あり得ないスケジュールでオフィス移転を完遂

──今年4月に「TAKANAWA GATEWAY CITY」へ本社を移転されました。移転を検討したきっかけや背景について教えてください。

山本:東京・高輪は江戸時代から交通の要衝として発展し、約150年前には日本初の鉄道が海上を走ったという歴史的なイノベーションの地です。この場所で現在進むまちづくりのコンセプトに共感し、本社移転を決定しました。

 

交流とイノベーションの精神を継承しつつ、さまざまな業界や分野のアイデアが集まり、競い合うことで、日本初のイノベーションを生み出す「未来への実験場」のような場所にしていきたいと考えています。

総務部 オフィス戦略グループ コアスタッフの野村厚さん

野村:オフィス移転の目的としては物理的な課題がありました。KDDIの都内の拠点は複数に分散しており、お客さまが当社を訪問される際に「どこに行けばいいのか」と混乱されるケースもありました。また、社内でも同じ部門なのに異なるビルに入居するといった状況があり、コミュニケーションの面で問題を抱えていました。今回の移転で可能な限り集約し、部門間の連携を強化することも大きな狙いの一つです。

総務部 オフィス戦略グループ コアスタッフの山本将嗣さん

──本社移転プロジェクトはどのような体制やプロセスで進めていったのでしょうか?

山本:プロジェクト自体は2022年3月ごろからスタートしました。基本構想、基本設計、実施設計、施工、運用というフェーズを経て進めていきましたが、このプロジェクトの最大のハードルはスケジュールでした。

 

実は、工事中に高輪築堤跡が発掘されたことで、建築工事のスケジュールが当初の予定通りには進まなかったのです。本来であれば、ビルが完成してからオフィスデザインやICTインフラなどを検討するのが通常の流れですが、そんな余裕はありませんでした。

 

そこで、ビルを建てながら同時にオフィスとICTシステムを整備していくという、かなりイレギュラーな進め方をしました。相当な困難を伴いましたが、結果的にはスケジュールも守ることができました。

──そのような巨大プロジェクトを成功に導くために、最も重要だったポイントは何でしょう?

山本:体制づくりです。総務部だけではとても不可能ですから、技術部門、営業部門など各事業本部からメンバーを出してもらうとともに、ボードメンバーから現場レベルまで縦のラインを設けました。自分たちの事業本部のニーズを出してもらいつつ、私たちがそれを集約していくという体制で進めました。

 

とはいえ、各部門でやりたいことや意見が異なると平行線で進まず、全体の工期に影響を及ぼしてしまいます。そこで、執務室、来客フロア、食堂、ICTシステムなど、それぞれの領域に役員を統括責任者として配置しました。これにより、領域ごとの意思決定が単独でできるようになり、領域をまたがる課題についても全社的な視点で迅速に判断できるようになりました。

(Photo:永禮賢)
KDDIの新オフィスは、焚火台やテントが並び、まるでグランピングサイトのような遊び心あふれるクリエイティブなワーキングスペースが印象的(Photo:永禮賢)

──3年間のプロジェクトの中で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。

山本:やはりスケジュールの厳しさですね。他の設計会社からも「この規模でこの期間は普通ではない」と言われました。ただ、この困難を乗り越えたからこそ、最終的な仕上がりにつながったと思っています。

 

野村:私からは少し砕けた話を(笑)。総務部として毎週建築中の現場に来ていたのですが、例えば、仮設エレベーターは上下するたびにガタンと揺れて、オープンエアなので外も丸見えでした。これは普通のサラリーマンではなかなか体験できないことでしたね。

40人の社員が参加して作り上げたオフィスコンセプト

──新本社オフィスはどのようなコンセプトで設計されたのでしょうか?

山本:新本社のコンセプトは「つなぐチカラを進化させ、ワクワクする未来を発信し続けるConnectable City」です。このコンセプトは、全社員から約40人のメンバーを募り、ワークショップを通じて作り上げました。ここには単に効率よく働くだけではなく、社内外とつながり、共創し、発信し続けるという思いが込められています。

──そうしたコンセプトを元に作られたオフィスの特徴は?

山本:オフィスは大きく4つのエリアに分かれています。

 

全社員が自由に利用できるコラボレーションスペースの「Discovery Village」、キャンプをモチーフにした、グループ会社との連携を推進するコワーキングエリアの「Knowledge Camp」、仕事の合間に食事や交流ができるエリアで、夜はお酒も提供する「K-Dining / K-Cafe」、そしてパートナー企業などとの共創を推進するエリアである「TSUNAGU BASE」です。それぞれのエリアには、達成したい目的や使い方に合った家具、システムを導入しています。

キャンプ場にいるかのようなリラックスした雰囲気があり、新しいアイデアの創出を促すコワーキングエリア「Knowledge Camp」(Photo:永禮賢)
先端技術、アイデア、そして人をつなぎ、KDDIとパートナーの出発点であり、いつでも戻ってこられる基地となっている「TSUNAGU BASE」

