インターネットで表現する「楽しさ」を支えてきた

業界内でも指折りの歴史を誇るGMOペパボ。インターネットを通じて誰もが表現者になれる時代となった今も、プラットフォーマーとしてユーザーをサポートし続けている。遊び心のあるサービスはどのようにして生まれているのだろうか。

インタビューを受けてくださった、HR統括部副部長の船橋さん。

ー事業内容について教えてください。

 

船橋さん インターネット上での表現活動を支えるインフラサービスを展開しています。創業時からの主力サービスは、レンタルサーバーの「ロリポップ!レンタルサーバー」です。ロリポップ!は、レンタルサーバーが高額で知識のある人向けに提供されてるサービスが中心だった時代に、安価で誰でも簡単にはじめやすいレンタルサーバーとして提供を開始しました。学生さんをはじめ若い方も気軽にホームページがつくれるようになり、「インターネット上で自己表現をする楽しさ」を広げる一翼を担えたのではないかと自負しています。

 

伊早坂さん ロリポップ!は2021年にサービス開始から20周年を迎え、100周年まであと80年になりました(笑)。特設サイトを設けて、社をあげてお祝いしていますので、ぜひ見てみてください。

 

こうしたレンタルサーバーやドメイン取得代行サービスといったホスティング事業のほか、ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」やオリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI」などのEC支援事業、ハンドメイドマーケット「minne」によるハンドメイド事業を展開しています。

100周年まであと80年となったことを記念して立ち上げた特設サイト。100周年へ向けカウントダウンしている。

ーどのサービスも人々の日常を楽しくする要素がありますね。それに、「100周年まであと80年」を祝う特設サイトをつくってしまうところにも、「楽しさ」を大切にする社風を感じます。

 

伊早坂さん 当社の企業理念は「もっとおもしろくできる」なのですが、それが一人ひとりに根付いているように思います。

 

例えば、社内イベントを行う際も、昨年のやり方を踏襲するのではなく、「もっとおもしろくするためにどうするか」を自然と考えて実現する人たちの集まりです。「もっとおもしろくしたいよね」が口癖のようになっています。

「表現する」ことに価値をおく

ー仕事をするうえで、大切にしていることはありますか?

 

船橋さん 私たちには、大切にしている「3つのこと」があります。それは「みんなと仲良くすること」「ファンを増やすこと」「アウトプットすること」です。

「みんなと仲良くすること」は文字通り、ユーザーのみなさんや一緒に働く仲間などペパボに関わるすべての人と仲良くすることです。当社では、一緒に働いている仲間のことを「パートナー」と呼んでいるのですが、パートナーはお互いにあだ名で呼び合っています。

 

入社初日のタスクに「あだ名をどうするか?」があるくらいで、そのためにランチをして皆で考えることもあります。もちろん自分から、こう呼んでくださいと言ってもらうのも大歓迎です。

 

例えば「ダイアナ」というあだ名のパートナーがいるのですが、彼女はあだ名を決めるランチで、DIANAという靴のブランドが好きだからという理由から命名されました(笑)。ちなみに私は船橋恵で「ばしえ(橋恵)」と呼ばれています。

 

伊早坂さん 入社初日に自己紹介文を書いてSlackに公開するのですが、それには何百というリアクションがつきます。

 

私が自己紹介文を投稿したときは、他部署の人も「その趣味、私と一緒です!今度、ランチに行きましょう」と声をかけてくれました。部署を越えたコミュニケーションが軽々とされることは驚きで、これが当社の大きな特徴といえるかもしれません。

 

入社の際は誰しも、「会社の人と仲良くできるだろうか」という心配があると思いますが、当社ではその心配はいらないかと思います。新しい人にウェルカムな雰囲気があり、‟放っておかれない”会社です。

 

ー二つ目の「ファンを増やすこと」というのは社外にファンをつくるということですか。

 

伊早坂さん 社内外いずれもです。ユーザーさんはもちろん、パートナー、その家族、株主など、当社に関わってくださるすべての方にペパボを好きになってもらいたい。そのためにペパボの一員である自分のファンを増やそうという考えです。

