今回インタビューでお話を伺った岩堀さん

コンタクトセンターからBPO領域まで、人々の健康と暮らしを支える

——ベルシステム24の沿革や、事業内容を教えてください。

当社は1982年に創業し、国内初の本格的なコールセンターサービスを開始しました。以来、クライアント企業様とそのお客様の接点となるコンタクトセンターサービスに主軸を置きつつ、IT技術の進化や社会や生活者のニーズの変化に合わせて事業領域を拡大。現在はコンサルティングや営業支援、財務・経理などのバックオフィス業務のBPO(Business Process Outsourcing)領域まで、クライアント企業様のCRM(Customer Relationship Management)全般を幅広くサポートしています。

 

 

クライアント企業様のニーズをヒアリングし、業務を「型化」した上でマニュアルに落とし込み、効率よく再現するBPOサービスが、当社の強みです。グループ全体で約4万人のプロフェッショナルなメンバーが、日々さまざまなニーズと向かい合っています。電話で直接受付をするほかに、ボイスボットやチャットボットなど、テクノロジーを活用したソリューションも強化しており、クライアント企業様の業務効率化を実現。その先にいる生活者のCX(顧客体験)の価値向上につなげています。

近年では、主要株主である伊藤忠商事株式会社や凸版印刷株式会社との連携によりシナジー効果が生まれ、国内外問わず新たなネットワークが一気に広がっています。

——コンタクトセンターの業務は、新型コロナウイルス流行の影響を受けましたか。

社会のインフラの一部を担い、電気・ガス・水道・交通会社などの問い合わせから、新型コロナウイルス関連の対応など緊急性が高い業務も多く、コロナ禍で、私たちの業務が、“止められない仕事”だと再認識するきっかけとなりました。

——人々の暮らしを支える業務にも携わっているのですね。社会情勢が大きく変化する中、2023年には新たにコーポレートボイスとバリューを制定しています。

コロナ禍の経験から、私たちはコミュニケーションを通じ、お客様の健康や生活をダイレクトにサポートしているのだと再確認しました。創業から40年以上かけて培った知見や資源を生かし、イノベーションを起こしながら今以上の豊かさを実現していきたい。そんな思いを込めている当社のパーパス「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」の実現に向けて、当社の普遍的な価値を改めて定義し、すべてのステークホルダーに向けた未来への宣言として、新たな企業ブランドスローガンとなるコーポレートボイス『その声に、どうこたえるか。』と当社の提供価値を示すバリューを新たに制定しました。

一人ひとりを大切にするコミュニケーションが浸透。風通しのいい社風

——社内はどんな雰囲気なのでしょうか。

当社は非常に多くの「人」が職場で活躍している企業です。黙々と作業をするタイプの方もいますが、基本的には人とコミュニケーションを取ることが好きで、この業界に入ってきた方が多いですね。

コンタクトセンターの現場で働くメンバーはもちろんですが、バックオフィスを担う社員にも「話をするときはしっかり腰を落として相手と目線を合わせる」「相手の言葉をしっかり受け止める」など、一人ひとりを大切にするコミュニケーションが文化として浸透していることを感じます。

 

 

社風としては、経営層を含め、気軽にコミュニケーションを取ることのできる、風通しの良さがあると思います。コミュニケーションの機会を増やす目的で、直属のマネージャーとの面談以外に、年に2回は階層を2つ以上超えた上司と面談する機会も設けています。

また、コロナ禍以前からテレワークを推進しており、SlackやMicrosoft Teamsのようなビジネスチャットツールも活用しています。Slackでは、雑談チャンネルに社長が書き込みをして、社員と会話が生まれることもあるんですよ。

——どのような人が活躍していますか。

当社では「どんな職種やポジションを希望するか」「3年後、5年後、10年後どんな自分になっていたいか」を自己申告した上で、メンターが個人の志向をヒアリングし、配属先を決める判断材料に活用する仕組みを整えています。

こういった取り組みの結果、自身の志向性に合った部署や、強みを伸ばすことにつながる職種に配属されているメンバーが生き生きと活躍している印象があります。

コールセンターのイメージを一新し、社員が出社したくなるオフィスにしたい

——2021年には、東京都港区にオフィスを移転されました。リニューアルの背景を教えてください。

以前の本社オフィスはシンプルなデスクが整然と並び、決められた場所で仕事をする「作業をするための場所」でした。正直、積極的にクライアント企業様をお招きしたいと思えるような空間ではなかったと思います。

そんなイメージを払拭し、テレワークができるようになっても、社員が出社して働きたくなるようなオフィスにしたいという思いから、リニューアルプロジェクトがスタートしました。

社員にも人気のカフェスペース
カフェスペースはくつろぎやすく、自由さも感じる

多様な視点を取り込むため、社内で部門を横断したプロジェクトを立ち上げ、方向性を固めていきました。クライアント企業様との接点が多いメンバーや、家具に関する知識が豊富なメンバーなど、さまざまな意見を出し合い、最終的に決まったのが「Serendipity Creates Innovation.」というコンセプトです。Serendipityとは、偶然素晴らしい出来事にめぐり合ったり、予想しなかった有益な発見をしたりする才能を意味する言葉です。コンセプトには「偶然の出会いからコミュニケーションが生まれ、イノベーションにつながってほしい」という思いを込めています。

