7階と10階に離れたフロアが抱えていたコミュニケーションの課題

―― 以前のオフィスではどのような課題を抱えていたのでしょうか。

坂口:旧オフィスでは執務スペースが7階と10階の2つのフロアに分かれていました。そのため、7階の雰囲気が好きな人は7階、10階が好きな人は10階というように席が固定化しやすく、会話する相手も限られがちでした。フロアが離れていること自体が、社内コミュニケーションを広げるうえでの課題になっていたのです。

 

また、10階に執務室があり7階に会議室がある構造だったため、会議室へ移動するだけでも時間がかかっていました。会社が成長して社員数が増加していく中で、新しく加入したメンバーが別のフロアの社員と接点を持てないままになってしまうこともあり、フロアの隔たりをなくすワンフロア化は必須のテーマだったのです。

経営企画本部 DX企画グループ グループ長 坂口聡さん
経営企画本部 コーポレート管理部 総務法務グループ グループ長 津田早紀さん

津田:そのため、私たちは2023年頃から淀屋橋界隈で物件を探し始めていました。その過程で、親会社である塩野義製薬も拠点集約とグローバル展開を見据えた移転を計画していることを知り、SHIONOGIグループ全体のシナジーを高めるべく、グラングリーン大阪への一括移転に参加することになりました。

グラングリーン大阪への移転を象徴する、シオノギヘルスケアの緑あふれるエントランス
ステロイド外用剤「リンデロン®Vsシリーズ」をはじめ、日々のセルフケアを支える代表的な一般用医薬品がずらりと並ぶ展示エリア

―― グラングリーン大阪の新拠点や周囲の環境はいかがでしょうか。

坂口:ビルの24階からの景色は梅田の街を一望でき、社員のモチベーション向上に大きく寄与しています。1階に降りればすぐ広大な芝生エリアがあるため、お昼休憩を活用して外へ出てリフレッシュする社員もいます。社員からも移転して本当に良かったという声が届いています。

大きな窓からは梅田の街並みが一望でき、仕事の合間に心地よいリフレッシュをもたらしてくれる

坂口:以前はビル内で他社と交流する機会がほとんどありませんでしたが、今ではビル主催の就業者限定イベントが頻繁に開催されています。芸人さんがファシリテーターを務める交流会や企業対抗の綱引き大会など、本気度の高い企画が月に1回ほどのペースで実施されており、こうした環境で働けることは大きな魅力だと感じています。

ビル主催の就業者限定イベントの1つである企業対抗の綱引き大会の様子
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デザインコンセプト「5UP」と「ワイキング」に込めた想い

―― オフィスコンセプトの成り立ちについて教えてください。

津田:移転にあたり、私たちが5年後や10年後にどうありたいかを考えました。会社としてすべてにおいて一段も二段もステップアップしたいという想いから5UP(ファイブアップ)というデザインコンセプトを掲げました。

 

具体的には、何かを一緒に成し遂げるために会う「Meet Up」、良いコミュニケーションを生む「Speak Up」、メリハリを付けて働く「Switch Up」、元気になる「Cheer Up」、ワクワクする「Dream Up」の5つのUPを設定したのです。

 

働くことに対して肩がこる、目が疲れるといったマイナスのイメージを持つのではなく、オフィスに来れば来るほど元気になり、活力をもらえる場所にしたいと考えました。その想いをデザインに落とし込むため、ワーキングとハイキングを掛け合わせた「ワイキング」という造語を作りました。

 

ハイキングには登り坂もあれば平坦な道もあり、途中で休憩も挟みます。仕事においても適度なアップダウンを楽しみながら、健康的に働ける空間を目指しました。

オフィスの入り口付近に広がる円形スペース。オープンで仕切りのないレイアウトにより、フラットでスムーズなコミュニケーションが生まれる

30分以上離席時の荷物移動ルールと定着へのプロセス

―― 30分以上席を離れる際は荷物をすべて移動させるルールがあると伺いましたが、本当ですか?

