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ZVC JAPAN株式会社
Zoomは、2011年設立、米国カリフォルニア州サンノゼに本社を置くコミュニケーション技術企業です。ビデオ会議ソリューション「Zoom Meetings」で知られ、あらゆる規模の企業や業界にサービスを提供。クラウドベースのプラットフォームで、チャット、電話、音声・ビデオ会議、ウェビナーなどを提供しています。
Official Siteビデオ会議ソリューションの雄として知られるZoom Communications (以下、Zoom)は、コロナ禍を経て単なる会議ツールを超えた「コミュニケーションプラットフォーム」企業へと進化を遂げています。それを推し進めるため、2024年10月には日本法人のZVC JAPANが東京・丸の内に初となる自社オフィスを開設しました。従来のシェアオフィスからの移転により、社員の働き方などにどのような変化があったのでしょうか。同社執行役員 マーケティング本部長の田中裕一さん、広報部コミュニケーションズマネジャーの寒田美緒さんに話を聞きました。
目次

「AIファースト」の時代
——まずは経営理念や企業文化について教えてください。
田中:創業者兼CEOのエリック・ユアンが2011年にZoomを立ち上げた後、2018年に日本法人を設立しました。グローバル全体では「すべての人を幸せにする」というのが当社の組織文化です。そして、ビジョンとして「一つのプラットフォームで世界を変える 無限に広がる人とのつながり」を掲げてビジネスを推進しています。
多くの方がコロナ禍にビデオ会議の「Zoom Meetings」を導入してくださいましたが、現在は人々がコミュニケーションするためのプラットフォーム全体を提供していこうと考えています。そこで昨年、新たなミッションとして「人と人をつなぐAIファーストのプラットフォーム」を打ち出し、お客さまの成功を支援しています。
——「AIファースト」とは具体的にはどういう意味でしょうか?
田中:現在、多くの企業がビジネスにおいてAIを活用していますが、AIによってこれまでの業務を時間短縮できたり、コミュニケーションをうまく行えたりするなど、さまざまな形で働き方を大きく変えていくと思います。
Zoomでは「Zoom Workplace」という企業向けの新しいコミュニケーションプラットフォームを展開しています。例えばメール、チームチャット、スケジューラーなどの機能があり、お客さまとのミーティング調整もURLを共有するだけで簡単に行えます。AIファーストという文脈では、ビデオ会議やメール、チームチャットなどすべてのツールにAIが組み込まれていて、「AI Companion」というZoom独自のAIアシスタントが、ミーティングの録音・録画だけでなく、内容の要約や次のアクションの提案まで行ってくれます。

「ケア」を重視したコミュニティ活動
——日本法人独自の行動指針やカルチャーはありますか?
田中:代表の下垣(下垣典弘代表取締役会長兼社長)がよく言っているのは、Zoomはビデオ会議の会社でありながら、お客さまのところに直接訪問し、対面を重視するということです。その場でしか得られない“スティッキー”な情報があるからです。とりわけ日本企業は対面でのビジネスが主流ですから、その文化や慣習を尊重しています。
そうしたコミュニケーションによって得たお客さまの声をしっかり受け止め、それを本社の製品開発部門に提供することで、日本企業が求める製品開発をスピーディーに行っています。昨年だけで3,000以上の新機能をアップデートしました。実際、日本のお客さまからのフィードバックは理にかなったものが多く、それを提供することでグローバルのお客さまにも喜ばれるため、当社にとって日本は非常に重要な拠点となっています。
——どういった価値観を持った社員の方が多く働いていますか?
田中:Zoomは2018年に日本に進出し、コロナ禍でビジネスを本格化させました。当時は自社オフィスがありませんでしたが、そのような状況でもビジネスが成り立っていました。これは、「Deliver Happiness(幸せを届ける)」という理念に共感する社員が集まっているからこそだと思います。対面でなくても、コロナ禍の中でお客さまのために一緒に対応できたのは、この共感があったからです。また、「ケア(配慮)」を大切にしています。お客さまのケア、会社のケア、コミュニティーのケア、チームメイトのケア、そして自分自身のケアです。
寒田:ケアについては、コアバリューとして位置付けています。これに焦点を当てた有志によるチーム活動があり、会社からの予算を得て、地域社会への貢献活動を行っています。
日本でも私が入社した3年ほど前から始まっており、2024年1月に発生した能登半島地震への義援金寄付やチャリティーランへの参加などを行っています。また、昨年のクリスマスには社員が集まってクリスマス用の飾りを作り、経済的に恵まれない子どもたちの施設や老人ホームに送るといった活動も行いました。

