エネルギー分野の「老舗」である同社グループだが、オフィスの雰囲気は開放的でとても明るい。

顧客を大切にする姿勢が、そのまま社風に

エネルギーの分野で、約40年にわたってビジネスを展開してきたTESSグループ。働きやすさの指標の一つとされる「社員の定着率」は91%に上るという。まずはその秘訣について尋ねてみた。

 

――高い定着率を実現されている要因は何でしょうか?

 

水田雛乃さん(以下、水田さん) TESSグループでは「人材」ではなく「人財」と表現しますが、人を大切にする社風も影響していると思います。

 

私たちの仕事は、まず、お客さまのエネルギーに関する課題や現状の困りごとに耳を傾け、それをどう解決していけばいいのかを考えるところから始まります。企業理念に「顧客重視・顧客満足」を掲げていますが、話をよく聞き、人との関係を大切にする姿勢が、そのまま社風にも反映されているように感じます。

 

――具体的にどのような場面でそれを感じられますか?

 

水田さん これまでの経験や年齢に関わらず、一人ひとりの声をしっかりと聞いてもらえるところですね。たとえ1年目の新人の意見であっても耳を傾け、それが良いものであれば、「いいね、おもしろそうだからやってみよう!」と、上司はもちろん経営層も後押しします。

 

――誰もがチャレンジしやすい環境があるのですね。

 

川島愛那さん(以下、川島さん) そうですね。新人だからこそ生み出せる新しい発想もあると思っています。私は採用を担当していますが、最近は環境問題への関心が高い方や、大学でSDGsについて学んでいた方のご応募が増えています。そういう熱い思いのある人が、十分に力を発揮できる環境が整っています。

自然と会話が生まれる自由度の高いオフィス

TESSグループは2020年10月に大阪オフィスを全面リニューアルした。歴史ある企業でありながら、テントやアウトドア用のローチェアが設置されていたりと随所に遊び心が見られる。そこにはどのような狙いがあるのだろうか。

現代的にまとめられたオフィス。スノーピーク製のキャンプブースは、新オフィスの中でも特にこだわった場所だという。

――オフィスのリニューアルでは、何を重視されましたか?

 

南龍郎さん(以下、南さん) コミュニケーションをより活発にし、イノベーションにつながるオフィスを目指しました。具体的にはフリーアドレスを採用して、集中したりグループワークしたり、働き方に応じて自由に自分のデスクを選べるようにしています。

 

実は社長室もなくて、オープンスペースで一緒に仕事をしています。当初は、会長室、社長室、それぞれ独立してつくる予定だったのですが、社長自ら「必要ない」と。部屋にこもるよりもみんなと一緒に仕事をしたいという意向があって、社長室になるはずだったスペースは倉庫になりました(笑)席を固定せず、いろんな人と隣り合うことで、役職や部署を超えたコミュニケーションが生まれています。

 

水田さん 円卓やローチェア、座りすぎを防ぐ昇降デスクなど、自分に合ったワークスペースを選択できるのも特徴です。集中したいときは、高いパーテーションで仕切られた「集中ブース席」、個人面談やオンライン会議は「1on1ブース」など、気分や用途に合わせてそれぞれが自由に使っていますね。

 

――オフィスにテントがあって驚いたのですが、なぜテントを設置されたのですか?

 

南さん テントを中心としたBASE CAMPをつくったのは、リニューアルを担当した私がキャンパーだからというのが大きいです(笑)リラックスできる空間と集中できる空間をつくって、メリハリのある働き方を実現したいと考えました。

 

BASE CAMPでは小鳥のさえずりの音が流れ、アロマオイルで森の香りも感じられるようになっています。こうしたアイデア一つをとっても、自由にチャレンジできる社風が表れていると感じます。

「BASE CAMP」で働く様子。

――結構大きなテントですよね。どのように使われているのですか?

 

水田さん テントの中には2つの机と8脚の椅子があって、モニターもあるので小会議室のようにも使えますが、私はランチのときによく利用しています。以前のオフィスでは社員が集まって話せる場所がなかったので、コミュニケーションがとりやすくなりました。

 

南さん BASE CAMPでは、新人研修も行っています。自由度が高いスペースで、グループワークもしやすいので、セミナーやプレゼンなどにもどんどん使ってほしいですね。新たな発想が生まれる場になればいいなと思っています。

 

――そのほか、働きやすい環境づくりのために導入されたものはありますか?