坂口:はい、フリーアドレスの固定化を防ぎ、1日の中で何度も席を移動してもらうための施策として導入しました。検討段階では1時間にすべきだという声もありましたが、通常の社内会議は1時間単位で設定されることが多いため、あえて30分という基準を設定したのです。

 

会議などで席を空けるときは荷物を一度撤去するルールのため、戻ってきたときは別の席に座ることになります。これにより自然と席の移動が生まれ、周りに座るメンバーが毎回変わるため、組織を越えた偶発的なコミュニケーションや気分転換につなげる狙いがあります。

同フロア内でドリンクやおやつが買えるだけでなく、電子レンジも完備。ちょっとしたひと息にはもちろん、お弁当の温めにも便利

―― 導入当初、社内からの反発はありませんでしたか。

坂口:最初は荷物を毎回まとめるのは効率が悪いのではないかという意見もありました。ごもっともな指摘でしたので、身軽に移動できるよう持ち運び用の小型バッグを準備したり、社内に荷物を置けるスペースを拡充したりして環境面を整えました。

席の移動をスムーズにするため、手軽に荷物を置けるスペースがオフィスのあちこちに設けられている

ルール自体を緩めるかギリギリまで悩みましたが、妥協すると移動が減ってしまうため、目的や背景を繰り返し伝え続けました。1年ほど経った現在ではすっかり定着し、各自が自分に合ったスタイルで自然に荷物を持ち運んで移動しています。

 

津田:当社の社員は根が真面目な人が多く、最初は戸惑いながらもルールをしっかり守ってくれました。一方的な押し付けではなく、各部署の代表者で構成されたプロジェクトチームを通じて、なぜこのルールが必要なのかを丁寧に説明し続けたことで、納得感を持って浸透させることができました。

3D動画での状況共有とボトムアップ組織「ワクつく」の貢献

―― 移転プロジェクトを推進する上で意識された工夫はありますか。

坂口:全社会議などの機会を活用し、工事の進捗状況を3D動画や写真で定期的に共有しました。スケルトン状態の配管が見える段階から壁が立ち上がっていく様子まで見せることで、社員全員に移転を自分ごととして受け止めてもらう工夫をしたのです。

 

津田:移転直前には、ワクワクする働き方を創る委員会「ワクつく」を発足させました。プロジェクトチームという堅い名称ではなく、現場のメンバーが気兼ねなくアイデアを出せる場を目指したものです。各部署の代表が現場の意見を吸い上げ、課題に対する解決策を自分たちで検討して全体に共有する役割を担いました。

 

設備面で使い方が分からないという声が上がった際も、ワクつくのメンバーが橋渡し役となって現場と管理者側の目線をすり合わせてくれました。みんなでオフィスを作り上げる前向きな空気感が生まれたのは、この取り組みのおかげです。

フロア各所に置かれた動物のモニュメントは、社員の心を少しでも和ませるための工夫。時おり社員の手で場所が移動されることもあるのだとか  

多様な設備が生む動線と空間デザインへのこだわり

―― 実際に完成したオフィスの設備や配置についてのこだわりを教えてください。

坂口:社員が自然とオフィス内を歩き回るよう、エリアごとに機能や設備の特色を変えています。大きなモニターがある席、1人で没頭できる集中ブース、会話がしやすいオープンエリアなど、用途や気分に合わせて場所を選択できるようにしました。

 

例えば、機密性の高い作業をするときは周囲を気にせず集中できる席を選び、逆にいろんな人と会話したいときは開放的なエリアを選ぶといった使い分けが可能です。座る場所を変えることが気分転換や業務効率化につながっています。

ゆったりとしたソファー席。くつろげる座り心地が、よりオープンで自然な対話を生み出す

―― 特に人気の高いエリアや意外な反響はありましたか。

津田:窓際のハイテーブル席や、食事もできる多目的エリアのバーカウンター席が想定以上に人気ですね。バーカウンターはPCと電源のみを配したシンプルな仕様ですが、ハイチェアによって視線の位置が高くなるため周囲と目が合わず、適度な抜け感があって集中しやすいようです。

 