野村:各執務室でも、コラボレーション強化とパフォーマンス向上を重視しています。議論や打ち合わせに使う「Groove」エリアと、個人で集中作業をする「Chill」エリアを設けています。

偶発的な出会いを生み出し、社員同士のコミュニケーション活性化につなげる、執務エリアの中央に設けられた内階段(Photo:永禮賢)
(Photo:永禮賢)
さまざまな座席が用意されているため、その日の業務内容に合わせて「働く場所」を選ぶことが可能 (Photo:永禮賢)

さらに、19階には社員向けのサテライトオフィスがあり、ランニングマシーンやエアロバイクも設置しています。当社は健康経営をうたっているので、仕事をしながら運動もできる環境です。人工芝を敷いたエリアもあり、靴を脱いでリラックスできるスペースも用意しています。

景色を眺め、体を動かしながら働くことで、思考がクリアになり、ひらめきにつながるアイデアが生まれます

──以前の本社には、こうした施設はなかったのでしょうか?

野村:飯田橋の本社オフィスには食堂もなく、コラボレーションエリアもありませんでした。虎ノ門オフィスにはコラボレーションエリアに似たものがありましたが、今回のようなコンセプトに基づいた本格的な設計は初めてです。

──新本社ではロボットが活躍されていると小耳に挟んだのですが本当でしょうか?

はい、おっしゃる通りです。新本社では、ロボットはすでにオフィスインフラの一部として深く活用されており、社員の働き方やオフィス体験そのものを大きく変えています。

 

まず、日々の運搬・配送業務にロボットが活躍しています。会議中のお水やお茶を配ったり、各部門宛ての社内便(郵便物)をメール室から運んだりといった、これまで人が時間をかけて行っていた作業をロボットが担うことで、社員はより重要な業務に集中できるようになりました。

 

このロボット活用を実現する上での最大の技術的ブレイクスルーは、「自動扉」の導入にあります。従来のオフィスでは、ロボットは扉を開けられないため移動範囲が制限されました。新本社では、この課題を解決するため、建築とICT工事を同時に進め、要所に自動扉を設置しました。

 

ここで重要となるのが、ロボットの移動を管理するロボットプラットフォームです。このプラットフォームを通して、自動扉、セキュリティゲート、エレベーターなどのビル設備とロボットが連携することで、ロボットはフロアをまたいで自由に移動できるようになりました。その結果、ロボットは社員のいる場所のすぐ近くまでサービスを提供できるようになっています。

 

この自由な移動能力によって、ユニークなサービスも生まれました。オフィス内のローソンと連携し、社員が注文した商品を届けるデリバリー(宅配)サービスを始めています。さらには、ロボットがオフィス内を巡回して商品を販売する回遊販売も開始しました。

レジなし、無人のオフィスローソン。商品購入はアプリで完結する未来型コンビニです
オフィス内のコンビニは、陳列から配送までロボットがすべて担当

また、対外的な顔としてもロボットは活躍しています。13階にあるショールームでは、来場者に対して展示内容を案内・説明するガイドロボットが導入されており、最先端のオフィスにふさわしい、質の高い体験を提供しています。

 

本社ではロボットが単なる飾りではなく、社員の生産性を高め、オフィスの利便性を向上させるための重要なキーテクノロジーとして機能している状態です。

──移転してまだ数カ月ですが、社員の働き方やコミュニケーションに変化はありますか?

山本:まだ移転の最中でして、現在の約7000人から、今年度中には1万3000人ほどの社員が入居する見通しです。ですからその段階でオフィス満足度アンケートなどを通じて意見を集約していく予定です。

 

個人的には、他の部署のメンバーとも近くにいるので、対面で話す機会が増えました。廊下ですれ違って雑談することもあり、業務がやりやすくなったと感じています。

 

野村:食堂の夜利用の反響がすごくて、こんなに利用率が高くなるとは思っていませんでした。高輪エリアは飲食店が少ないという事情もあるかもしれませんが、非常に好評です。

健康的で美味しいランチを日替わりで楽しむことができる、まるでフードコートのような活気ある食堂 (Photo:永禮賢)

「人間力」を重視する

──KDDIの人事制度について教えていただけますか。

小林:KDDIの人事制度や働き方の特徴は、大きく3つあります。

 

1つ目は「KDDI版ジョブ型人事制度」です。年功序列を廃止し、勤務時間ではなく、成果や挑戦、専門性、そして人間力を評価する制度です。若手でも意欲と能力があれば早期に昇格できる実力主義を採用しています。とりわけ組織を成功に導く人間力を重視しているのが、KDDI版ジョブ型の特徴です。個人の成長と組織の成長、両方を実現することを目指しています。

 

2つ目は、テレワーク、時短勤務、コアタイムなしのフレックス制度など、基本的な働き方の制度を整えています。また、就業時間の20パーセントを所属部署以外の業務に使える「社内副業制度」も導入し、スキルの幅を広げる機会を提供しています。

 

3つ目は、新本社での「働き方アップデート」です。コンセプトは「心豊かに、仕事に打ち込む」。目指す姿として「集い、つながり、成長する」「時間の使い方を主体的に考える」という2つを掲げています。これらの実現に向けてさまざまなイベントを開催しています。

人事本部 人事戦略部 HRコミュニケーション担当 エキスパートの小林真理奈さん

──具体的にどのようなイベントを実施されているのでしょうか?

