今回お話を伺った平山さんとNOMALを表現したウォールアート(制作:Gravityfree)

小さな挑戦を応援する

ビジョンは「小さな挑戦を、当たり前にできる社会をつくる」。株式会社NOMALが手がけるさまざまな事業を貫くのは、頑張る人、夢を持った人を応援したいという熱意だ。

ーー事業内容について教えてください。

アート通販、ウォールアートの制作、それから採用コンサルティングという、3つの事業を主に行っています。このほか、子会社になりますが、「堺シュライクス」というプロ野球独立リーグの球団も運営しています。さらに、2022年4月には、「出囃子ーDEBAYASHIー」というファンクラブ型のお笑い芸人の支援事業も始まります。

NOMALが運営する球団「堺シュライクス」

ーーさまざまな事業に取り組んでおられますが、それぞれに共通点はありますか?

代表の松本(祥太郎)と私は大学時代からの友人で、起業当時から「採用」と「アート」という2本の柱で事業を成長させてきました。いずれもお互いの想いがあり、強みがある分野です。松本が採用で、私がアート。一見するとまったく違う分野ですが、いずれのサービスにも「誰かの挑戦を応援する」という共通点があります。弊社の事業はすべて、この「誰かの挑戦を応援する」ことをベースに展開しています。もちろん、ただ誰かを支援するだけが目的ではありません。事業としてしっかりと持続可能なものにしていく。マネタイズのスキームを考え、実行に移すスキルセットこそ弊社の強みです。

アートを使った社内コミュニケーション

ーー現在、アート事業が好調だと聞きました。

コロナ禍でおうち時間が増え、「アートを通販で買いたい!」という需要が増えたんです。アートこそ、不要不急だと思っていたので意外でした。オフィスのウォールアート事業も好調で、前年比約500%ほどに成長しました。

オフィスの壁にはたくさんのアート作品が飾られている

ーー成功の要因は何だと考えられますか?

リモートワークによって社員同士の緩やかなつながりが少なくなりました。経営者の方々は、このことに頭を悩ませているようです。そこでアートの登場です。アーティストとともに経営者の想い、社員の想い、会社のカルチャーをワークショップを通して聞きだし、ウォールアートを制作します。制作する際は社員の方に筆をとって参加いただくこともあります。「コロナ禍でオフィス自体は縮小傾向にあるからこそ、自社らしさを感じさせるオフィスにしたい」という、経営者の思いに寄り添ったサービス設計が受け入れられたのだと感じています。

ビジョンを反映したオフィスアートを日々制作している(制作:KATHMI/富士通株式会社)

ーーアートを通して社内のコミュニケーションが活性化する、というのはとても素敵です。

実際に、ウォールアートの制作の一部に参加いただくことで「今まで関わったことがなかった人と話ができた」や「会社の未来を表現するアート作品に、自分も筆を入れることができてうれしかった」というお声をいただきました。制作の際には全員が横並びになるため、物理的に役職や部署の壁を感じにくい状態になります。社長も新入社員も一緒に並んで描く体験が、新鮮だったようです。

ーー新事業のお笑い芸人支援事業、「出囃子ーDEBAYASHIー」もとてもユニークですね。

弊社が運営する球団「堺シュライクス」の実況中継を面白くするため、野球好きのお笑い芸人さんにお仕事を依頼したことが始まりです。お笑い芸人さんと知り合ったことから「出囃子ーDEBAYASHIー」につながる発想が生まれ、企画が進んでいきました。

若手お笑い芸人さんのなかには、本業一本で食べていける人が少ないんです。その課題をなんとか解決できないか、サステナブルな形で夢を応援できないか……。本業に集中できるスキームを我々で考えた結果、ブレイク前のお笑い芸人さんを月額500円から支援できるプラットフォームを作ることにしました。この実現には、クラウドファンディングも活用しています。

ーーとても面白い取り組みですね。

弊社の事業の目標は、野球選手をプロにして1億円の年棒を手に入れてもらうことや、お笑い芸人さんをどんどん売り込んでテレビに出てもらうことではありません。あくまで、成功の「入り口」を作ることが目標です。彼らがステップアップするための最初の一歩を応援する事業を作り続ける。好調のアート事業もそうです。コロナ禍のなか、アーティストが活躍できる場を作ってきました。

活き活きとした筆致が楽しめる生のアート(制作:Gravityfree)

個人の“熱量”で事業を作り、成長させる

NOMALで働くメンバーは20代から30代と若く、皆がエネルギーに溢れる。アットホームな雰囲気だからこそコミュニケーションは活発で、そこから新しい事業のアイデアも生まれる。

ーー御社の強みを教えてください。

小さなベンチャー企業でありながら、たくさんの事業を持っていることが強みだと考えています。コロナ禍では3つの事業のうちアート事業が弊社の成長を牽引しました。一つの事業だけですと、複雑化する時代についていけなかったかもしれません。

ーー事業のアイデアは、どういったプロセスで生まれてくるのでしょう。

弊社では、メンバーの「熱量」を大切にしています。例えばアート事業は、私がアーティストになりたくて、アーティストの友人が多かったところから始まっていますし、お笑い芸人支援事業に関しては、弊社代表が自らM-1グランプリにトライするほどのお笑い好きであったことから生まれました。

新しい事業は、そういった個人のパーソナルな「想い」に社会情勢がハマったときに生まれるのではないかと考えています。社会的に必要とされているものであれば、たとえニッチであっても、どんどん事業化していきたいですね。

 

 

社会全体に目を向ける会社に

ーーずばり、NOMALで活躍するのはどういう人か、教えてください。

好きなものがはっきりしており、それに対しての愛情がある人が活躍できるのではと思います。弊社では、新しいことに挑戦するときに「ダメで元々」と考える社風があります。ですので、ガンガン行動できる人、考えるより泥臭い行動ができる人が合うはずです。

「泥臭い」というのは、他の人を頼ってでも自分の目標を達成するぞという意気込みです。人が好きで、どんどん人に頼って行動ができる人がいいですね。社内の評価制度でも、結果だけではなくプロセスを重視しています。

また、他人を支援することが事業の根幹なので、自分の中に「他人軸」がある人が向いていると思います。逆に言うと自己成長を目的にする人には、向いていないかもしれません。何かのプロフェッショナルになるというよりは、総合的に世の中に価値を作り出すイノベーターを目指していただきたいですね。

ーー今後の展望について教えてください。

アート事業をさらに伸ばしていきたいと考えており、そのための人材採用も積極的に行っています。最近では、年間100万円以上アートを買うという若手人材を採用し、新たに「MONOLiTH」というアート通販サイトを立ち上げました。法人向けのウォールアート事業についても、さらに柔軟なサービスを設計していきます。いずれも、事業を伸ばすフェーズなので、マーケティングができるプロフェッショナルな人材も必要です。

組織としては、SDGsはもちろんのこと、社会全体に目を向けられる会社にしていきたいと考えています。これまでの支援事業を拡大させつつ、その先にまた別の支援ができるような事業構造を作りあげることが今の目標です。

この企業のことをもっと知る

取材のウラ側

「誰かの小さな挑戦を応援したい」という熱量から生まれる縁やつながりが、株式会社NOMALの見えない財産となっていると感じた。個人の想いがのびのびと語れる、同社のアットホームな雰囲気こそ多様な事業アイデアの源泉。アーティスト、野球選手、お笑い芸人......次はどのような人たちの支援をするのだろうか。「利他」を大切にする同社の成長から目が離せない。