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ピジョンホームプロダクツ株式会社
ピジョンホームプロダクツ株式会社は、ベビー用品全般を扱うピジョン株式会社のグループ会社で、高品質かつ安全性の高い赤ちゃん用洗剤やスキンケア商品を中心に開発・製造を行っている会社です。
Official Site哺乳瓶をはじめベビー用品全般を扱うピジョングループの中核企業として、スキンケア商品や洗濯洗剤などを製造・販売するピジョンホームプロダクツ株式会社。同社は2023年8月、本社オフィスを静岡県富士市大淵へ移転するとともに、2つの工場も同じ場所に集約・統合した。これによって一層の事業拡大を図っていく考えだ。このオフィスリニューアルプロジェクトを推進した同社管理部管理グループでマネージャーを務める鈴木素さんと、勝又まゆみさんに、取り組みの背景やリニューアル後の効果などを聞いた。
目次
優先すべきは「赤ちゃん品質」
——まずは会社のことについて簡単に教えていただけますか。
鈴木:当社では赤ちゃんの肌にも安心して使っていただけるミルクローションやクリームといったスキンケア商品のほか、哺乳瓶を洗ったり、消毒したりするための洗浄用品、衣類用洗剤などを主に製造・販売しています。それ以外にも、赤ちゃん用の歯磨き粉や、子育てをするお母さんに向けたスキンケア商品なども作っています。
——ベビー・子育て用品に特化した会社として、どのような経営理念をお持ちでしょうか。
鈴木:グループ全体で「Pigeon DNA」および「Pigeon Way」という企業理念を掲げています。これはピジョンというブランドの核になるような、社員がずっと持ち続けているべき方針や指針を示していますが、一言でいうと「愛」です。赤ちゃんは愛情があったからこそ生まれてきた存在なので、そういった存在を包み込む製品だったり、お母さんやお父さんの愛情に寄与できるような使いやすい製品だったりを作ることを常に心がけています。
その上で、ピジョンホームプロダクツとして掲げているのが「赤ちゃん品質」です。赤ちゃんのように大切なものすべてに安心して使っていただける製品にこだわりを持っています。
——「赤ちゃん品質」を体現する具体的なエピソードはありますか?
鈴木:私が入社してすぐの出来事です。出荷前の哺乳瓶洗浄用品に関して、品質上の懸念が生じました。もしかしたらすべて正常品かもしれないし、不良品が混ざっているかもしれない。対象は数千ケースでした。人気の商品ですからお客さまもすぐにほしがっています。全部不良品にすればお客さまにご迷惑がかかる上に、廃棄するしかないため、売り上げは大きなロスとなります。そこで社長の矢作(一朗)が下した判断は「すべて捨てる」。この意思決定を間近で見た時に「赤ちゃん品質」や「愛」が最優先で、品質的に少しでも懸念があれば排除しなくてはならないという会社のブレない姿勢を実感しました。なお、その後は緊急で追加生産を行い、お客様への欠品は回避されました。
ChatGPTを駆使して業務改善の仕組みを構築
——現在、製造部門を中心に100人ほどの社員がいらっしゃいますが、特に活躍されている人の共通点はありますか?
勝又:トップの矢作も推奨しているように、自ら考えて働く「考働」ができる人ですね。あとは、Pigeon Wayなどの経営理念に共感して行動できる人や、現状維持ではなくて少しでも成長できるよう挑戦している人は活躍しています。やはり主体的に物事を考えて行動できる社員というのは、どの部署においても要望があります。
鈴木:一例を挙げると、ある30代の女性社員が、これまでアナログだったバックオフィス業務を効率化するために、発注書などをメールで受信したら自動で振り分けて印刷するような仕組みを自発的に構築してくれました。それを社内で発表したところ、「うちでも導入したい」といった声が集まり、今では他部署にもこの業務改善が広がっています。
——その社員はシステム関係の方だったのですか?
鈴木:いえ、原材料や資材の発注業務を担当しています。ChatGPTなどで調べながらプログラムのコードを書いたそうです。
——それは素晴らしい! 自ら声を上げれば、その挑戦を後押ししてくれる社風があるのですね。
勝又:そうですね。何事にも挑戦しやすい雰囲気だと思いますし、たとえ失敗しても責められることはまずないです。それよりも今は、行動することが評価される人事制度になっています。
——具体的にどういった制度でしょうか?
