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AIG損害保険株式会社
AIG損害保険は、世界有数のグローバル保険グループAIGの日本法人です。2018年にAIU損保と富士火災海上保険が合併し誕生しました。外資のグローバルな知見と国内の広範なネットワークを強みに、リスクマネジメントをサポートするための保険ソリューションを幅広く提供し、国内損保市場で独自の地位を築いています。
Official Site2026年1月、AIG損害保険株式会社は東京都港区の麻布台ヒルズへ東京本社を移転しました。51および52階という都内屈指の眺望を誇る新オフィスの開設は、単なる拠点の移動ではありません。一人一席の固定席からABW(Activity Based Working:アクティビティ・ベースド・ワーキング)への全面移行、2200ファイルメーターに及ぶ紙書類の大幅削減、部門を超えたコラボレーション促進など、グローバル保険グループの東京拠点として、働き方そのものを根本から再設計するプロジェクトでした。コーポレートリアルエステート担当部長の衣笠朋子さん、総務部長の下島新さん、執行役員 人事部門担当の宇田直人さん、人事部採用チームの森戸南菜美さんの4人に詳しく話を伺いました。
目次
ニューヨーク、ロンドンと並ぶ重要拠点として東京を強化
——今回の本社移転の背景と経緯を教えてください。
衣笠:AIGはグローバルに保険ビジネスを展開しており、東京はニューヨーク、ロンドンと並ぶ非常に重要な拠点です。日本市場にコミットし将来を見据えて東京本社の体制を強化し、グローバルのオフィス戦略と歩調を合わせることが、今回の移転の大きな目的の一つでした。
また、以前のオフィスビルには2012年から入居しており、既存オフィスの老朽化という現実的な問題もありました。保険会社にとって事業継続力は非常に重要です。移転先である麻布台ヒルズ森JPタワーはその観点でも優れた設備を備えていました。採用面でもこのロケーションは優秀な人材を引きつける力があると考えています。さらに、一人一席の固定席からABWと呼ばれるフレキシブルなシートアレンジへと大きく転換し、社員同士のコラボレーションをより高めていくという狙いもあります。
——グローバルのオフィス戦略と「歩調を合わせる」とは、具体的にどういうことでしょうか。
衣笠:ニューヨークとロンドンのオフィスがここ数年でリニューアルしており、今回の東京本社移転のタイミングで、新しいグローバルのオフィスガイドラインが導入されました。これにより、AIGの社員は世界のどこにいても同じオフィス体験ができるようになります。
——先ほど少し触れられましたが、改めて麻布台ヒルズを選んだ決め手を教えてください。
衣笠:コミュニケーションとコラボレーションを高めるために、広大なワンフロアを持つオフィスビルを探していました。麻布台ヒルズはまさにその条件を満たしており、スペース効率も非常に優れています。また、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)への取り組みを重要視している点も選定のポイントでした。
最も大きな決め手は事業継続力です。電力供給は、非常用発電設備として、ガスエンジン発電機と重油の非常用発電機のハイブリッドな供給で、停電時も100%の電力供給能力が確保されており、ガスが停止した場合においても重油は72時間の利用が可能です。敷地内に井戸も備えており、災害時のトイレ用水にも活用できます。また、東日本大震災の際、同じく森ビルが手掛ける六本木ヒルズの上層階ではワイングラスすら倒れなかったという免震・耐震エピソードも、高層ビルへの懸念を払拭する材料の一つになりました。
「チェンジエンジェルス」の活躍
——移転プロジェクトはどのように進めていったのでしょうか。
衣笠:プロジェクトのスタートは2024年11月で、2026年1月の新オフィス開設に向けて、2025年11月〜12月で移転を完了させるという非常にタイトなスケジュールでした。さらに今回は、先ほど述べたようにグローバルのオフィスガイドラインがアップデートされるタイミングと重なっており、それを横目で見ながらデザインを進めるというチャレンジングな状況でした。
最大の変化は固定席からABWへの移行です。このようなレイアウトをどう社員に受け入れてもらうかが、プロジェクト初期の最大の課題でした。
——固定席がなくなることへの抵抗感を、どのようにして解消していったのでしょうか。
衣笠:プロジェクト開始とともに、社員を巻き込んだチェンジマネジメントの取り組みを始めました。各部門から1人ずつ代表者を選出し、新しいオフィスで高いパフォーマンスを発揮するためにはどうすればよいかをテーマに、複数回のセッションを実施しました。このメンバーを私たちは「チェンジエンジェルス」と呼んでいました。命名したのは当社のCEOなのですよ。
