インタビューを受けてくださった、代表取締役社長の井手さん。

商品開発から流通まで。日本のものづくりに貢献する

ニューワールドは、メイド・イン・ジャパンのテーブルウエアや雑貨、道具類を中心に扱うECサイト「クラフトストア」の運営をはじめ、商品の企画や流通などを通して日本のものづくりを支援している。

 

ーー事業内容について教えてください。

 

私たちは、日本の工芸品などをつくる職人の方たちやものづくり企業様を対象に、国内外のオンライン流通を支援する会社です。事業としては、大きく三つあります。

 

一つ目は、商品の企画開発です。お客様のニーズがつかめない、どんな商品をつくればいいかわからないといったお悩みに対し、商品の企画を提案しています。

 

二つ目が、国内外の0次流通の事業です。0次流通とは小売である1次流通の前の段階で、代表的なものにクラウドファンディングがあります。当社は、株式会社マクアケ様と資本業務提携しており、「Makuake」というプラットフォームを通して、ものづくり企業様のテストマーケティングをサポートしています。海外では、「Indiegogo」や「Kickstarter」といったクラウドファンディングを利用して、同様の支援を行っています。

 

そして三つ目が、国内の1次流通の事業です。ライフスタイル雑貨を中心とした「クラフトストア」というECサイトを運営しています。2017年2月にスタートして、現在は100ブランド以上、約1300件の商品を取り扱っています。クラフトストアの商品はすべてメイド・イン・ジャパンで、全国各地のものづくり企業様が手掛けたものです。

 

ーー事業を進めるうえで、大切にされていることはありますか?

 

企業理念として「1人でも多くの笑顔に関わる」を掲げており、それを軸に事業を展開しています。創業前に中国に留学していたのですが、そこで出会った少年が「謝謝(ありがとう)」と言ってくれたときの満面の笑みが今でも忘れられません。例え言葉が通じない環境でも、人が笑顔になるようなことをしたい、個人でできることは限られていても会社なら大きなことができるのではないか、そう考えてニューワールドを創業しました。

 

ーー創業時の思いが、企業理念に反映されているのですね。

 

企業理念のもと、メンバーがどんな価値観で仕事をするのか、その行動指針となるのがコアバリューである「聴く、やる、感謝する」です。メンバーが話し合って決めました。

 

まずは「聴く」について。一緒に働くメンバーはもちろん、職人の方々やものづくり企業様、そしてクラフトストアのお客様など、ステークホルダーの声にも耳を傾けることを意味しています。「やる」は、そのまま「DO」です。まずはやるという、積極的でポジティブな姿勢を指しています。そして、「感謝する」。気持ちよく働くために必要なのが、「ありがとう」や「ごめんなさい」を素直に言うことです。当たり前のようですが、大人になるにつれて省いてしまいがちなんですよね。

 

ーーシンプルですが、能動的で力強い言葉です。

 

そして、事業の世界観や未来を指すのがビジョンです。私たちは、事業を通して「日本ブランドを世界No.1にする」ことを目指しています。ものづくりに対する思いや技術、歴史といった背景からブランディングに携わり、グローバルな流通に挑みたいと考えています。

やるか、やらないか。有言実行とチャレンジ精神を尊重する社風

ーーどのような方が活躍されていますか?

 

ものづくりが好きな人、チャレンジ精神を持つ人が活躍していますね。私たちはこれまでに、全国各地にある約900社のものづくり企業様を訪問しています。実際に工場を訪れ、積極的にものづくりに触れたり体験したりといったことを楽しめる、「ものづくり愛」にあふれた人が多いですね。

掲載する商品を実際に使ってみて、使い勝手を確かめることも多いそうだ。

当社は、創業して10年に満たない小さな会社です。「できるか、できないか」というより、「やるか、やらないか」という判断軸で動いています。平均年齢は約30歳。若くて馬力があり、チャレンジ精神のある人が活躍できる職場だと思います。

 

ーーどのような基準で評価されていますか?

 

現在は、事業部長が年2回面談をして評価を行っています。コアバリューを実践できているか。当社のアイデンティティである「裏切らない、嘘をつかない、思いやる」ができているか。「日本ブランドを世界No.1にする」というビジョンにどの程度コミットし、貢献できたか。これらをどれだけ意識しながら仕事をできたかが、評価の中心となっています。

 

ーーコアバリューやビジョンが評価に大きく関係するのですね。

 

コアバリューやビジョンがどれだけメンバーに浸透するかを重視しています。浸透させていくためには、いかに自分事化できるかが鍵になります。普段からコアバリューやビジョンを念頭に考え、行動していれば、そこから大きく外れることはありません。

 

ーーチャレンジ精神を生かすために、工夫されていることはありますか?

