名越：PR TIMESが掲げるミッションは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」です。このミッションを言葉にしたのは、東証マザーズ市場（現東証グロース市場）に上場した2016年ごろです。ミッションの意図としては、社会のために情熱を持って仕事をしている人たちを「行動者」と呼び、そのような人たちを支援できる会社でありたいし、行動者を増やしていくことです。

誰でも街を歩けばすぐにおいしいものが食べられ、病気の際には必要な検査が受けられ、安定した交通インフラのおかげで、毎日問題なく会社に行ける。こうした当たり前の日常を支えているのは、一人ひとりの行動です。そういった人たちの情報がもっと溢れる社会にしたい。それが、PR TIMESという事業を行う理由です。

当社はミッション実現を目指す会社であるため、実はコーポレートのビジョンは立てていません。バリューは「Act now,Think big」「Open and Flat for breakthrough」「One’s commitment, Public first」です。ミッションを実現する上で、一つの船に乗っている私たちが共に約束する価値観を言葉にしたのがこの３つです。

例えば、「Act now,Think big」。行動者を支援したい会社として、私たち自身が行動者の集団であることはとても重要です。この行動の一歩目をどう踏み出すかという価値観を定めたものになります。

名越：最初からミッションに100パーセント共感することは難しいと思います。皆それぞれ異なるバックグラウンドを持っていますから。ですが、言葉は違えど、「行動者を支援したい」「頑張っている人たちがもっと日の目を浴びるような社会にしたい」という思いを抱いて仕事をしてきた人たちは、その点に共感してくれます。面接などではそうした思いを自身の言葉で語ってくれるのです。

名越：頑張る目的が同じでも、働きやすさは一人ひとり違うということを、人事として常日頃から考えています。働きやすさを支えるためにも、当社には様々な角度からの人事制度があります。例えば、挑戦を後押しする制度、安心やつながりを感じられる制度、経済的支援などです。

挑戦の後押しに関して、私たちは必ず責任者を決めることを文化にしています。ただし、年齢や年次では決めません。新入社員が責任者となって、自分より年次が上のメンバーを抱えてプロジェクトを進めることもあります。

そして、責任者が決めたことに全員で協力するというルールもあります。意思決定はあくまでも責任者が行い、メンバーはそれを全力で支えます。たとえ失敗したとしてもすべて終わりになるわけではなく、必ずセカンドチャンスがあるというところも大事にしています。

名越：安心やつながりの面では、「It’s You」という誕生日をみんなでお祝いするランチ会を月に1回開催しています。横のつながりがあることで働きやすくなる人もいますし、誕生日をお祝いされることは嬉しいものですから。つながりを感じるような施策は他にもたくさん用意しています。

また、働きやすさの観点から言うと、当社は原則出社としておりますが、育児や介護をしている場合、リモートワーク制度があることで働き続けられる社員も多くいると思います。私自身の経験からもそのように感じておりますので、必要なリモートワークが取得しづらくならないようにしています。

名越：何かあれば、アジャイルに設計していく形になります。 例えば、2021年4月から開始した奨学金返還サポート制度もそうです。 若手社員にとって奨学金の返還が経済的にも心理的にも負担になっているという課題を受け、対象社員に対し毎月1.5万円分の費用を最大8年間支援しています。

もちろん、それ以前の社員にとっては不公平に感じる人もいるでしょう。組織の中で全ての方に公正公平な制度を作ることは難しいと実感していますが、少しでも状況を理解いただくためにも、制度の設計意図や背景を必ず説明しています。

これからも、社員一人ひとりが抱える問題によって仕事に集中できなくなったり、仕事を続けられなくなったりすることが少しでもなくなるよう、各社員の置かれている状況を予測しながら制度を整えていきたいと考えています。

名越：素直な人とは、良い相談ができる人です。報告・連絡・相談（ほうれんそう）は基本ですが、良い相談をして次の自分の行動を約束し、できていないことはできていないと言い、わからないことはわからないと言う。そして行動した結果を基に、また次の相談ができる人が「素直」の表れ方の一つだと思います。

なお、当社では相談は相互です。例えば、部下が上長に相談することもあれば、上長から相談されることもある。相互に相談ができるのは、素直さが根底にないと難しいのではないでしょうか。

一般的に相談というと、部下から上司へという形が多いように思われますが、相談が相互に行われる文化は、バリューである「Open and Flat for breakthrough」が反映されているように思います。これは、部下も上司も共に自立したプロフェッショナルであるという定義に基づき、役割を重視する考え方が根底にあるため、年齢や年次はあまり関係ありません。

全員がお客さまのために仕事をしており、相互に相談することでそれぞれの力を結集し、目標達成に向けて邁進するという姿勢が、こうした風土につながったのだと思います。

もう一つの目的志向が強い人とは、会社のため、チームのため、社会のため、誰かのために頑張りたいという思いで行動できる人であり、そうした人が共通して活躍していると感じます。もちろん、「本当に自分にできるのか」と不安に思うのは誰でもあると思います。それでも、諦めたり手を抜いたりしたらだめだよなと、気持ちを切り替えて、チームや社会のために心を向けることができる。このような人は職能を身に付けるまで時間はかかっても、必ず活躍する印象です。

