今回お話を伺った岩田さん(写真左)、柴野さん(写真中央)、吉田さん(写真右)

中古車販売を通じて循環型社会の実現に貢献

1998年に大阪で創業して以来、着実に成長を続けてきた株式会社はなまる。廃車を余儀なくされる車を買い取って再利用する人の元へ届ける同社の事業は、サステナビリティの観点においても重要な取り組みだ。

——事業内容やビジョンについて教えてください。

岩田さん(以下、敬称略):事故車や損害車両の買取と販売を通じて、循環型の社会を実現することが私たちのミッションです。不要になった自動車を買い取り、自社が運営する「はなまるオークション」を通じて販売することで産業廃棄物を減少させ、環境保全に貢献したいと考えています。さらに、事故車や損害車を処分する際、お客様にかかる精神的・経済的負担の軽減も目指しています。

このミッションを成し遂げるため、当社では「常に成長し続ける」「一歩踏み出すチャレンジ精神を持ち続ける」「日々変化する時代の流れに柔軟に対応する」ことを大切にしてきました。

また、社会貢献活動として、災害時には自治体と連携し、自走できなくなった自動車を引き上げたり、車輌管理センターを無料開放するなど、被災地の復興支援にも取り組んでいます。

——社会環境が大きく変化する中、事業の状況はいかがですか。

吉田さん(以下、敬称略):創業以来、着実に事業が成長し、日本国内のみならず世界各国に拠点を拡大しています。2020年には、新型コロナウイルスの流行で、海外への輸出がすべてストップしてしまいました。一時はどうなることかと思ったのですが、ロックダウンなどの影響で世界的に新車の製造が遅れたため、日本国内で中古車の需要が高まり、価格が高騰する状況が起こりました。当社としても想定していなかったことですが、国内向けの中古車販売が順調に推移しているため、右肩上がりの業績が続いています。

オフィスのリニューアルによりコミュニケーションが活性化

——2022年6月には、大阪本社オフィスをリニューアルされました。

岩田:20年、30年後の会社の成長を見据え、社員のために働きやすい環境を作りたい。そして、これから一緒に働いてくれる方々のために、かっこいいオフィスを整えたいと考えたのです。フリーアドレス制の導入や、ミーティングスペースの拡充など、当社としては初めての試みも盛り込みました。

窓面にはちょっとしたミーティングもできるテーブルと椅子、個人作業に適したカウンター席もある

従来のオフィスにも会議室はありましたが、ちょっと話したいときに使えるようなミーティングスペースがなかったのです。リニューアルによって気軽に相談ができるスペースが生まれ、コミュニケーションの頻度が増えています。何か問題が起こった際にも、解決するスピードが早まっていると感じます。

フリーアドレス制についても、初めは「どこに座ればいいんだろう」という戸惑いがあったようなのですが、半年ほど経った今はメンバーも慣れてきた印象です。業務上必要なコミュニケーションがとれる範囲で、それぞれ自由にフリーアドレス席を楽しんでいます。

壁面を煉瓦アーチ型にデザインすることで高架を表現している

個人的には、カフェスペースが気に入っています。椅子も置いてあるのですが、立って仕事をすると作業効率が上がるんです。お茶を飲みながら作業をしているメンバーもいるようです。

カフェスペースに自然と人が集まれるようにコーヒーマシンなどが導入されている

柴野さん(以下、敬称略):私も業務がスピードアップしたと感じています。ミーティングスペースは、「会議室を予約するほどではないけれど、ちょっと相談したい」というときにとても便利です。お客様からの急なご依頼など、対応方法がわからないことがあるときにはミーティングスペースにパソコンを持ち寄り、画面を見ながら説明できるので、メンバーとのコミュニケーションがとりやすくなりました。

 

 

以前のオフィスで、管理課は営業などの部署があるメインルームとは別のフロアで仕事をしていました。孤立していたというわけではないのですが、メインルームに行くときには「目立ってしまうかな」と少し緊張するところもあって。新しいオフィスでは、ワンフロアで一緒に働いているので、他部署との交流も増え、会社としての一体感がより強くなったと思います。

オフィスは車が生む自由、快適さ、自発性、世界の広がりを感じられる空間をイメージしている

吉田:マネジメント側としても、フリーアドレス制になって、メンバーに話しかけやすくなったと感じます。例えばなんとなく元気がない、悩んでいる様子の社員に声をかけたいとします。以前のオフィスのように席が固定されていると、私が近づいて話しかけることで、本人や周りが驚いてしまうこともありました。今のオフィスでは、横に座って「最近どう?」と自然に声をかけられるので、リニューアルしてよかったと思っています。

オフィス内には気軽にコミュニケーションを交わせる雰囲気がある

オフィスのリニューアルでお客様への「挨拶」が変わった

——オフィスを訪れるお客様からの評判はいかがですか。

吉田:来客エリアと執務エリアの仕切りがガラス張りになり、エントランスからフロアの奥まで見渡せるようになりました。私たちが働いている姿がお客様から見える、私たちからもお客様の姿を見ることができる点がいいなと感じています。お客様から「素敵なオフィスだね」と言っていただく機会も多いですし、何よりも「挨拶」が変わりました。

エントランスからは外の景色がよく見え、ガラスの仕切りによりフロアを見渡せるようになっている

当社には「挨拶」を大切にする文化があり、お客様がお帰りになるときには、社員みんなで挨拶をしています。以前のオフィスは、エントランスや応接室から執務スペースを見ることができない構造だったので、お客様からすると「見えないところから社員の挨拶が聞こえてくる」という状況だったのです。

リニューアルにより、社員がお客様の姿を見て挨拶することができるようになりました。お互いの顔を見て挨拶ができると、やはり相手が受ける印象も変わります。実際に、お客様からは「素晴らしい社風ですね」とお褒めの言葉をいただきました。