 

その第一歩が、「自分のことを知ってもらう」こと。当社ではSNSで発信しているパートナーがたくさんいます。また、誰に求められたわけでもなく、プロフィール欄に「GMOペパボでデザイナーしてます」というようにペパボで働いていることを表明している人も多いです。

 

私の所属するチームには、10年以上、毎日ラーメンのことをブログに書き続けている人がいて、全社的に「ラーメン好きな◯◯さん」として名が知られています(笑)。

 

船橋さん 当社のパートナーとSNS上で交流をもったことがきっかけで、入社につながった人もいます。入社前には、「あなたが一緒に働くパートナーはこういう人たちですよ」というのがわかるように、部署のメンバーのSNSアカウントの一覧をお知らせすることもあります。

 

ー三つ目の「アウトプットすること」にも通じるお話ですね。

 

船橋さん 当社が提供するサービスは、クリエイター支援が軸にあります。ですから、何かをつくることやアイデアをかたちにすること、またそれを発信することが好きな人が活躍できると思います。

 

採用時、エンジニアやデザイナーとしてご応募いただいた方には「つくったものを何らかのかたちでアウトプットされているか」、管理部門での応募の場合は「SNSで発信をしているか」をお伺いしています。自身が発信に積極的ではなくても、ネットでのアウトプットやコミュニケーションにおいて抵抗感のない人がペパボで働くことを楽しめる方、マッチしている方なのかなと思います。

 

私は管理部門ですので、特にクリエイティブなスキルは持ち合わせてはいませんが、発信すること自体はとても好きです。

 

伊早坂さん 入社後のアウトプットの場の一つとして、「P-1グランプリ」というプレゼン大会を年1回、開催しています。毎年違うテーマが設定され、書類審査を経て8人程度が最終審査に進み、5分間のプレゼンを行います。

 

経営メンバーが選ぶ「グランプリ」と、パートナーの投票による「オーディエンス賞」があり、実際にP-1グランプリから生まれたサービスもあります。

「その人らしさ」と「会社」を掛け合わせたアイデアをアウトプットする「P-1グランプリ」。

船橋さん 他には、「お産合宿」という開発合宿があります。一般的な開発合宿と異なるのは、職種や所属する部署にとらわれずチームをつくるところです。普段は別々の仕事をしているパートナーが、1泊2日寝食を共にして新しいものをつくり出します。

 

例えば、SUZURIの「404エラーページ」に表示するためのゲームをつくったチームがあり、実装されました。SUZURIの公式忍者・スリスリくんをジャンプさせて障害物をよける単純ながらハマるゲームです。ランダムに出現しますので、運が良ければ出会える仕掛けです。

お産合宿で生まれたSUZURIの「404エラーページ」。この遊び心がユーザーの楽しさにつながっている。

楽しむためには安心して働ける仕組みが必要

ユーザーの楽しさを支えるために、まずは自分たちが楽しむことを大切にしているGMOペパボでは、その基盤となる働きやすい制度づくりにも力を入れている。

 

ーリモートワークが増えるなか、評価はどのようにされていますか。

 

船橋さん 当社では、新型コロナウイルスがまだ日本では大きな脅威と感じられていなかった2020年1月に全社的にリモートワークを導入しました。評価制度も同じく2020年1月に改定しています。

ただ、これはコロナ禍の影響ではなく、数年前から「新しい働き方に備える」を人事の中長期テーマとして、各種制度の改定を進めてきたためです。コロナ禍で新しい働き方が促進されましたが、準備を進めていたことでスムーズに移行できました。

 

具体的には、以前は個人が目標に対する達成のためのプロセスや成果を上長の判断で評価を行ってましたが、刷新した評価制度では、まずはパートナー自身が各等級に応じて設定された要件定義に基づいて自己評価して言語化し、その自己評価資料をベースに上長が評価する内容となっています。評価資料はオープンにされますので、透明性の高い評価が実現できているのではないかと思います。