 

南さん オフィスコンビニも設置しました。個人的には、スマホ決済ができるコーヒーマシンが導入されて、便利になったなと感じます。1杯ごとに自分の好きなパックを選んで抽出するタイプですが、福利厚生として会社のバックアップがあるため、かなり安く購入できます。

 

小さなことのように思えるかもしれませんが、長い時間を過ごすオフィスで空腹を手軽に満たしたり、コーヒーを飲んでホッとしたりする時間ってとても大切ですよね。働く環境の整備を単なる「経費」ではなく、社員への「投資」と捉えて、前例のない提案も前向きに取り入れています。

テレワークが進むことで見えたメリットと課題

――コロナ禍で、働き方に変化はありましたか?

 

水田さん もともと時差出勤の制度などはありましたが、コロナ禍で時差出勤やテレワークを誰もが選択できる体制になりました。現場に足を運ぶ必要があるエンジニアは別ですが、現在はテレワークを選択している人も多いですね。

 

川島さん テレワークを推進するにあたり、「Microsoft Teams」の利用が浸透しました。チャット機能を使うと、実際に話しかけるよりも気軽にやりとりできるんです。私の場合は、支店に配属された新入社員とこまめに連絡が取り合えるようになり、以前にも増して入社後のフォローができるようになりました。

 

――テレワークが新たなツールの導入を後押しする面もありますよね。

 

南さん そうですね。ただ一方で、チャットやビデオ会議で十分な場合もあれば、それだけではコミュニケーションが不足していると感じる人もいます。要は、テレワーク・出社それぞれできることに応じた使い分けが重要で、会社としてはそうした課題を拾い上げ、積極的に働きかけていく必要があると思っています。

 

川島さん 人事チームとしても、テレワークを有効に活用して、より良い職場環境を目指した社内規程や評価制度の見直しに取り組んでいきたいと考えています。

エネルギーを育み、守り、つなぐ企業を目指す

かつてはコストダウンが主な目的であった省エネだが、近年は環境保全への取り組みとして重要性が高まっている。変化の激しいエネルギー業界で、どのような未来を描いているのだろうか。

 

――今後の事業について、どのような展開を考えておられますか?

 

南さん 世界的な「脱炭素化」の流れを受けて、日本の企業でも再生可能エネルギーを積極的に導入する動きが活発化しています。

 

TESSグループでは、自社再生可能エネルギー発電所を複数所有し、発電事業を営んでいます。2021年6月末時点では、日本全国に合計67件(発電容量合計約205MW)の太陽光やバイオマスなどの再エネ発電所を所有していて、今後も発電事業に注力していく予定です。従来は工場などのお客さまに対して省エネルギーのソリューションを提供することが主な事業でしたが、自社再エネ発電所の所有やバイオマス燃料の供給などに取り組むことにより、再生可能エネルギーの分野においてもエネルギーの川上から川下まで幅広く手掛けられるようになりました。

SDGsなど、環境保全や社会貢献への取り組みも盛んな同社グループ。

――環境保全から社会貢献にもつながる取り組みですね。

 

南さん そうですね。TESSグループはエネルギーという大きな問題に対して多角的に取り組んでいますが、今春東証一部上場を果たしたこともあり、今後は社会や地域への貢献活動にも力を入れていき、社会的責任を果たしていきたいと考えています。

 

その一つが、いま立ち上げている「ワクワクわーくプロジェクト」です。メンバーは、各部署の前線で活躍している20~30代の社員で構成されています。社会貢献活動や従業員の働き方改革をテーマにした取り組みで、まだ検討段階ですが、地域の小・中学校を対象に、例えば自社発電所に見学に来てもらい、エネルギーや環境問題についての意識を高めて貰うといった企画もあります。ほかにも、TESSグループに所属するパラアスリート選手たちとの交流やパラスポーツ競技団体への寄付など、従業員が主体となっていろんなアイデアを出し合っているところです。

 

水田さん エネルギー業界では、水素エネルギーやバイオマスの活用など、様々な新技術が生まれています。また、TESSグループには約40年にわたって培ってきた技術力と対応力があります。これからも、多様化するお客さまのニーズに寄り添ったサービスの提供はもちろん、次世代に向けてエネルギーを育み、守り、つなぐ企業を目指します。

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取材のウラ側

顧客の声に耳を傾け、寄り添う姿勢が、そのまま社内の風通しの良さにつながっている。それが、笑顔あふれる3人のやり取りから直に伝わってくる取材だった。従業員の自由な発想やチャレンジを応援する企業文化をつくる上で、人の話に耳を傾ける姿勢は欠かせない。そして、働き方がどれだけ多様化しても、企業が「人」で成り立っていることに変わりはない。コミュニケーションの質は働きやすさの重要な要素であり、それが同社の定着率の高さにつながっていると感じた。