 

コアバリューで「やる」と言うくらい、当社には有言実行を大切にする文化があります。言葉に出して実行し、成果にすること。つまり、ラッキーホームランではなく、予告ホームランを目指しています。

 

今年の前期は、「宣言報酬」を実施しました。目標と期限を宣言して、実際に達成できたメンバーは、一律で報酬を得られるというものです。現在は、社員全員が営業マンになり、バイヤーになるという新たな取り組みに挑戦しています。例えば、クラフトストアで扱う商品を、別の部門のメンバーが出張先でピックアップして、それが掲載されたらインセンティブを受け取れるんです。

 

様々な取り組みを行っていますが、メンバーの顔触れや事業の状況、課題の変化に合わせて、1年~半年ごとに内容を変えています。このサイクルが早くなればなるほど、組織としての成長も早まると考えています。

福岡から東京、そして新潟の燕三条へ

2013年に福岡県福岡市で誕生したニューワールドは、2015年に東京都新宿区へ本社を移転。3年後の2018年、再び福岡にオフィスを設立して2拠点となり、2021年に新潟県の燕三条で新たな拠点を開設する。そこには、どのような狙いがあるのだろうか。

 

ーー創業の地は福岡とお聞きしました。

 

私の出身地でもあるのですが、福岡はヒトとモノとお金、この三つの観点で有利な場所です。まずはヒトについて。いい意味でコミュニティが狭いので、スタートアップ企業を運営する方とつながりやすいというメリットがあります。福岡のネットワークに入り込んだことで、最初の仲間集めはとてもスムーズに進みました。

 

次に、モノについて。具体的には手掛ける事業やサービスですが、最初はいかにコストを低くできるかが基本です。東京ではなく福岡という地方で起業したことで、オフィスの賃料や生活コストを抑えられ、そのぶん立ち上げ期の事業に専念できました。

 

そして、お金ですが、福岡市はもともとスタートアップ企業の創業支援に力を入れている自治体です。また、金融機関で融資を受けるときにも、選択肢が少ないですし、迷うことがありません。情報も入手しやすく、こことここに行けば間違いないだろうという見当をつけてから動くので、コミュニケーションコストも抑えられました。

 

ーー現在は東京に本社を置かれています。

 

ビジネスをさらに成長させるなら、東京は避けて通れないと感じていました。そこで、2015年に東京に本社を移転しています。3年ほど東京でがんばるなかで、やはり故郷である福岡に貢献したいという思いが出てきまして。そもそも、東京は競争が激しく、コスト面でも採用面でもかなりのエネルギーが必要です。

キッチンも備わっている、東京本社の様子。

そこで、戦い方を変えようと再び福岡にオフィスを開設し、ECサイトを扱う部門を移しました。それにより、在庫の保管にかかる費用などのコストを削減できています。また、アジアの国々に近いという地の利を生かし、福岡を中心に海外展開にも取り組んでいます。

 

そして、今年の9月に、新潟の燕三条に新たな拠点を開設しました。燕三条は昔から金属やステンレス加工の産地として知られていて、当社のお客様であるものづくり企業様の約3割が新潟にあるんです。拠点をつくることで、さらに近い位置で寄り添い、新潟のものづくりを盛り上げたいと思っています。

ものづくりの職人に光を当て、グローバルな流通を目指す

どんなに優れた商品を生み出しても、ニーズにうまくフィットしなければマーケットは広がらない。ニューワールドは、商品の企画力や販売力の向上を支援すると同時に、世界を視野にさらなる流通の拡大を目指している。

 

ーーそもそも、なぜ日本のものづくりに注目されたのでしょうか?

 

きっかけは、起業した頃にさかのぼります。ものづくり企業様でいろいろとお話を聞く機会があったのですが、そのときに、「ものづくりの職人の仕事は、労働環境が厳しく、危険を伴うようなイメージを持たれることが多い」と、ある職人さんが話されていました。

 

私は、ゼロからイチを生み出す職人さんには、素晴らしい価値があると思っています。にもかかわらず、そのようなイメージが強いことを知り、伝統的な日本のものづくりを支える職人さんの優れた技術や知見を、もっとたくさんの方に知ってほしいと考えました。その思いが事業を始めた理由の一つであり、今でも大きなモチベーションになっています。

商品の質感を確かめながら、掲載する写真を撮影。東京本社は太陽光がきれいに入るため、撮影も捗るそうだ。

流通を広げながら、新たな商品を生み出していく。そのなかで、ものづくりに関わる方たちに光を当て、観光にもつながって地域全体が潤っていくというサイクルをイメージしています。

 

ーーそのサイクルはすでに実現できているのでしょうか?

 

まだ道半ば、というより始まったばかりですね。当社のお客様には2代目、3代目の方が多く、グローバルな流通にも挑戦したいというお考えをお持ちです。その産地で一つ成功事例ができれば、それをきっかけに産地全体に広がっていきます。まずは全国各地で、そうした事例づくりを手掛けていきたいと思っています。

 

ーー地方創生にもつながる取り組みですね。最後に、今後の展望について教えてください。

 

日本ブランドを世界No.1にするためには、よりグローバルな流通を目指す必要があります。商品の企画力や販売力、ブランディング力の向上とあわせて、どの国をターゲットにするか、どんなリデザインを施すかも重要だと思っています。

 

日本でつくったものをそのまま海外に持っていっても、売れるとは限りません。日本のものづくりの技術を、その国の文化や生活様式に合わせてローカライズしなければ、マーケットを広げるのは難しいんです。私たちがそこをしっかりプロデュースすることで、グローバルな流通に貢献できると思っています。今後はそうした海外展開にも、さらに力を入れていきたいですね。

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取材のウラ側

穏やかで物腰柔らかな話しぶりのなかにも、日本のものづくりに対する強い思いが感じられた取材だった。社内のコミュニケーションは活発で、リアルで生まれるアイデアや価値を重視しており、コロナ禍でも早い段階でリモートから出社する体制に切り替えたという。メンバーのやる気やチャレンジ精神を重んじるからこその判断であろう。今後はグローバル展開にも力を入れていくとのこと。ニューワールドのさらなる飛躍と日本のものづくりの発展に期待したい。