小林:「KDDI∞Labo」というオープンイノベーションプログラムや、社員の家族も参加できるオープンイベント、AIに関する社内勉強会、そしてオフィスツアーなど、社内外問わず多様なイベントを開催しています。

多様な人財が混ざり合う企業文化

──お三方がそれぞれ感じる、KDDIの働きやすさについて教えてください。

小林:どんな社員でも活躍できる土壌があることですね。ジョブ型人事制度、働き方アップデート、DE&I推進を合わせて取り組んでおり、その成果が数字にも現れています。

 

例えば、キャリア採用比率は、10年前は非常に少なかったのですが、2023〜2024年度は新卒と半々になりました。プロ人材比率は40パーセント以上、若手管理職の比率は2021年度から2025年の4年間で3倍になっています。年齢や性別を問わず、実力がある方であれば活躍できる環境だと思います。

 

私個人としては、社会的にインパクトの大きい仕事に挑戦できることに魅力を感じて入社しました。国民の約3分の1がauの携帯電話を使っていますが、そこまでの規模のプロダクトに携われることは非常に面白いと思っています。

 

また、KDDIは第二電電がルーツで、NTTに挑戦するところから始まった会社ですし、自社だけで何かを作るのではなく、社外とのパートナーシップを大切にしてきた文化があります。社内に目を向けても、いろいろな会社が統合しているので、多様な人材がいます。そうした方々とチームを組んで、共創することを大切にしている点が強さの源泉だと感じています。

(Photo:永禮賢)
ミーティングスペースも豊富に用意されており、ソロワーク空間と合わせて、「集中」と「協働」を自在に切り替えられるハイブリッドな働き方が実現できます(Photo:永禮賢)

野村:キャリア採用の方々が本当に活躍しています。実は山本も中途入社で、前職で移転の経験があったこともあり、今回のプロジェクトでは「大当たりだった」と上司が言っていました。家具の専門家なども総務部にいて、移転プロジェクトで大きな力になってもらえました。

 

山本:私は中途入社なので、外の会社を知った上でKDDIに入っています。制度面でもオフィス面でも比較できるのですが、手前味噌ながら、今回作ったオフィスは他と比較しても非常に誇れるものだと思っています。

 

しっかりとコンセプトを作り、一つ一つに理由があることを皆さんにも分かる作りになっています。実際に働いてみて、集中したい時、議論したい時、それぞれに応じて場所を変えられる選択肢の多さは素晴らしいと感じています。

 

最近は「NEWoMan高輪」もオープンし、街とともに成長していくという側面もあります。総務としては皆さんに出社してもらいたいという思いがありますので、この街とつながりながら、会社に来たいと思ってくれたら嬉しいですね。

「TSUNAGU BASE(ツナグベース)」には、共創を促進するための多様なエリアが設けられています 
「Tomorrow Lab(トゥモローラボ)」では、KDDIとパートナー企業が持つAIデータセンターやAIドローン、AIインフラ基盤など、最新の先端技術を活用した取り組みを展示・紹介

──ありがとうございました。

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取材のウラ側

KDDI新本社への取材は、まるで未来へ訪れたかのような体験でした。単なるオフィスではなく、「TAKANAWA GATEWAY CITY」全体を実証フィールドとしているのが驚きです。

表向きはスマートな空間ですが、裏側ではロボットが荷物やローソン商品を自律配送し、無人コンビニではスマホレジが機能していました。これらは全て、AIとデータ連携基盤で人流を分析し、パーソナルな体験を生み出すための壮大な都市型実証の一環となっています。通信キャリアならではの革新に向けた大規模な検証プロセスを目の当たりにした気がしました。

編集部が推したい福利厚生や支援制度
1,リフレッシュ休暇制度

勤続15年で10日、勤続25年(満50歳)で15日の特別休暇と支援金が付与されます。長期勤続社員の心身のリフレッシュと仕事への活力を促すための休暇制度です。

2,多様な育児両立支援制度

小学校卒業までの育児短時間勤務やフレックス勤務が利用可能です。また、不妊治療休暇や、ベビーシッター補助、企業主導型保育園の紹介など、働く親を多角的にサポート。

3,子どもの看護等休暇(有給・時間単位取得可)

小学校3年生修了までの子どもの看護、予防接種、学級閉鎖などに対し、有給で時間単位での休暇取得が可能となっています(子1人につき年間5日、2人以上は年間10日を限度)