ドラッグストアを起点に、地域の課題を解決したい

北海道に拠点を置くサツドラホールディングスは、ドラッグストアチェーンのリテール事業を核としながら、約50年にわたって地域に特化したサービスを提供しつづけている。

 

ーー事業内容について教えてください。

 

野村侑輝さん(以下、野村さん) 1972年に北海道・札幌の地で創業した、「サッポロドラッグストアー」が当社のはじまりです。現在は、ドラッグストア事業のサツドラを中心としながら、地域マーケティング事業、決済サービス事業、ITソリューション事業などを展開し、地域の暮らしを豊かにするお手伝いをしています。

 

ーードラッグストアだけでなく、幅広く事業を展開されているのですね。

 

野村さん 当社は「健康で明るい社会の実現に貢献する」ことをミッションに掲げています。これは、創業当時から受け継がれている理念で、私たちの大切な核になっています。そして、点ではなく面で事業を展開するからこそ、新たなアイデアを生み出せると考えています。

 

小売業界も、もはやモノを売るだけでは生き残れません。時代のニーズに合わせて、常に変化することが求められます。「ドラッグストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」をビジョンに、あらゆるテクノロジーやアイデアを集結させ、地域課題の解決に向けた事業を創出したいと思っています。

 

ーー北海道にはどんな地域課題があるのでしょうか?

 

野村さん 現在の日本は、人口減少や超高齢化社会に伴う様々な社会課題を抱えています。なかでも、北海道はそうした課題が最も早く顕在化する「社会課題先進地域」と言われているんです。健康診断の受診率も非常に低く、健康で明るい社会を実現するためには、そうした課題の解決が欠かせません。

 

メイン事業であるドラッグストアを活用して、地域とつながる「場」を提供することでコミュニティを形成し、未来へつなぐ課題解決力を養うこと。これが、サツドラのバリューであり、存在意義だと考えています。

 

社員のチャレンジを尊重し、応援する企業カルチャー

 

「地域コネクティッドビジネス」という、ドラッグストアの枠をこえた挑戦を掲げるサツドラホールディングス。北海道らしいおおらかな雰囲気を持つ一方で、同社には社員のチャレンジを応援し、支える風土が根付いているという。

アットホームな雰囲気のなかで働く、社員の皆さん。

ーー社内はどのような雰囲気ですか?

 

野村さん 北海道出身の社員が多いからか、人と人との距離が近くて、アットホームな雰囲気だと思います。おおらかですし、みんなオープンでフェアですね。社内の雰囲気はゆったりしているのですが、社員のチャレンジを歓迎し、応援する風土がその根底にあります。例え失敗しても、「ナイスチャレンジ!」と受け止めてもらえますし、変化を恐れずにチャレンジできる人が活躍していますね。組織としても、そうした社員をサポートする制度を整えています。

 

ーー具体的にどんな制度なのでしょうか?

 

野村さん 「チャレンジジョブ制度」といって、希望する部署に自ら志願できる制度です。実は私も、店舗の店長をしていたときにこの制度を利用して、採用の仕事を担当するようになりました。そのほか、自分の考えやアイデアを気軽に共有できるコミュニティサイトもありますし、業務の改善につながる意見を出せる「サツドラポスト」というオンライン上のポストも設置しています。

 

例えば、当社には「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)委員会」という、女性活躍の推進やジェンダーフリー、LGBTなど多様な人たちや働き方について考える組織があるのですが、サツドラポストで出た意見をD&I委員会と共有して検討するといったことも実際に行っています。普段から部署をこえたコミュニケーションが活発で、気軽に意見を交換し合える雰囲気がありますし、質問するとみんな親身になって答えてくれます。そうした社風が、チャレンジしやすい環境をつくっているのかもしれません。

 

ーーチャレンジを支える環境が、会社の仕組みとしても整えられているのですね。

 

野村さん 人事評価においても、そうした行動をきちんと評価できるような方法が採用されています。自分自身でしっかり振り返り、次に活かすことが大切なので、他者による評価とあわせて自己評価も重視しています。自分で目標を立て、それを達成するために何をどのように行ったか。その過程をきちんと評価しています。

本社の新社屋に象徴される、サツドラグループの進化

2020年9月に移転・リニューアルした本社ビル(札幌市東区)は、1階に店舗、2階に共有スペースや会員制のインキュベーションスペース、3階に本社機能を集約している。事業の中枢とも言える本社ビルの一部を、なぜ外部に解放しているのだろうか。そこにある思いを尋ねてみた。

 

ーーリニューアルされた本社ビルには、サツドラの実店舗も入っているとうかがいました。

 

野村さん 本社ビルの1階に店舗があります。商品の販売だけでなくもっとお客様の役に立つサービスをご提供できたら、地域の人たちが集える場をつくれたらとの思いから、イートインスペースやイベントスペースも設置しました。そこで、管理栄養士による栄養相談を行ったり、地域の子どもたちに向けたプログラミング教室などを開いたりしています。

 

また、実証実験を行う場としても活用しています。例えば、実店舗では可視化しにくい購買時の動線を、AI機能搭載の防犯カメラを使ってデータ化する取り組みもその一つです。データを分析することで、よりお客様のニーズに沿った商品展開が可能になります。同じビルの3階に本社があるので、スムーズな連携がとれています。

本社ビル1Fにある、サツドラ北8条店。地域のハブとしても機能している。

ーー2階には何があるのでしょうか?

