今回インタビューにお応えいただいた竹原さん

人々が望む「賢い消費」の選択肢を増やす

2006年に乾電池のリユースという小さなビジネスから始まったマーケットエンタープライズ。SDGsを追い風に成長を続けるリユース分野において、市場をけん引する存在となっている。

―事業内容について教えてください。

ネット型リユース事業を中心に、メディア事業やモバイル通信事業などを展開しています。「持続可能な社会を実現する最適化商社」をビジョンに掲げ、賢い消費を望む消費者に、最適な選択肢を提供できる会社をめざして事業領域を拡大してきました。

主軸であるネット型リユース事業は、不要品を処分したいお客さまから当社が買い取り、自社の在庫として持ったうえでインターネットを通じて販売するという、CtoBtoC(Consumer to Business to Consumer)のビジネスモデルです。

取り扱う商材は、家電や楽器、パソコンなどから、農機具や建設機械といった専門商材まで幅広いところが特徴です。近年、ユーザーを増やしているフリマアプリなどでは取り引きが難しい「大型」「大量」「高額」な商材を主に取り扱っています。

―農機具のリユースというのは珍しいですね。

農機具は、実は海外からのニーズがとても高いんです。日本のメーカーの農機具は品質の高さに加え、小型のものが多いのも特徴です。海外メーカーの農機具は大型のものが多いため、小さな農園でも小回りがきく日本の小型の農機具は人気があります。農機具を戦略商材として、グローバル展開を積極化させていきたいと考えています。

実はこの事業は、お客さまからの買い取りの依頼に対応していたコンタクトセンターの社員の声から生まれました。農機具はかつて、ご依頼をいただきながら、買い取りをお断りしている商材のひとつだったのです。

しかし、当社は全国に12のリユースセンターを持っており、大きな商材を保有できる物流拠点があります。倉庫を持っていることの強みと世界的なニーズを鑑みて、まずは小さな規模からスモールスタートしました。これが現在、農機具に特化したグループ会社が2つ立ち上がる事業規模にまで拡大しています。

一方、当社では低価格のものなど、買い取りが難しくお断りせざるを得ないケースが一定数あります。そうしたお客さまに対しては、「おいくら」というリユースプラットフォームでのサービスを提供しています。

「おいくら」は、不要品を処分したいお客さまと全国のリユースショップをマッチングさせるプラットフォームです。現在、約1000店舗が加盟しており、当社で買い取りができないお客さまに「おいくら」を紹介し、マッチングの機会を提供しています。お客さまは不要品を捨てずに売却できる可能性が生まれ、加盟店さんには新規のお客さまからの依頼が獲得できるというメリットがあります。

―双方に嬉しいサービスですね。

当社は創業以来、「WinWinの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」という理念を掲げています。複数の事業を展開し、今後も事業は増えていくと考えていますが、事業化にあたり当社が最も大切にしているのが、WinWinの関係が築けるかどうかです。その対象はお客さま、パートナー企業、社会などさまざまですが、すべてがWinWinになれるような事業だけを展開していきたいという強い思いを持っています。

 

 

WinWinの関係が築ける事業を行うことは、市場全体を拡大していくことにつながります。当社の社名には、マーケット(市場)をエンタープライズ(冒険的創造)するという意味が込められており、そのプロセスにおいて主体者がどんどん生まれていくような会社にしていきたいと思っています。

―社会とWinWinの関係というのは、リユースの活性化ということでしょうか。

もちろんそれもありますし、近年は官民の垣根を超えたSDGsへの取り組みにも注力しています。そのひとつが、粗大ゴミの削減をめざす、神奈川県川崎市や東京都墨田区、兵庫県神戸市など自治体と「おいくら」の連携による取り組みです。これには脱炭素社会への貢献という意味合いに加え、粗大ゴミの搬出と廃棄に、自治体の予算がかなり使われているという背景もあります。この取り組みでは、廃棄の検討をしている住民の方に「おいくら」を紹介し、リユースを提案していただくことで、実際に自治体の粗大ゴミに関するコストの削減につながっています。

住民の方にとっても、粗大ゴミを捨てるために処理券のシールを買って貼るのは手間ですし、さらに引っ越しの多い時期には引き取りが2〜3週間先という地域もあります。買い取りが成立すれば利益が生まれる、住民・自治体・当社にとってWinWinWinの取り組みになっています。

新規事業に挑戦し、2つの事業が新たな柱に

マーケットエンタープライズは、さまざまな新規事業のスクラップ&ビルドを繰り返しながら、常に新たなマーケットを創造すべく事業領域を拡大してきた。そのなかで主力事業に加わったのが、メディア事業とモバイル通信事業だ。

―メディア事業ではどのようなメディアを運営されていますか。

リユース事業やモバイル通信事業への送客を主な目的としたオウンドメディアを6つ運営しています。リユースのビジネスモデルにおいて最も重要な要素は「いかに集客できるか」です。言い換えれば、いかに買い取りの依頼を獲得できるかが重要です。

そのために立ち上げた事業であり、内容は、趣味探しをしたい人のためのメディアから、全国のアウトレットモールのイベントやセール情報を集めたメディアiPhoneや格安SIMの情報を取り扱うメディアなどさまざまです。立ち上げから3年になりますが、6つのオウンドメディアをあわせた月間ページビュー(PV)数は1400万PVに達し、非常に重要な事業セグメントに成長してきています。