オフィスで生まれる「偶然の出会い」が事業成長を加速

——新オフィスの構想をする中で、特に工夫したポイントはありますか。

フリーアドレス制を導入し、業務内容や気分によって働く場所を変えられるよう、さまざまなワークスペースを用意しています。オンライン会議のための「ワークポッド」や、個人の作業に集中したいときの半個室のようなスペース、コミュニケーションを取りながら作業できるオープンなテーブル、コーヒーが飲めるコーナーもあります。いわば「オフィスのダイバーシティ」ですね。オープンスペースでブレストをしていると、通りかかった人が参加して意見をくれたりと、思いがけない化学反応も生まれるようになりました。

オフィスの中心に設置した「プロムナード」と呼ばれる幅広い曲線の道は、コミュニケーションを促進する鍵になっています。以前のオフィスでは、基本的に固定席で仕事をしていましたが、リニューアル後は座る席は決まっておらず、日や時間によって異なる席に座る社員も多くいます。社員はもちろん、取締役や役員もプロムナードを通って行き来するので、ばったり顔を合わせて会話することが自然と増えました。部門を横断してノウハウやアイディアを共有し、新たな事業や人材育成につながる事例が次々と生まれています。

 

 

ここ3年間で、当社の売り上げは一気に伸びているのですが、コミュニケーションの活性化が要因の一つになっているのではないかと考えています。

——オフィスのあり方が、業績にも前向きな変化をもたらしているのですね。社員の働き方に変化はありましたか。

コロナ禍という時代背景もあり、ハイブリッドワークは確実に浸透しましたね。全社員に仕事用のPCと必要に応じて携帯電話を配布しているので、業務に必要なコミュニケーションはテレワークで完結します。対面で議論をしたり、メンバーとコミュニケーションを取りたいときには出社するというように、オフィスへ来ることの目的そのものが変化しているのではないでしょうか。

私自身は仕事とプライベートを切り替えるためオフィスに出社したいタイプですが、働き方のバリエーションが増えたことで、それぞれのライフスタイルや価値観に合わせた使い分けができるようになりつつあると感じています。

一人ひとりにベストマッチする働き方を。徹底したD&Iの取り組み

——新しいオフィスを訪れたクライアント企業様の反応はいかがですか。

すこぶる良い評価をいただいています。エントランスからオフィスに入るとまず熱帯魚等のアクアリウムがあり、カフェコーナーではコーヒーと共に、当社が製造を支援している「久遠チョコレート」を提供しています。さらに壁面全体が大画面となっているショールーム「Egg」では、当社のコンセプトムービーをご覧いただくこともできるのです。

アクアリウムやオフィスグリーンが多く配され、心身ともに安らぐ空間になっている
4K大画面を設けたショールーム「Egg」

東京タワーが見える明るいオフィスで、笑顔で働く社員の姿を見て「コールセンター企業のイメージが変わった」「また来たい」「今度はほかのメンバーも連れてきたい」とおっしゃってくださるクライアント企業様も多いです。

——カフェスペースでは、障がい者の方々が働いているそうですね。

障がいを持つ方々を含め、多様な人材が活躍するための機会を提供することが、当社の使命だと考えています。本社のカフェだけでなく、愛知県豊橋市のチョコレート工場や、千葉県船橋市の自社農園でも障がい者の方々が活躍しています。社内でとれたての野菜を販売するなど、コミュニケーションのきっかけにもなっているんですよ。

——ダイバーシティ&インクルージョンを大切にしているのですね。

4万人、一人ひとりにベストマッチする働き方を実現するため、ダイバーシティにはかなり力を入れています。育児や介護をしている社員が時間帯を選んで働けるフレックス制度や、地方在住のメンバーが完全リモートで働ける仕組みなど、数十種類の制度を用意しています。

有給休暇についても、例えば高齢の方が不定期で通院したり、育児中の方が子どもの病気に対応したりしやすいよう、一般的な年次有給休暇に加え、毎月1日、年間12日間の有給休暇が付与される仕組みです。

社会的なハンデを持つ方、あるいは副業や趣味を充実させたい方にも「ベルシステム24でなら働ける」と感じてもらえるような環境を、今度もアップデートしていきたいと考えています。

ベルシステム24ホールディングスは、「J-Winダイバーシティ・アワード」のアドバンス部門で大賞を受賞している

——最後に、貴社の人事部門が目指していることなど、未来に向けた展望をお聞かせください。

人生100年と言われる時代、かつてのような終身雇用の慣習は崩れつつあります。当社としても、従業員の方々が主体的にキャリアをデザインしていく「キャリア自律」に向け、知識やスキルを身につけられる機会を提供していきたいです。会社の中でリスキリングができるよう、資格取得の支援や、教育制度の拡充にも力を入れるつもりです。その結果、当社を気に入って長く働いていただければうれしいですし、市場にビジネスパーソンとして活躍できる人材を輩出することも、われわれの役割だと考えています。

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取材のウラ側

創立以来40年あまり、一貫して顧客のビジネスと、コンタクトセンターに寄せられる「声」に寄り添い続けてきた株式会社ベルシステム24。一人ひとりを大切にする姿勢は、社外のみならず社内で働くメンバーに対しても揺るぎない。明るく自由度の高い新オフィスは、そんな同社の哲学を体現しているようにも感じられる。ダイバーシティをお題目で終わらせることなく、自社に関わるすべての人に安心して働き続けられる環境を提供したいという、真摯な思いが伝わってくる取材だった。