宇田:重要なのは、マネジメントが決めたことをチェンジエンジェルスが各部門に伝えるだけでなく、社員側の声をチェンジエンジェルスがきちんと吸い上げていたことです。双方向のコミュニケーションができたことが非常に大きかったと感じています。
衣笠:物理的な面でも、社員にワークチェアを実際に試してもらって選んでもらったり、旧オフィスにモックアップを設置して使い勝手を体験してもらったりしました。コラボレーションエリアのデザインや家具については、若い世代の社員に参画してもらい、自分たちのシチュエーションに合わせた提案をしてもらいました。
——移転にあたってペーパーレス化も大規模に進めたと聞きました。
衣笠:旧オフィスには3400ファイルメーター(書類の収納量を示す単位)の紙書類がありました。新オフィスへの移転にあたり、一人あたり1ファイルメーターへの削減をお願いし、結果として約1200ファイルメーターにまで減らすことができました。「そんなことは無理だ」という声も当初は多かったのですが、実際にやってみればできた。これは大きな成果でした。
下島:工夫した点として、保険会社としてオフィスに保管しなければならない書類と、そうでない書類を明確にリスト化しました。オフィスに置かなければならない書類は、実はそれほど多くありません。それ以外はすべて外部倉庫に移すというルールを徹底しました。興味深いのは、現在、外部倉庫から書類を取り寄せるケースがほとんど発生していないのです。手元になくても仕事はできることを社員が実感していることの表れですね。
3つのエリアが生み出す、部門をまたいだコミュニケーション
——新オフィスはどのような特徴がありますか。
衣笠:オフィスは「フォーカス」「コミュニティ」「コラボレーション」の3エリアで構成されており、広大なワンフロアの中でどのエリアにも回遊できるデザインコンセプトです。
フォーカスエリアは仕事に集中するためのスペースで、34インチモニターと昇降デスクを備えています。コミュニティエリアはフォーカスエリアの合間に配置され、ランチや立ち話、ちょっとしたミーティングなどに使ってもらうことを想定しています。コラボレーションエリアは、プレゼンテーション用のスペースや、51〜52階という眺望を生かしたリラックスのためのソファ席、グループワーク用のスペースなどを設けています。一部にはカーテンで緩やかに仕切れる区画もあります。
——移転から数カ月が経ちますが、社員の反応はいかがですか。
衣笠:移転直後に行動分析を実施し、いくつかの課題も見えてきています。コミュニティエリアが、当初想定していた他部署の人との雑談やランチの場としてはまだ十分に機能していなかったり、窓向きの一人用ブースが音漏れの問題から使いにくいという声が上がっていたりします。仕切りのカーテン一つをとっても「不要」という意見と、「他の場所にも設置してほしい」という意見が混在しており、さまざまなフィードバックが集まっている状況です。
ただし、重要なのは、今は部門ごとに「グループアドレス」として座席を割り当てているステップ1の段階であるということです。次のステップでは部門をまたいだ座席配置を進め、さらにその先では自由に場所を選べる環境を目指しています。
下島:一方で好評を得ている点もあります。以前はフロアが分かれていたため他部門の仕事が見えにくかったのが、ワンフロアになったことで互いの働き方がよくわかるようになったという声は多いです。また、チェンジエンジェルスの発案で導入したネームプレートが大きな効果を発揮しています。フリーアドレスで「隣の人が誰かわからない」という不安が解消され、顔見知りでなくても気軽に話しかけやすくなったといった声も届いています。
個人のライフステージに寄り添う、柔軟な人事制度
——オフィス環境が社員の働きやすさを支えるハード面だとすれば、ソフト面である人事制度についても教えてください。
宇田:まず、2016年にAIGジャパングループ全体の人事・福利厚生制度を統一したことで、グループ内の人材流動性が高まりました。また評価やグレード体系もグローバルで統一されているため、海外拠点への異動もスムーズに行えます。
次に、2019年に導入した勤務地希望制度「Work@Homebase」があります。全国転勤型の「モバイル社員」か、特定エリアで働き続ける「ノンモバイル社員」かを、社員自身が選択できる仕組みです。現在はノンモバイルが約6割となっています。結婚、出産、介護など、ライフステージに合わせてエリアを選べることは、長く働き続ける上で非常に重要です。この制度は当時、日本の大手企業の中でも先駆的な取り組みでしたが、今では多くの企業でも類似の制度が広まっており、感慨深く思っています。