岩田:以前から、お客様に「元気な会社だね」と言っていただく機会はありましたが、オフィスのリニューアルによって挨拶をより大切にできるようになったことは、当社にとって良い変化だと感じています。

社員の挑戦と頑張りに応えるインセンティブ制度

——明るく風通しのいい雰囲気が伝わってきます。

柴野:先日、本社の近隣で花火大会があったのですが、休日のオフィスを開放して、社員やご家族と一緒に皆で花火を鑑賞しました。家庭的な雰囲気のある会社だと思います。仕事中も、もちろん真剣に仕事をしているのですが、無言で黙々と作業し続けるというよりは、仕事の合間に隣の人と談笑したり、メリハリをつけて働いている印象です。

吉田:社内には同好会もあり、フットサルやバスケット、ゴルフなど、役職や年齢に関係なく、伸び伸びと楽しんでいます。課外活動がコミュニケーションのきっかけにもなっていると思います。

——働きやすい環境を実現するために、工夫されていることはありますか。

岩田:業務内容にもよりますが、上司と相談の上、時差通勤やテレワークを利用することができます。小さいお子さんがいる社員の中には、保育園の送迎のため出勤時間を調整するなど、柔軟な働き方をしているメンバーもいますね。

社員の業務量を平準化する目的で、アルバイトとして働くメンバーの雇用にも積極的に取り組みはじめました。事故車や損害車両の買取や販売は、書類の精査、データ入力など膨大な作業を伴います。これらの業務やお客様への電話対応をアルバイトの方にお任せすることで、社員が自身のコア業務に集中できる体制を作りたいと考えています。

また、性別や国籍、障がいなどにかかわらず、多様な人材を雇用する職場づくりや、地域と連携したSDGs活動にも取り組んでいます。

——社員には若い方が多いのですか。

岩田:平均年齢は33歳です。毎年新卒採用も行っており、若い社員が多いですね。実力のある人にどんどん仕事を任せていく、挑戦を大切にする風土が役職にも反映されていて、20代社員の4人に1人が何らかの役職に就いています。メンバーの立場から見ても、マネージャーの年齢が近いので話しやすいのではないでしょうか。

 

 

吉田:社員の頑張りに応えるため、特に営業職の社員にはインセンティブ制度を整えています。AからEまで5つのランクがあり、Eからスタートして一定の実績を上げると、ひとつ上のランクに昇格できる仕組みです。目標を達成すれば、役職に関係なくランクを上げることができます。

 

岩田:インセンティブのランクが上がると、連動して基本給もアップします。家庭を持つ社員も多い中、安心して長く働いてほしいという思いからです。私は以前、人材業界で働いており、いろいろな会社の給与制度を見てきたのですが、当社の制度は社員が安定して働き続けられるよう配慮されていると感じます。

 

さらに営業職だけでなく、内勤職の社員にも、全社の数値目標が達成されたときにはインセンティブが発生します。お客様や社内のメンバーに貢献することで、会社の収益アップにつながる仕事をしてほしいという思いを込めています。

売り手と買い手の「架け橋」として、社会課題を解決する

——実績を上げた人に報いる制度が整っているのですね。具体的には、どんな方が活躍しているのでしょうか。

吉田:特に営業部門では、収益にこだわって行動し続けられる、粘り強い方が活躍していると思います。私たちの事業では、自動車の売り手であるお客様に満足してもらうことと、会社の利益を出すことの両立が求められます。

事故車や損害車両の仕入れ先は、損害保険会社やリース会社、信販会社、地域のディーラーや板金工場、中古車販売店、レッカー業者や解体業者など、多岐にわたります。お客様の中には、人生経験を積んできた年上の経営者や、若手でも責任ある部署を任されている敏腕ビジネスマンなど、さまざまな方がいるでしょう。多様なお客様のもとへ足を運び、誠実に信頼関係を築いていかなければなりません。

お客様との出会いを自分自身の成長につなげたいという向上心を持つ方ならば、活躍できる環境だと思います。

——最後に、今後の事業展望についてお聞かせください。

吉田:日本では、年間およそ300万台の自動車が廃棄されていると言われます。そのうち私たちが取り扱っているのは、年間およそ7〜8万台。廃棄されている車のごく一部です。利用価値がある車を産業廃棄物として処分するのではなく、売り手と買い手との架け橋になれるよう、さらに事業を拡大していきたいです。

これまでは主に企業から自動車の買い取りをしていましたが、今後はBtoCのビジネスも視野にリユース事業部を立ち上げ、一般ユーザーが使っていた車両を積極的に買い取っていきたいと考えています。事故車や損害車両のみならず、中古車にも取り扱い範囲を広げ、いずれはすべての事業者を扱える総合商社を目指したいですね。

海外事業のモデルケースとして、2019年にはマレーシアに現地法人を立ち上げました。マレーシアの保険会社を通じて損害車両を買い取り、自社オークションを通じて世界へ輸出する事業を手がけています。この取り組みを各国へ広げ、自動車を必要とする世界中の人々に提供する未来を描いています。

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取材のウラ側

大阪から日本全国、そして世界へ、事業のスケールを拡大し続けている株式会社はなまる。本社オフィスのリニューアルは、同社の事業の根幹である「車」に着想を得て、「ANYSTYLE, ANYPLACE(自由に、どこにでも行ける)」というコンセプトで行われたそうだ。大きな窓から大阪市内を一望できる開放的な新オフィスは、世界を舞台に新たな航路を切り拓こうとする同社の、コックピットのようにも感じられる。スケールの大きな仕事を通じて社会課題を解決したい、SDGsに貢献したいと考えている方にとって、働きがいのある職場と言えそうだ。