また、ハイキングのテーマに合わせて設置した水が流れる滝のスペースも好評を博しており、水流の心地よい音が心理的な癒し効果を与えてくれています。

常に多くの社員で賑わう、オフィス内で人気のエリア。目の前の滝を眺めながら、穏やかな気分で日々の業務に打ち込むことができる
目の前を静かに流れる滝を模したモニュメント。照明の加減で水面のきらめきが変わり、時間帯ごとに多彩な表情を見せてくれる

充実の支援体制と健康を届ける社員のやりがい

―― 社員を支えるサポート制度や福利厚生について教えてください。

坂口:ランチの選択肢を広げるため、添加物に配慮した冷凍食品サービスを100円や200円で利用できるようにしています。また、糖質に配慮したお弁当を朝注文すると昼前に届くサービスも導入し、多忙な日でも外に出ずに健康的で美味しい昼食が取れる環境を整えました。

 

津田:社員の主体的な学びを支援する仕組みとして、教育希望制度も運用しています。会社主催の研修に加え、社員自身が「学びたい」「身につけたい」と考える外部セミナーや資格取得について申請し、承認されれば会社から費用面のサポートを受けることができます。実際に、マーケティング講座や薬事関連の専門知識の習得、登録販売者の資格取得に向けた学習など、社員一人ひとりが自分の課題に向き合い、主体的なスキルアップに取り組んでいます。

―― 最後に、日々の業務のやりがいと今後の展望をお聞かせください。

坂口:コールセンターに届くお客様からの感謝の声を聞く瞬間が一番のやりがいです。お薬のパッケージ裏に大きな文字で服用方法を記載したり、箱を開けたときに「おだいじにね」といった温かいイラストメッセージを添えたりと、お客様の気持ちに寄り添う工夫を重ねています。お客様の健康に貢献できている実感が私たちの原動力です。

 

移転後に社員の表情が明るくなり、社内全体が活気に満ちあふれています。社員がワンフロアに集まり、お互いの顔が見えるからこそ、部署の垣根を越えたチームワークが発揮できる素晴らしい環境です。やりたいことがあれば声を上げることでどんどんチャレンジできる風土ですので、夢を持った新しい仲間と一緒に働けることを楽しみにしています。

私たちの企業愛、お気に入りの推しアイテム

坂口:新オフィスにおける一番の推しポイントは、テーマごとに細部まで装飾された個性豊かな会議室です。

 

サハラ、アマゾン、パタゴニアといった世界各地の自然の名所から名付けられており、それぞれのテーマに合わせて壁紙や照明などの内装にも変化を持たせています。こだわり抜かれた空間により、打ち合わせのたびに新鮮な気分を味わえます。

 

自分たちの手でアンケートやフィードバックを重ねながら育ててきた空間だからこそ、すべての場所に社員の愛情が詰まっています。

ウユニ塩湖をイメージした会議室。理想の青を再現するため、施工業者と何度もやりとりを重ねて色味を徹底的に追求したのだそう
アマゾンをイメージした会議室。ふんだんにあしらったグリーンの装飾が音の反響を抑えるという、思わぬ相乗効果も生まれている

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取材のウラ側

取材者が最も感銘を受けたのは、社員の健康と偶発的な交流を追求した「30分ルールの徹底」とその定着力です。単に厳しい規則を強いるのではなく、持ち運び用バッグの配慮や「ワクつく」を介した丁寧な対話を重ねることで、社員自らが納得して行動する文化が見事に作られていました。

編集部が推したい福利厚生や支援制度
教育希望制度

社員の主体的な成長を後押しする自己研鑽支援制度。外部セミナーの受講や資格取得などの学習プログラムを主体的に申請でき、承認された受講費用を会社がサポート。マーケティングや薬事知識など、業務に必要な専門スキルを能動的に磨くことが可能。

フレックスタイム制度(コアタイムなし)

コアタイムが設定されていないフレックス勤務制度を採用。勤務時間に柔軟性を持たせ、月単位で所定労働時間を自身でコントロールすることで、自律的な時間管理を徹底。業務の効率化と生産性の向上を図りながら、ワークライフバランスの実現を目指しています。