インタビューを受けてくださった、代表取締役の福井さん。

あえて、IT普及率が低い福岡で起業

テクノロジーを使った開発力を背景に、急成長しているLive Search。元気なスタートアップが集まる福岡のなかでも、不動産業界の新鋭として注目されている。

 

ーー事業内容について教えてください。

 

当社では、不動産業界向けのWebサービスを展開しています。例えば、物件写真の撮影や間取り図の作成代行、そして不動産業者がWeb上で簡単に物件写真をダウンロードできるサービスなどです。こうしたサービスを通じて不動産情報をカタログ化していくことが、当社のミッションだと考えています。

 

ーーどのような背景で今の事業を始められたのでしょうか?

 

昔は、不動産会社が自分たちで物件の撮影に行っていました。しかし、物件写真を撮る時間やスキルがないという理由で、Webに掲載されている情報自体が古いことが多かったんです。

エンドユーザーにとって、写真や間取りなどの知覚的な情報はとても重要です。私自身も5回ほど引っ越しをしているのですが、引っ越すたびに物件情報の不足を感じ、これは不動産業界の課題ではないかと考えました。

 

ーー起業の地に「福岡」を選んだ理由はありますか?

 

私は宮崎県出身で、最初は地元の宮崎か東京での起業を考えていました。しかし、業界についてリサーチするうちに、福岡は都市のなかでも不動産業界のIT普及率がものすごく低いことを知ったんです。

 

そこで、不動産業界のITサービスが浸透していない福岡でトップをとることができれば、全国に通用するのではないかと考えました。起業当時から上場を意識していたため、あえて厳しい場所を選んだというのもあります。

 

ーー働く場所としての福岡の魅力について教えてください。

 

東京にもベンチャー企業はたくさんありますが、すでに事業としてできあがっているものが多い印象です。一方、福岡はまさに今が旬。向こう数年で上場する企業も多く出てくるのではと考えています。会社の立ち上げからすべてのフェーズを体験できる。起業家精神のある人たちにとっては、様々なチャンスがある場所だと思います。

 

ーー御社が福岡で成功している理由は何でしょうか?

 

当社は、少し前に2億円以上の資金調達に成功したばかりです。この背景としては、売り上げに紐付く取引が伸びてきていることに加え、導入実績約200社と、サービスが幅広く受け入れられていることが大きいのではないかと考えています。

 

さらに、最近では福岡県のアクセラレーションプログラム「ISSIN」が選ぶ、成長企業5社のうちの1社にも選ばれました。福岡のベンチャーとしての認知もかなり上がってきており、採用への応募も増えています。これは、当社が九州の不動産テックでうまくいっている証だと思います。

ビジネスに「サプライズ」を起こす

撮影代行サービス自体は、そんなに珍しいものではない。そのなかでも、不動産に特化した同社のサービスが、独自のビジネスモデルとして成功した理由を尋ねてみた。

 

ーーサービスが成功した理由は何でしょうか?

 

プロに頼むと撮影代が1件2〜3万円ほどかかり、コスト的に難しい面がありました。それが、当社だと交通費も含めて一律で7000円という価格帯です。

 

しかし、この価格ではビジネスとして成立しません。そこで、Web上で物件写真を有料でダウンロードできる仕組みを整え、「撮影代」と「ダウンロード」の二軸で収益を上げるというビジネスモデルをつくりました。これが、サービスとして成功した理由だと考えています。

 

ーー他社との差別化のポイントはどこにあるのでしょうか?

 

一つはクオリティです。当社では、室内写真の撮影技術を徹底的にマニュアル化することで、撮影者ごとに生じるムラをなくしました。このオペレーションが社内システムと連動していることで短期間でもしっかりした写真が撮れるようになります。

 

そして、もう一つ重要なのが、当社のバリューにもある「早く届ける」です。Webで撮影のご依頼をいただいてから、納品までは平均3〜5営業日。これは、類似の業務を行う他社と比べても、かなりのスピード感だと自負しています。

 

ーー御社が掲げるバリューの一つに「サプライズを起こす」があります。具体的には、どのようなことを指すのでしょうか?

 

一つは顧客に対して、期待値以上のものを提供できるかどうかです。例えば、当社の「Stockplace(ストックプレイス)」というサービスは、物件写真や間取り図、360°パノラマVR写真をダウンロードで購入できる、便利で新しいサービスです。

 

もう一つは、メンバーがそれを意識して行動することです。以前、新人のメンバーが、大きな会社といきなり契約を結んできたことがありました。このように、「サプライズを起こす」というバリューを意識することで、自分の殻を破って能力値以上の動きをする思考を持ってほしいと考えています。

福岡オフィスで飾られている、同社のバリュー。

バリューは、年に1回行われる査定の評価基準にも紐付いています。「成功のために常に現状に満足せずに上を目指そう」、「時間を守り、コミュニケーションを大切にしよう」、「クライアントだけではダメだ」、「情報を共有し、最高のスピードで」、4つあるバリューによる査定で高評価をとることができれば、昇給がマックスで年収20%までアップします。このようにベンチャーという環境でリスクを取っていただく代わりに昇給幅が高いなど、やりがいはあると思いますよ。

エンドユーザーに寄り添う目線

同社が最も重要視しているのは、エンドユーザーとしての目線を持てるかどうかということ。コロナ禍でリモートワークが続いているが、このカルチャーを維持するために様々な工夫を凝らしている。

 

ーー御社ではどんな方が活躍されていますか?