勝又:2021年からコンピテンシー評価を採用しています。頭で考えていても行動に移さなければ評価されない。逆に、行動に移せば失敗したとしても評価されるという制度設計にしています。目標は6割〜7割程度の達成でもいいから、それよりも行動を重視するように変えました。
鈴木:今までは結果に対する評価だったのですが、そうすると達成できる目標を立ててしまうわけです。結果よりも行動を重んじる仕組みに変えたことで、仕事に対してよりチャレンジングな姿勢をとる社員が増えたのではと思います。
——そのほか、ユニークな制度などはありますか?
鈴木:親睦援助金として、一人当たり年間1万5000円が支給されます。その予算を使って、部署内での歓送迎会だったり、部門の垣根を超えた親睦会を開いたりしています。この間は何人かで一緒にSUP(スタンドアップパドルボード)をしに行った社員もいました。
ポイントは、親睦援助金を使用する際、社内SNSで必ず「こういうことをやります」と表明し、人員を募るのをルールにしている点です。毎回同じ人が集まったり、仲の良いメンバーが内々で飲み会したりするのではなく、普段はまったく話す機会のない人とコミュニケーションをとってほしいという思いで、そのようなルールを設けています。
3つの軸でオフィスリニューアルを検討
——2023年8月に新本社・工場を竣工しました。2019年から進めていたこのオフィスリニューアルプロジェクトについて詳しく教えてください。
勝又:発端は工場のキャパオーバーです。生産能力が限界を超えてしまい、外部に委託して製造していた商品もありました。それと工場自体の老朽化も課題でした。
本社オフィスについては、社員が増えて手狭になっていたことに加え、BCPの観点もありました。旧オフィスが立地していた場所は地盤が柔らかく、地震などが起きたときに事業存続ができなくなる可能性が高かったためです。
そうしたいくつかの要素が重なり、オフィス移転・リニューアルの検討を始めました。そこでフロンティアコンサルティングさんに入っていただき、ワークショップや社員インタビューを実施するところからスタートしました。
ワークショップでは、従来の工場で継承したいもの、改善したいことなどをテーマに話し合いました。加えて、社員や経営層へのインタビューで出た意見なども集約し、フロンティアコンサルティングさんに、私たちが達成すべきマインドと新工場や新オフィスに求める要素をまとめてもらいました。その結果、「働きやすさの向上」「コミュニケーションの活性化」「ブランド発信」という3つの軸が決まりました。また、オフィスコンセプトを「PHP(Peak of Happy Place)」と定め、赤ちゃんとその家族の幸せのための製品を提供する会社として、社員も楽しく働ける場所にしていくことを目指しました。
——3つの軸について、具体的にご説明いただけますか。
勝又:「働きやすさの向上」について、以前のオフィスでは、ネットワーク通信がつながりにくかったり、Webミーティングが増えてきたのに会議室が少なくて取り合いになっていたりといった悩みがありました。あとは、人員も増えてきて作業スペースも狭くなっていました。こうしたオフィス環境を改善して、もっと働きやすくしたいと考えました。
「コミュニケーションの活性化」に関しては、例えば、直接会って1分話せば済むことでも、物理的に工場が離れているから電話をしなければなりませんでした。でも、それだと何となくコミュニケーションに齟齬(そご)があったため、これを解消できたらいいよねという潜在的な欲求がありました。
鈴木:「ブランド発信」もまだまだ不足していました。赤ちゃんがいる日本のご家庭であれば、当社の製品を何かしら使っていると思います。それだけ数多くのプロダクトを提供しているにもかかわらず、実際に生産現場をお客さまに見てもらうような機会はありませんでした。そこで新しい工場では一般のお客さまも見学できるようにして、製品の品質に対するこだわりなどを発信していきたいと思いました。それによって当社のブランドをもっと知ってもらいたいです。
——約4年間のプロジェクトを振り返り、最も苦労したことは何でしょうか? 特にこの時期はコロナ禍で大変だったはずです……。
勝又:本当にゼロからのスタートだったため、どういう働き方にするか、オフィスルールはどうするか、社内のネットワーク環境はどうすればいいかなど、細かいことを挙げればキリがないほど考えることが山積みでした。もちろん何でもできるし、やりがいもある状況でしたが、通常業務をこなしながらだったので、時間的に余裕がない点は苦労しましたね。
それと予算の問題もありました。コロナ禍で建材費が高騰し、オフィス面積を予定よりも小さくしなければならないなど、途中で計画の変更を余儀なくされました。そこは大変でした。
——コロナ禍以降、世の中全体の働き方や価値観もガラリと変わりました。2019年にプロジェクトがスタートした時点からオフィスコンセプトも変わったのでしょうか?