在宅勤務については、コロナ禍を経て定着しました。現在はイノベーションや相互コミュニケーションの観点からオフィス出社を重視しており、週4日出社という方針を取っています。2021年にはコアタイムを撤廃した「スーパーフレックスタイム制度」を導入し、働く時間の柔軟性も高めました。さらにここ数年はウェルビーイングを重点テーマとし、メンタル、フィジカル、ファイナンシャルの各側面から社員が働きやすい環境作りに力を入れています。
——キャリア形成の支援についてはいかがでしょうか。
宇田:「Own Your Career(自分のキャリアは自分で作る)」という考え方を推進しています。日本国内だけでなくグローバルで募集中のポジションをすべてオープンにしており、社員が自ら手を挙げて異動できる「ジョブポスティング制度」があります。
また、eラーニング「LinkedInラーニング」などを活用した自己学習の機会を提供し、「Learn-It-All(すべてを学ぶ)」というカルチャーの定着を図っています。これはAIGジャパンの3か年戦略においても「将来を見据えた組織構築の推進」の柱として位置付けられており、継続的な学習や社員間のコラボレーションを促す文化を組織全体に根付かせることを目指しています。
森戸:新卒採用は約5年前から部門別採用に切り替えており、入社時点から希望するキャリアの入口を選べるようにしました。これが入社の大きな決め手になっているケースも多いです。
——AIG損害保険で特に活躍する人物像というのはありますか。
宇田:多様なバックグラウンドを持つ社員が多い会社ですから、異なる価値観や意見を尊重しながら、自ら発信・提案できるコミュニケーション能力の高い人が活躍しています。また、変化の激しいマーケットに対応するため、頭の柔軟性を持つ人材も非常に重要です。
森戸:キーワードとして、主体性と積極性が挙げられると考えています。当社は若手のうちから裁量権を持って働ける環境です。指示を待つのではなく、自ら考え行動し、失敗を恐れずチャレンジするマインドを持つ方が、早い段階から成長していく印象があります。
宇田:新卒でずっと頑張ってきた社員と、私のように外部から専門職として入った中途社員が、それぞれの強みを生かしながらうまく融合している組織だと感じています。外国籍の役員や社員もいて、多様性がありながら、協力し合う仲間意識も強い。
下島:個人的には、外資系企業の自由度と日系企業の働きやすさ、両方のいいところを持ったバランスの良い職場環境だと思います。
宇田:より柔軟な働き方を推し進めることで、大きな成果やパフォーマンスを出した社員に対する評価をさらに加速させたいですね。ただし、数字だけを評価するのではなく、会社のパーパスや価値観を尊重、理解した上で結果を生み出した人を報いていきたいと考えています。
AIGではパーパス(存在意義)と価値観を実現するための行動指針として、「自分ごととしてとらえよう(Take Ownership)」「模範となろう(Set the Standard)」「共に成功を収めよう(Win Together)」「よきアライ(理解者)となろう(Be an Ally)」「常に正しい行いを心がけよう(Do What’s Right)」という5つを掲げています。会社としてはこれらに沿って行動し、体現する社員をより正当に評価していきたいですし、社員もパーパスや価値観をしっかり理解しながら、一人一人が自律的に高いパフォーマンスを発揮してほしい。そうした組織文化を引き続き育てていきたいですね。
——ありがとうございました。
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取材のウラ側
麻布台ヒルズオフィス最上階という特別なロケーションに、当初は背筋が伸びる思いで向かいました。しかし、そこで目にしたのは、「外資=クール」という先入観を覆す、人の温かさとチームの結束力でした。「困ったときは助け合うのが当たり前」という社風の根底には、非常時にもお客様を支え抜く使命感と、災害対策に対する圧倒的なプロ意識が息づいています。社員の方々の熱い志に触れ、深く胸を打たれる取材となりました。
編集部が推したい福利厚生や支援制度
| 1. 勤務地希望制度「Work@Homebase」 | 転勤可能な「モバイル社員」か、特定地域で働く「ノンモバイル社員」かを自身で選択できる制度。ライフステージに合わせてエリアを選べる先駆的な仕組みで、現在は約6割が後者を選択。 |
|---|---|
| 2. スーパーフレックスタイム制度 | コアタイムを設けず、日々の始業・終業時間を社員自身の裁量で自由に決定できる仕組み。個人の生活や業務状況に合わせ、最も効率的でバランスの良い働き方を実現します。 |
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