 

野村さん 2階には当社の会議室や執務スペースのほか、社外の方も利用できるシェアオフィスやおよそ3500冊の蔵書が並ぶ「BOOK LOUNGE」、そして「HUB SPACE」という共有スペースを設置しています。配信機能を有するスペースもあり、毎週のようにオンライン・オフラインのイベントを開催しています。ここでの出会いから協創が生まれればと考えており、実際に、シェアオフィスに入居されている映像クリエイターの方から当社の社員がアドバイスをいただいたり、一緒に動画を制作したりしたこともあります。

サツドラHD本社オフィスのBOOK LOUNGE。

ーー共有スペースを舞台に、外部との多様なコミュニケーションが生まれているのですね。

 

野村さん 2階の共有スペースに限らず、例えばD&I委員会には外部の方にも参加していただいていますし、普段の業務に関わっていただくこともあります。挑戦し、変化しつづけるためには、外部とのつながりが欠かせません。こうした社内外の交流を通して、お互いにメリットを得られる関係性を築けたらと思っています。

オフィスと思えないような、開放的な雰囲気。

地域密着型の取り組みを通して、北海道の発展に貢献する

地域の人々の健康と北海道の発展を見据え、社会貢献に関わる取り組みも積極的に行っているサツドラホールディングス。この先、どのような未来を描いているのだろうか。

 

ーー地域とのつながりに関連して、社会貢献に関わる活動は行っておられますか? 

 

小寺潤さん(以下、小寺さん) 小売業の立場で、環境保全につながる取り組みも進めています。その一つが「プラごみPAY」です。P&G株式会社や日本環境設計株式会社の皆さんとともに、昨年の6月1日~8月2日にかけて実施しました。サツドラの174店舗に設置した専用の回収ボックスを通して、P&G製品のプラスチック容器を回収し、資源として再利用するというもので、約1000個のバケツに再生しています。再生バケツは、札幌市内の児童会館に寄付しました。

 

ーー再生されたものが地域に還元されると、環境保護活動をより身近に感じられますね。

 

小寺さん 最近の取り組みとしては、今年の8月に室蘭市と「安全・安心なまちづくりに関する連携協定」を締結しました。室蘭は、活火山の「有珠山」を有する地域でもあり、高い防災意識を持つことが住民の安全・安心につながります。当社は、災害時の生活物資の供給を行うほか、防災教育などの啓発活動を行っていく予定です。また、サツドラグループの事業会社が手掛ける「EZOCA(エゾカ)」という北海道共通ポイントカードがあるのですが、余ったポイントを災害地域に寄付できる仕組みも整えています。

 

野村さん EZOCAは、200万人以上のお客様にご登録いただいている、北海道共通のポイントカードです。サツドラはもちろん、北海道内にある160社以上のEZOCA提携店で使用できます。ポイントカードの活用を通して、地域の活性化につながればと考えています。

 

ーー最後に、今後の展望について教えてください。

 

野村さん 今後は、地域コネクティッドビジネスへの転換にさらに力を注いでいきます。当社の社長がよく口にするのは、「サツドラの成長=北海道の発展」です。北海道が抱える社会課題をサツドラのサービスを通して解決し、北海道の発展とともにサツドラも成長する。そうした、地域の未来につながる仕組みを整えていきます。

 

昨今はビジネスや経済が複雑化して、先行きが不透明な「VUCA(不確実性)時代」とも言われますが、コロナ禍でさらにその傾向が加速しました。そんな時代だからこそ、採用においてもいかに早くアクションを起こすかを意識する必要があります。YouTubeでの会社説明会やオンライン採用なども積極的に進め、コミュニケーションを丁寧にとりながら、採用活動を実施したいと考えています。

 

小寺さん コロナ禍は、地域のお客様があってこそビジネスができるのだと、改めて感じる機会となりました。一つの会社では限界があっても、地域全体で取り組めば、やがて北海道全体を巻き込む大きなうねりになると思います。地域コネクティッドビジネスをめざすというビジョンのもと、地域の皆様と一緒に北海道を盛り上げていきたいです。

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取材のウラ側

幾度となく耳にした、「北海道の発展」という言葉が印象に残る取材だった。課題先進地域ならば、なおのこと試行錯誤を繰り返しながら解決にあたる必要がある。そこで大切なのが、「チャレンジ精神」、そして「挑戦から学ぶ」姿勢だ。積極的に外部の目を入れ、様々な意見やアイデアを柔軟に取り入れることで、さらに企業としての可能性を広げている。サッポロドラッグストアーから50年の歴史を刻み、北海道の発展をめざして大きなビジョンを描くサツドラホールディングス。北海道とともに成長したいという、地域に特化したその取り組みから学べることは多いのではないだろうか。