勝又:コンセプト自体は変わっていません。ただ、先ほどお話ししたように、当初描いていた設計から削る部分があったり、工場の見学通路を大幅に変更したりということはありました。
オンライン、オフライン問わず、社員同士のコミュニケーションが活発に
——オフィスや工場をリニューアルしたことで、どのような成果が生まれていますか?
鈴木:物理的な面でいうと、オンライン会議の時にさっと入れる部屋ができたのが大きいです。以前と比べてオンラインでのコミュニケーションのあり方が変わってきて、前もって予定されるような会議だけでなく、「この後、少し話せる?」などとクイックにオンラインで対話することが増えています。なぜならメールでやり取りするよりも、すり合わせや認識合わせがしやすいから。そうしたコミュニケーションがすぐに取れる環境が整い、働きやすくなりました。
勝又:コミュニケーションに関しては、2つの拠点が統合されて、ワンフロアのオフィスとなったため、今までだったらほとんど会う機会のなかった社員にも、気軽に声をかけられるようになりました。執務エリアはワンフロアをシェルフで部署ごとにゆるやかに仕切っているため、部署間のコミュニケーションも活発になったと思います。
オフィスデザインが変わったことで毎日の働き方もかなり変わりました。ABW(Activity Based Working)の考えを取り入れ、働き方に合わせて働く場所を変えることができる設計としていますので、共有スペースで他部署の方とちょこっと打ち合わせをしたり、大事な電話は個室へ入ったりと、柔軟な働き方ができるようになりました。
あとは、社員食堂ができたのも喜ばれています。今までは毎日お弁当を発注していましたが、社食だと温かい食事をいただけますし、しかも安い値段に設定してもらっているので、社員からは好評です。ご飯を食べながら社員同士でコミュニケーションも取れますし。
——ちなみに、新しいオフィスで気に入っている場所や、お勧めのスポットはありますか?
勝又:私はカフェテリアのファミレス席です。オフィスにほしいなとずっと思っていたので。でも、あの席は人気があって結構取られちゃいます。
鈴木:私は集中ルーム。予約して取る部屋と、予約しなくてもいい部屋があるのがありがたいです。今までの会議室はすべて予約制でしたが、さっき言ったようにクイックでオンライン面談したい時に、空いていればすぐに使えるのは助かります。
乳児院との関わり合いも
——地球環境や地域社会への貢献活動に対しても精力的に取り組んでいると伺っています。
勝又:ピジョングループでは、環境保護・環境負荷低減にも真剣に取り組んでいます。具体的には、ピジョン環境ラベルという独自の環境基準を設定したラベルを設け、基準を満たした製品のパッケージにこの環境ラベルを表示しています。当社でも原料や資材を見直したり、新製品の開発時には環境を意識した選定を行うなどして、2025年までにこのラベルをすべての商品に表示できるように日々取り組んでいます。その他には、移転に際して太陽光パネルを設置し、電力の一部を賄うほか、資材をアップサイクルしたノートの作成などの活動も行っています。
鈴木:当社でも泡ソープなどのパッケージとして使用している非食品の使用済紙パックを試験的に行政等と協働で回収を行い、再生ノートにする活動も行いました。ノートの中ではピジョングループの環境保護に関する取り組みも紹介しています。まだまだ少しではありますが、当社のある富士市へもお役立ててもらえるよう、お渡しすることもできました。このような社会に還元・貢献できるような活動を地道に続けていけたらと考えています。
勝又:地域社会貢献については、乳児院への寄付や商品寄贈のほか、より良い製品を研究開発するために、寝かしつけなどのお世話をしながら乳幼児と触れ合う機会をいただいています。
また、工場見学もできるようになったので、小学生向けに職業体験イベントのような企画も実施したいなと思っています。
——最後に、今後の展望をお聞かせください。
鈴木:ピジョンブランドは安心だと消費者の方々に思っていただける製品を生み出していることに、社員は強い誇りを持っています。今回その生産拠点である工場も新しくなりましたし、これまで以上に高い品質の製品を作り、またそれを維持していく組織であり続けたいと願っています。
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取材のウラ側
「とにかく熱い人なんです!」——。鈴木さん、勝又さんが口を揃えて何度も矢作社長をこう評した。ひとたび語り出せば熱量が下がることなく、1時間でも2時間でも物足りないという。時には感極まって泣き出すこともあるそうだ。そんな経営トップのことを愛情を持って微笑ましく話す様子からも、同社が大切にする「愛」という企業理念が、社員間にもしっかりと根付いていることを強く感じられた。
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