田中:そのほか、特徴的なこととしては、働き方に個人の裁量を与え、マイクロマネジメントではなく信頼をベースにしています。それにより、社員が責任を持って仕事に取り組める環境が整っています。ZVC JAPAN (Zoom)に入社する社員は、この価値観を共有していなければ、オンラインだけでのコミュニケーションでビジネスを進めることは難しいでしょう。
さらに、Zoomには自発的な人材が多く、自立型組織として、各自が目標に向かって主体的に動ける人が集まっています。これは時代の流れにも合致していて、今後は自立型の働き方がさらに重要になるでしょう。AIを活用する現代では、自分でプロンプトを考え、AIと壁打ちをし、それを皆に共有するという新しいスタイルが求められるからです。
自社オフィス移転がもたらした変化
——昨年10月に初めて自社オフィスを開設しました。それ以前はどのような状況だったのでしょうか?
田中:以前はシェアオフィスを利用していました。比較的ゆとりのあるスペースではありましたが、シェアオフィスということで人の出入りも多く、お客さまを案内するには万全の状態ではありませんでした。
移転のタイミングには、前のオフィスの契約更新時期や、人員拡大によるビジネス推進の流れなど、さまざま理由があります。立地については、多くのお客さま、パートナー様、コミュニティにオフィスにお越しいただけけるよう、交通アクセスの良い東京・丸の内が選ばれました。


——シェアオフィスから自社オフィスに移転した理由について、もう少し詳しく教えてください。
田中:日本のお客さまからの信頼を得るためには、とても重要な戦略だと考えています。シェアオフィスという選択肢もある中で、代表の下垣は日本に自社オフィスを作り、最新のZoom製品を紹介したいと考えていました。シェアオフィスでもできないことはありませんが、製品やソリューションを見せるためには、ある程度施設を管理できるスペースが必要です。例えば、シェアオフィスでは、共有スペースにZoomの機材を設置するようなカスタマイズは難しいです。
そのビジョンを具現化したのが新オフィスに設立されたデモンストレーション施設「Experience Hub Tokyo」です。新しい働き方の未来を一緒に創るために、このような場所が必要でした。私たちのオフィスは、お客さまが訪れることを前提に設計されています。例えば、通常のオフィスでは社員の働くエリアとお客さまのミーティングスペースが分かれていますが、当オフィスではお客さまが社員の働いている執務エリアにすぐアクセスできるようになっています。私たちの働き方自体が一つの事例となり、お客さまとともにどのような働き方やオフィスデザインが良いのか、そこにZoomのテクノロジーがどう活用できるのかを体感していただける場を作りたいという思いからです。
また、従業員の一体感も醸成したいと考えていました。毎週月曜日に社員が集まる朝会、社内ミーティングや、社内イベントを担当する「ハッピークルー」による活動も、自社オフィスであれば実施しやすくなります。社員のイベントやお客さまとのつながりの場としては、常設の自社オフィスがとても重要です。特に日本では、そういった場の意義が大きいと感じています。



グローバルと連携したオフィス移転プロジェクト
——移転にあたっての苦労や工夫した点など、何かエピソードがあれば教えてください。
田中:オフィス関連のチームとして「ワークプレイス」という部門があり、米国本社や英国オフィスなどのメンバーとコミュニケーションを取りながらデザインを進めました。日本独自の要素もあれば、グローバルとの連携も必要でした。多様な意見を尊重しながらプロジェクトを進めました。
例えば、机などのオフィスの家具は、本社の責任者がこだわりを持って選定し、一部は輸入しています。単に設計会社などにアウトソーシングするのではなく、Zoom文化の思いやこだわりを形にするプロセスが大変だったと聞いています。