その他に、農機具売買のマッチングを行う「中古農機市場 UMM」と、消費者と修理業者とのマッチングを行う「最安修理ドットコム」という2つのプラットフォームを運営しています。

―モバイル通信事業も好調のようですね。

グループ会社の株式会社MEモバイルが、高速通信サービスであるWiMAXを業界最安級で提供しています。立ち上げ当初は大赤字でしたが、2年目に事業モデルを転換し、そこから一気に黒字化が進みました。

成長のきっかけは、販売店舗を持つ競合他社が多いなか、Webのみで販売することでコストを削減し、その分をお客さまに還元したことかと思います。お客さまとWinWinの関係が築けるよう、誰もが安く使えるシンプルなサービス設計を行ったこと、カスタマーサポートを充実させたことなどが支持を得ました。

20代でグループ会社の役員に就任

―どのような方が活躍されていますか。

主体性を持って働けることが、当社で活躍している社員の共通項であるように思います。主体性とは、新しい領域に挑戦するときに必ず直面するさまざまな課題に対応していけるマインドのことです。課題が何であるかを発見し、それに対する打ち手を自分のなかに複数持ち、その中でどれが最適かを判断して実行できること、と言うこともできます。

 

 

―主体性を発揮して活躍された、特に印象深い方がいれば教えてください。

農機具の売買を行う事業を立ち上げたのは、新卒で入社して3ヵ月の女性社員でした。彼女は入社当初から「マーケットエンタープライズで女性初のグループ会社社長になるになる」と言い続け、実際に入社5年目でグループ会社である株式会社UMMの取締役に就任しています。

また、モバイル通信事業を手掛ける株式会社MEモバイルの立ち上げに携わったのも新卒入社4年目の男性社員でした。彼も20代でグループ会社の代表取締役社長に就任し、現在はマーケットエンタープライズの執行役員として活躍しています。

―新卒入社から数年で要職につかれていることに驚きます。研修が充実しているのでしょうか。

研修内容は毎年ブラッシュアップして形を変えています。経営視点を持てるような研修や社内セミナーを用意していることは特徴的かもしれません。ただそれよりも、「いかに打席に立つ機会をつくるか」が重要だと思っています。1人でも多くの社員を、1回でも多く打席に立たせたいと考えています。失敗のリスクはもちろんありますが、当社は各事業をスモールスタートで始めていますし、その挑戦がうまくいかなくても、他の事業でカバーできる体制になっています。

―組織づくりにはどのような工夫をされていますか。

現在、従業員数417名の規模になり、国内外に17拠点を展開し、グループ会社も5社に増えました。規模が拡大するなか、各組織の構成は基本的に10名以下に抑えています。意見をあげやすい少人数のほうが主体者が生まれやすいという考えからです。

また当社では、働きやすさよりも「働きがい」のある組織をつくりたいと考えています。働きがいや幸せのあり方は個人により異なりますので、人事と社員との対話を大切にしています。まず入社3ヵ月のタイミングで、必ず私が面談を行っています。これは、入社前に思い描いていたイメージと現実のギャップから、退職リスクが最も高まるのが入社直後と考えられるからです。

その他にも、不定期ですが、全社員に対してキャリアに関する自己申告アンケートを実施し、必要に応じて人事面談を行っています。直属の上司や同僚には話しづらいこともありますから、そこに人事が介入し、希望するキャリアパスのヒアリングはもちろん、悩みや不安などを一緒になって解決できるよう努めています。

―竹原さんにとっての「働きがい」とは何ですか。

当社は事業の多角化やグループ経営への移行など、次々に新しいことに取り組んでいる会社であり、模倣する企業がありません。それが難しさであり、面白さでもあると思っています。今後も、まだ誰も足を踏み入れていない領域や、誰も成功していない領域に対する挑戦が続いていきます。人事領域からその実現をしっかりとサポートしていけたらすごく嬉しいですし、それができる環境であることが働きがいになっています。

求めるのはベンチャーマインド

既存の事業を成長させながら、新規事業に次々と挑戦する同社は、ともに新たな市場を創造していくメンバーとして、どのような人材を求めているのだろうか。

―最後に、どのような方と一緒に働きたいかお聞かせください。

当社は2015年6月に、ネット型リユース事業を行う企業としては初めて東証マザーズへの上場を果たしました。2021年2月に東証一部へ市場変更した後、2022年4月にはプライム市場へ市場変更しています。いよいよ国内におけるトップリーグのステージに立つことができた状況です。

一方で当社は、連続的に新規の事業を立ち上げています。安定成長期に入っているビジネスもあれば、スタートアップフェーズのビジネスも多くあります。安定を求める方ではなく、自らが主体者となって、新しい市場を生み出していきたいという、ベンチャーマインドを持った方と是非、一緒に働きたいと思っています。

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取材のウラ側

上場企業でありながら、ベンチャー企業のように大きなチャレンジができる環境に魅力を感じた。20代でも、新卒入社でも、女性でも、主体性を発揮すれば活躍でき、要職につくこともできる。社会貢献につながる事業内容であり、かつ「商売を心から楽しむ」理念が根底にあることが、活力あふれる風土を生み出しているのだろう。