名越：当社は同じ場所にとどまっているというよりは、数年に一度、次の挑戦に向けて働く環境や場所を変えています。コロナ禍ではサテライトオフィスを設けて2拠点体制にし、リモートワーク率が8割を超えていたこともありました。

2拠点にしたことで良い部分もありましたが、物理的な距離が開くことの不利益もありました。そこで、ワンフロアで全社員が一体となって働ける環境を求めていました。また、中期経営計画の最終年度である2025年に向けて一丸となるため、ビジョンにある「Open and Flat for breakthrough」の観点や、お互いの共感が育める新しいオフィスが必要とされたのです。以前から物件は探しており、最適な場所が見つかったタイミングで2022年2月に移転となりました。

さらに、入居して約1年半後に社内で「リファイン（洗練）が必要だ」という話になり、オフィスリファインプロジェクトが始まったのです。

重富：なぜそんなに早くにリファインが必要になるのかという話になると思うのですが、当社のオフィスに完成形はないというのが前提にあり、その時々の最適を求めつつ、オフィスを進化させています。

第一回目のリファインが行われた最大の理由としては、事業成長に伴う社員増加と、リモートワークから出社に切り替える社員が増えたことで座席が足りなくなったためです。そこで、単に増席するだけでなく、オフィス移転後に狙い通りに使えていない機能や改善点も見直すことにしました。

具体的には、オフィスのエントランスが広々としている一方で使い切れていない点、会議室が少なくミーティングができない点など、空間の有効活用に課題がありました。また、執務室内に設けていたフリーアドレスのスペースが当初の目的とは異なり、荷物置き場になっていたことも改善すべき事案でした。

重富：プロジェクトメンバーについては、移転プロジェクトと移転後のリファインプロジェクトで、責任者およびメンバーを入れ替えています。弊社には「交代」と「抜擢」の文化があり、同じメンバーが継続して担当する良さもありますが、あえて異なる人材が担当することで生まれる価値や、当社らしさも大切にしているためです。

リファインプロジェクトのメンバー募集は、私が入社してから半年ほど経った頃に行われました。誰でもフラットに手を挙げられるチャンスだったので、ぜひ挑戦してみようと思い、私自身も応募し、参加が決まりました。

メンバーは、総務部門の責任者をリーダーに、私のような新卒1年目の若手もいれば、社内インフラを担当してきた社員、一度退職して戻ってきた社員、家庭を持ち限られた時間で働く女性社員など、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちで構成されました。

一般的に、オフィスの移転やリノベーションは総務部門や人事部門だけで進める会社も多いですが、当社では多様な部署からメンバーが集まったことがプロジェクトの特色だったと思います。新卒ながら、様々な部署の方と仕事をするというのは大変刺激になりました。

重富：物理的には席数を増やし、会議室も7室から10室に増設しました。これにより、会議室が取れないという悩みはほぼ解消されました。同時に会議室の名前も変更しました。以前は「sprout」や「view」など、由来を知る人が少ないネーミングでしたが、当社で大切にしているプロジェクト、例えば、仲間の誕生日を祝う「It’s You」や、4月1日に企業や個人が夢を発信する「April Dream」などにちなんだ名前にしました。これにより来社したお客さまから「なぜこの名前なのですか？」と聞かれても社員が即座に説明できるようになりました。

名越：移転前のオフィスとの比較にもなるのですが、社員一人ひとりの行動量が増えた実感があります。会話が生まれやすい仕掛けがエントランスやオープンスペースにあり、あたかも焚火を囲むように社員が集まってミーティングをする円卓テーブルを活用するなど、さまざまな機会を通じて部署を超えた交流が生まれています。以前のオフィスにもオープンスペースはありましたが、現在のオフィスではリファインプロジェクトでの試行錯誤もあり、導線の設計がうまくできていると思います。

名越：PR TIMESは基本的にインターネットで完結するサービスなので、どんな人が働いているのかが見えにくいです。コーポレートカラーはネイビーですから、クールでスタイリッシュなイメージを持たれることもあります。しかし実際には朗らかで個性的なメンバーがそろっています。TOWNはスケルトン（透明）で、来客者からも社内の様子が見えるようになっています。そのため、「こういうメンバーが働いているんですね」と、印象が変わったという声をいただくことが多いです。

また、私は面接に来られる採用候補者の方々をお迎えする機会が多いです。その際、（面接などで）直接話す社員だけでなく、このオフィス空間からもPR TIMESらしさを感じてもらいたいなと常々思っています。その一環として、例えば、提供するミネラルウォーターは3種類あり、「リラックスしてね」や「会えて嬉しいよ」といったメッセージが添えられています。そういった細部からも当社のことを知っていただけるようになったと実感しています。