——移転プロジェクトはいつ頃から始まったのでしょうか?
田中:入居したのは昨年10月ですが、プロジェクト自体は約2年前から動き出していました。その頃はまだハイブリッドワークが定着するかどうか不透明な時期でしたが、物件探しから始まっていました。丸の内を含め、さまざまな選択肢を検討しました。コロナ禍が落ち着き、新しいオフィスを構える機運が高まったことも、プロジェクト進行の背景にあります。
ただし、オフィス立ち上げで終わりではなく、より良くするために継続的に改善を行っています。オフィスコーディネーターが日本にもいるので、コミュニケーションを取りながらオフィスの価値を高め、ビジネスの成長とともにさらに発展させていく予定です。
新オフィス移転の成果
——新しいオフィスの特徴を教えてください。
田中:オフィスレイアウトとしては、社員が「ホットデスク」(共有オフィススペース)を中心に働き、Zoomの「ワークスペース予約」機能を使って場所を予約するようになっています。その他にも、交流しやすいコミュニティスペースや、お客さま向けのデモンストレーション施設、会議室、電話ブースなど、最新設備を揃えています。
移転後にはさまざまな変化がありました。社員が集まるイヤーエンドパーティー、全員でランチを取れる場所の確保など、シェアオフィスでは難しかったことが実現しています。
寒田:1月末にはオフィスお披露目パーティーを開催し、プレスの方々を招いてイベントを行いました。これもシェアオフィスでは難しかったでしょう。単にイベントを開催するだけでなく、参加者同士がつながり、情報・意見交換をしながら、最新のソリューションや新しい働き方、最新機器の実際の使用方法をリアルに見せることができるようになりました。
田中:また、オフィスに来れば誰かがいるという安心感もあります。相談できる仲間がいつもいて、マーケティングチームなら毎週2日は定期的に集まり、ミーティング後に時間のある人同士で飲みに行くといった交流も生まれています。
さらに、カフェエリアでは社員同士が気兼ねなく会話でき、お客さまをおもてなしすることもできます。グローバルに約7800人ほどいる社員のインバウンド訪問も増え、丸の内という立地の良さから他国のZoom社員も気軽に立ち寄れるようになりました。世界中のZoom社員がIDバッジさえあれば、どのオフィスでも予約して使用できるシステムになっています。Wi-Fiや食事も提供されており、働く環境として非常に整っています。
——新オフィスを半年ほど運用してきて、対顧客の面ではどのようなメリットが出ていますか?
田中:営業、チャネルチームからは大きなメリットを感じているという声を聞いています。オフィスでお披露目イベントやパートナー向けイベントを開催し、最新デバイスやソリューションを体験してもらえるようになりました。
単にビジネスの成功や製品販売だけでなく、「人と人とのつながり」というZoomのミッションを体現できる場になっているという実感があります。製品だけでなく、オフィス自体が人と人をつなげるプラットフォームになっていると感じています。
寒田:社内イベントが気軽に開催できるようになりました。例えば、「Japan Womenの集い」という有志の女性社員の集まりがあり、これまでバーチャルで開催していたものを初めてオフィスのコミュニティハブで実施できました。こうした小規模な集まりも外部施設を借りずに開催できるようになり、大きなメリットを感じています。
——社員にとってのメリットや成果について、他にありますか?
田中:マーケティングチームの例でいうと、インサイドセールスの業務効率が向上しました。リモートでも可能な業務ですが、オフィスには個室の電話ブースがあり、ノイズキャンセリング機能も活用できます。
また、上司と一緒に電話対応ができる2人用の個室もあり、リアルタイムでのコーチングが可能になりました。もちろん録音して後から分析することもできますが、その場でのライブフィードバックは非常に価値があります。さらに、質問があれば隣にいる営業担当者にすぐ相談できるなど、アジャイルに対応できる環境が整っています。これはオフィスで働くことの大きな価値だと感じています。

未来の働き方と新たな可能性
——Zoomの皆さんが考える未来の働き方とはどのようなものでしょうか?
田中:当社のCEOであるエリック・ユアンには明確なビジョンがあります。彼がZoomを創業したきっかけの一つは、大学時代の遠距離恋愛でした。中国国内で遠く離れた場所にいた彼女と、当時は電話や手紙くらいしかコミュニケーション手段がなかったため、いつでも会えるようなビデオ会議を作り始めたのです。
その技術が進化し、現在のZoomは安定した高品質の音声や映像でのコミュニケーションを提供し、日々のお客様とのミーティングから、人事の面談、取材などのインタビューまでさまざまな場面で活用されています。エリック・ユアンが次に考えているのは、映像を通じてまるで本当にそこにいるような体験、例えばコーヒーの香りや温度までも伝わるような技術を2035年頃までに実現したいと考えています。
また、働き方についても変革が起きる可能性があります。現在の週5日間、午前9時から午後5時まで働くという形は1926年に米自動車大手「フォード」の創設者、ヘンリー・フォードの提示から確立されたものですが、生成AIやAIエージェントなどの新技術により、将来的には週4日勤務になるかもしれないと私たちは予測しています。そうなれば、仕事の生産性の向上と同時にプライベートの時間が増え、世界中を旅行したり、新しいことを楽しんだりする余裕が生まれ、一人一人の人生の充実した価値につながるでしょう。
Zoomは生産性を高め、働きがいのある仕事をサポートするツールを提供することで、こうした未来の働き方への移行を支援していきたいと考えています。
——ありがとうございました。

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取材のウラ側
ZVC JAPANの取材を通じて印象的だったのは、一人ひとりの裁量を尊重し、主体的な働き方を促す企業文化です。従業員の自律性を支えたいという思いが、職場環境の随所に表れていました。
まず、スキルアップやキャリア形成を支援するために、コーチングサービスや資産形成のための外部サービスの提供など、成長を後押しする制度が整っています。また、コアタイム以外の時間帯では柔軟な働き方が可能で、従業員は自発性と責任感を持って業務に取り組んでいます。
ランチについても、以前は経費の精算方式でしたが、「毎回の精算が面倒」といった声を受け、現在は栄養バランスの取れた美味しいお弁当が週に数回無料で用意されています。さらに、ドリンクやお菓子も豊富に取り揃えられており、日々の業務の合間に気軽にリフレッシュできる環境が整えられています。
このように、安心して力を発揮できる環境があるからこそ、従業員のパフォーマンスも自然と高まっていくのでしょう。ZVC JAPANの成長の背景には、自律性を育む真摯な企業姿勢があることを実感しました。
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