設けないことで、“終わりのない旅”を表現しています。

野田:各会議室の内装も、その都市をイメージしたデザインの壁紙や床、什器で統一しています。総合受付の裏手にある待合スペースは船室をイメージしており、テーブルに見えるものが、実は旅行用トランクだったり、壁一面に世界地図が描かれ、各会議室の位置を示していたりと、細部まで作り込まれています。

波多江:総合受付の脇に置かれた錨も、実は本物なのですよ。

野田:そのほか、来客用会議室のある共有エリアには、ドリームキャストやUFOキャッチャーなどセガの歴史的なコンテンツを冠した部屋や、サミー独自のパチスロのプレミア演出名などが付けられた部屋もあり、昔からのファンにとっては懐かしさを感じられる仕掛けになっています。

——会話が弾んだり、コミュニケーションが活性化したりする要素が随所に散りばめられていますね。

野田:「&BAR(エンデバー)」と呼ばれるバーエリアもその一つだと思います。ダーツの機械やバカラのテーブル、ゲーム機を備え、朝からダーツを楽しむ社員がいれば、昼休みにはポーカー大会やゲーム対戦が繰り広げられることもよくあります。

波多江:大型スクリーンを用意して、セガサミーグループが運営するプロバスケットボールチーム「東京サンロッカーズ」の試合を皆で応援したり、麻雀・Mリーグの「セガサミーフェニックス」の対局を中継したりと、社内イベントの場所としても活用されています。知らない社員同士でも、応援を通じて自然とつながりが生まれていると感じています。

ある社員が退職を踏みとどまったワケ

——こうした交流を生む取り組みは、どのように始まったのでしょうか。

波多江:大崎に本社オフィスができた際、総務本部内に「コミュニケーション推進課」という部署が新設されました。グループシナジーを生み出すには、まず社員同士のコミュニケーションを活性化させる仕掛けが必要だという発想からです。私も当初はこの部署に在籍していました。

 

そこで取り組んだことの一つが、各社がそれぞれ実施していた家族向けイベントを、グループ全体の「ファミリーデー」として統合したことです。2019年に初めて実施し、社員の家族にセガサミーの事業を体感してもらうことを目的としています。その後、家族だけでなく、社員にとって大切な人をお呼びする「セガサミーグループデー」に改称しました。今年は8月に開催し、2500人ほどの申し込みがありました。

 

このイベントでは、忘れられないエピソードがあります。たしか初回だったと思うのですが、既に退職を決意して人事手続きを進めていたある社員が、せっかくの機会だからと家族をイベントに招待したところ、お子さんが当社のコンテンツを心から楽しんでくれて、「お父さんの会社って、こんなことをしているんだね」と大喜びしたのです。そうした様子を見て、その社員は退職を思いとどまったそうです。

 

運営していた身としては、本当に感動的な出来事でした。社員やその家族に貴重な体験を届けられたのは、大崎のオフィスに集まってグループとして一体となったからこそ、実現できたことだと思っています。

 

私たちファシリティサービス部の仕事は、オフィスや施設のトラブルをゼロにすることが当たり前とされがちです。でも、本当に大切なのは、そこからどれだけプラスアルファを生み出せるか。私たちが稼ぐ部門ではない以上、社員の皆さんが働きやすい環境で存分に力を発揮できるかどうかが、グループ全体の盛り上がりを左右すると考えています。マイナスをゼロに、そしてゼロからどれだけプラスをつくれるか。このことを常に問い続けながら、これからもオフィスづくりに取り組んでいきたいです。

——素敵なお話をありがとうございました。

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取材のウラ側

記者が取材を通じて最も強く印象に残ったのは、ハード面の整備にとどまらない「ソフト面の運用に対する圧倒的なこだわり」です。無料ドリンクを提供するだけでなく専属クルーを配置して社員同士の対話を促したり、年間20回を超えるコラボメニューを継続したりと、社員が自然と集まる仕掛けを徹底して作り込んでいました。マイナスをゼロにするだけでなく、常にプラスオンの感動体験を追求する姿勢に、エンタテインメント企業のプライドを感じました。