 

当社が採用で重要視しているのは、「不動産選び」に関して何かしらの課題を感じていて、それを良くしたいという思いを持っているかどうかです。その思いさえあれば、業界経験は問いません。社内でもそういう気持ちが強い人たちが活躍しています。

 

20代~50代までのメンバーがいて、30代が中心です。自立している人が多く、お互い尊敬し合えるような良い関係性を築けていると思います。また、メンバーの半分以上が女性です。当社の取締役には、50代の女性もいます。

 

ーー不動産業は男性が多いイメージでした。

 

住まいの賃貸を検討される方の多くは20代~40代で、女性のほうがこだわりを持たれていることが多いんです。対して、不動産業界で働く人材は男性が多く、経営者の平均年齢も高い。時代が変わるにつれて、エンドユーザーの感覚と合わない場面が出てきたようにも思います。

 

一方、当社では、営業や撮影の管理をするマネジメントなど女性が第一線ですごく活躍しているのも特徴です。特に狙ったわけではなく、自然とそうなっていきました。

 

当社の間取り図には、コンセントの位置やコンロの数などが細かく記載されているのですが、これも女性目線のアイデアです。自分がエンドユーザーならこういう部分を知りたいという、女性ならではの目線を生かしたサービスが提供できているように思います。

 

ーー働きやすさを実現するための制度や工夫などはありますか?

 

コロナ禍においては、週3日リモートワーク、週2日出社という方針をとっています。フルリモートの時期もあったのですが、それではコミュニケーションが十分にとれないことに気付き、みんなの考えのズレを修正する場として週2日の出社日を設けました。

リモートワークの導入にあたっては、「OKR」(Objectives and Key Results)を取り入れています。Googleでも実践されている、目標の設定・管理方法の一つです。この目標を決めるため、そしてメンバーのパフォーマンスを向上させるために、週2回は全員が出社します。月曜日に各部署でその週の目標を設定し、土曜日に各チームの進捗状況を報告するというスケジュールです。

 

ーーやはり、出社日は必要なのでしょうか?

 

顔を合わせることによって、社員同士のコミュニケーションが生まれます。リアルならではの雑談から考えがまとまることもあり、いいリフレッシュになっていると思います。さらに現在は、業務拡大に向けて人が増えているフェーズですので、会社のカルチャーを維持していくためにも、やはり一定の頻度で出社して話をすることが重要だと考えています。

 

ーーお話をお聞きし、御社において「カルチャー」がいかに大切かを感じました。

 

実は、創業3年目くらいで組織崩壊を経験しているんです。創業時はメンバーもみな若く、結婚や実家の事情などの理由で、当時7人いたメンバーが一気に3人まで減りました。そこから地道に立ち直ってこれたのも、軸をぶらすことなく、カルチャーを維持してきたからです。おかげさまで、現在のメンバーは40名近くになり、採用も積極的に行っています。

組織崩壊を経験したからこそ、今の働き方がある。それがメンバーにとっても良い形になっているのだと思います。ありがたいことに離職者も少なく、直近1年を振り返っても、正社員で辞めたメンバーは一人もいません。

ユーザーにシームレスな家探しを提供する

エンドユーザーに寄り添い、成長を続けるLive Searchが描く、家探しの未来とはどのようなものなのだろうか。

 

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

 

より快適に家探しができる世の中をつくるために、Web上の情報を整備し、当社のサービスを全国に、さらには世界へとグローバルも視野に入れていきたいと考えています。

 

そのなかで、2024年~2025年くらいの上場を見据えています。2022年1月には神戸にも拠点を置きます。さらに大阪、名古屋と、数年以内に8拠点にすることが目標です。導入実績も2000社まで増やします。

 

また、当社が持つ豊富な室内情報を、データベースとしてより強化していくことも考えています。家具ECとも連携し、家具やカーテンをシームレスに購入できるサービスを開始するなど、当社にしかできないことで皆様のお役に立てればと思っています。

この企業のことをもっと知る

取材のウラ側

福岡の成長企業5社にも選ばれた、その気概を強く感じる取材だった。「未経験だからこそ、自由なアイデアと客観的な視点で物事を捉えられる」と語る福井社長。同社の写真を使用した物件の約1割は、Web申し込みのみで成約しているという事実が、サービスの質の高さを物語っている。上場という目標に向け、一歩一歩、着実に前進しているLive Search。家具ECとの連携も見据えるなど、新たな展開にも注目していきたい。