 

ー他ではあまり見られない、GMOペパボ独自の制度はありますか。

 

伊早坂さん リモートワークを導入し、コロナ禍により外出が大幅に減ったことから、運動不足になることを見据えて「ペパボからだケア」制度を導入しました。

 

週2回・1日最大30分まで就業時間中に運動をしてもよいというもので、利用する際は、Slackの「#運動タイム」チャンネルに、「ランニングしてきます!」「ヨガやります!」というように宣言してから運動を行います。

 

その他、珍しいところでは、パートナー本人や家族がインフルエンザやノロウイルスなどの感染症にかかってしまったときに、年5日まで特別有給休暇が付与される制度もあります。

 

船橋さん 私自身がお世話になった制度に、「妊婦のための特別休暇」があります。妊娠したパートナーに月5日までの特別有給休暇が付与されるものです。

 

育休や時短勤務制度なども、法律で定められた基準を上回る制度を整えていますが、妊娠期間中はつわりなどで人により状態が大きく異なりますので、これは本当に有難かったです。

福岡と鹿児島。IT化を目指す街と人のハブになる

ー九州にも2つ拠点がありますね。

 

伊早坂さん 創業の地である福岡オフィスには約100人が働いています。福岡はIT企業の誘致やスタートアップ企業の支援を積極的に行っており、ITの力で街を良くしていこうという考えを持つ都市に拠点があるということに、大きな意味があると思っています。

同社福岡オフィス。さまざまな場所で日々アイディアが生まれている。

船橋 社長の佐藤健太郎の出身地でもある鹿児島には、2019年にオフィスを開設しました。鹿児島にIT企業の拠点ができることで、地域活性化に貢献し、共に発展していくことを目指しています。

 

IT企業で働きたいけれど活躍の場がなかった人、県外から鹿児島に戻りたいけれどIT企業があまりないために戻れなかった人などの雇用創出にもお役に立てればと考えています。

 

伊早坂 先ほど「部署を越えたコミュニケーションが軽々とされる」と言いましたが、それは福岡や鹿児島のパートナーも同様です。東京から出張で行くと伝えると、「東京からえみさんが来ます!夜、飲みに行きたい人集まれ~」と声をかけてくれて、初めましての人も一晩中付き合ってくれます(笑)。

業界最高水準の環境を整える

創業から一貫して、インターネットの可能性を追求し、表現活動を支えてきたGMOペパボ。今後、描くのはどのような未来だろうか。

 

ー今後へ向けた展望をお聞かせください。

 

伊早坂 インターネットを利用して誰もが表現者になれる時代になり、「クリエイターエコノミー」という言葉も頻繁に耳にするようになっています。当社もサービスを成長させていくことで、クリエイターの経済圏そのものを拡大するお手伝いができればと思っています。

 

船橋 また、新卒採用においても、新卒の平均年収を日本国内で最高水準の710万円とする「710プログラム」を2023年度よりGMOインターネットグループ全体で開始します。

当社の属するGMOインターネットグループは、上場企業10社を中心とした全105社、グループパートナー約6500人の総合インターネットグループです。一方で当社自体は従業員332人と規模としてはまだ小さく、一人ひとりの影響力が大きい会社といえます。

 

「自分次第で会社をよくすることができる」という可能性を感じながら、仕事ができるというのは私自身がやりがいを感じているところですね。そのような思いを一緒に持ってもらえる人にはきっと楽しめる会社です!

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取材のウラ側

コロナ禍を経て、現在はリモートワークと出社のハイブリッドで生産性高い働き方を推進するGMOペパボ。新しいもの好きが多く、インターネットの新しいサービスが出ると、すぐに社内のチームミーティングなどで使ってみるのだという。環境が変化しても、「面白くする」「楽しむ」という軸を共有していることは強い。約7割をエンジニア、デザイナー、ディレクターといったクリエイティブ職が占めるが、そうしたサービスの作り手が存分に力が発揮できるよう、安心して働き続けられる制度が整備されていることも印象的だった。