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株式会社ファームノートホールディングス
「『生きる』を、つなぐ。」をミッションに、酪農・畜産向けクラウドサービスの開発、提供を中心とした事業をおこなうITベンチャー企業です。
Official Site「『生きる』を、つなぐ。」をミッションに、酪農・畜産向けクラウドサービスの開発、提供を中心とした事業を展開する株式会社ファームノートホールディングス。北海道・帯広市に本社を構え、ITを通じて人や動物の幸せ、自然の豊かさに貢献するために、サステナブルな視点で経営を行っている。今回は、アドミニストレーショングループの和田真実子さんに、同社をはじめとするグループの事業や組織文化、働き方についてお話をうかがった。
目次
牛のデータをスマホで管理できる環境を構築
酪農・畜産向けのIoTソリューションを提供する、ファームノートホールディングス。グループ会社である株式会社ファームノートと株式会社ファームノートデーリィプラットフォームとともに、生産現場で生じる課題の解決に挑む。2021年9月時点で、サービスの利用者数は5100生産者、累計利用頭数は52万4000頭に及んでいる。
ーーグループで取り組まれている事業について教えてください。
ファームノートグループは3つの会社で構成されています。持株会社であるファームノートホールディングスと、酪農・畜産向けITサービスを開発・提供するファームノート、そして、自社牧場を運営するファームノートデーリィプラットフォームです。ファームノートのサービスを自社牧場でも利用しますし、生産者の視点で見えてくる課題もグループ全体で共有しています。
ーーファームノートではどんなサービスを提供していますか?
生産現場で、スマートフォンなどを使って牛の情報を共有できるサービスです。具体的には、牛の体調や病気、薬、餌の情報を、クラウド牛群管理システム「Farmnote Cloud」で共有します。また、発情や病気の兆候、倒れて動けないといった牛の行動を測定し、トラブルを未然に防ぐウェアラブルデバイス「Farmnote Color」も手掛けています。
これまで牧場では、牛に関する情報を紙のノートに書いて共有するのが一般的でした。ファームノートのサービスを使えばノートの手軽さはそのままに、情報を一元管理でき、データを分析して牧場経営にも活かせます。獣医の先生や飼料会社の方とも素早く情報共有できるので、牛を育てる環境の改善にも役立ちます。
ーー実際にサービスを利用されている方の反応はいかがですか?
発情のタイミングを逃さなくなったというお話をよくうかがいます。以前、災害で数日間停電が続いた際には、「ファームノートが使えなくて困る」というお声をいただきました。そのとき、インフラと同様に、なくてはならないものになっていることを実感しました。UXにかなりこだわっていて、「見やすい」「扱いやすい」といった感想をいただくこともあります。
ーーサービスの提供だけでなく、実際に牧場も運営されているのですね。
生産者の視点で、業界全体の課題にアプローチしたいと考えたんです。そこで、2020年8月に牧場を立ち上げ、自分たちで牛を飼って牛乳を生産しています。
後継者や人手が不足する中、どんな取り組みが求められているのか。理想の飼育環境を実現しつつ、少ない労働時間で生産性を上げるためにはどうすればいいのか。自ら生産者となることで、そうした課題の解決に取り組み、新たな酪農・畜産の形をつくっていきたいと考えています。
否定せず、相手をまるごと受け入れる組織文化
北海道のほか、東京や鹿児島など国内5カ所に拠点を持ち、それぞれが連携をとりながら事業を進めているという。離れた場所にいながら、どのようにして互いの関係性を深めているのだろうか。
ーーコロナ禍でリモートワークを導入する企業も増えていますが、現在の勤務形態について教えてください。
牧場で働く社員や一部の部署を除いて、週1回は出社し、残りはリモートで業務を行っています。もともとは毎日出勤していたのですが、コロナ禍をきっかけに働きやすさや生産性を考えた結果、現在の形に落ち着きました。対面でのコミュニケーションも大切にしているので、完全フルリモートではなく、チーム単位で出社日を決めています。
ーー社内の男女比についてはいかがですか?
男性が少し多い程度で、男女比にそこまで差はないですね。性別や役職で区別することはありませんし、みんな自分が呼んでほしい名前で呼び合っています。個人を尊重し合う会社の姿勢が、名前の呼び方一つにも反映されていると感じます。牛との関わりが深い会社ですが、前職で牛と全く関係のない仕事をしていた人も多いです。
ーー現場のことを知ってもらうために、工夫されていることはありますか?
職種によりますが、営業やサポート関連の社員は必ず牧場で研修を行っています。もちろん、対象外の職種でも希望があれば牧場での研修を受けられます。
実際に牧場に行くと、当たり前ですが牛は人間よりもすごく大きくて、でもすごく臆病で。生き物と向き合う仕事をしていることを肌で感じられるんです。普段オフィスにいて行う仕事とは全く違って、生きることとか、自然の中で自分たちが生かされていることとか、そうしたことを直接感じられるとても貴重な機会です。
ーーまさに、生きることと向き合うお仕事ですね。一筋縄ではいかないことも多いかと思いますが、どんな方が活躍されていますか?
ファームノートグループでは、「コネクティッド(Connected)」「ボールド(Bold)」「プロフェッショナル(Professional)」という3つのバリューを掲げているのですが、それを体現できている人が活躍していると感じます。
「コネクティッド」はつながりを意味する言葉で、全体を考えて動くこととか、本当の意味で相手を受け入れることも含んでいます。強みだけでなくお互いのネガティブな面も共有でき、補完し合える関係性を表します。「ボールド」は、大胆に挑戦していくという意味ですが、「コネクティッド」がなければ思い切った挑戦はできません。そして、そうした信頼関係があるからこそ、「プロフェッショナル」な仕事ができると考えています。
ーー社員間の交流についてはいかがですか?
「コミュニティ」の活動が盛んですね。「マネージャー」や「20代」など、何らかの共通項がある人が集まって情報交換したり学びを得たりしていて、現在は会社の垣根をこえて5つのコミュニティが活動しています。拠点が離れていても交流できますし、仕事で接点のない社員同士のコミュニケーションの場にもなっています。
また、それとは別に部活動も行っています。今はコロナ禍でオンラインに限定されますが、例えば「スパイス部」では同じ時間に調理して、できあがったものをパソコンの画面越しに見せ合ったりしているようです。ほかにも、マッスル部やハンドメイド部、読書部などいろいろあります。
ーー楽しそうですね。そのほかに社内のコミュニケーションで特徴的なものはありますか?
「1to1」が特徴的でしょうか。一般的な「1on1」に近いものですが、「to」なので一方通行なんです。基本的に仕事の話はせず、上司に自分の話したいことを話して、上司はそれを聞いて受け止める時間なのですが、関係性を深める大切な機会となっています。
ーーエンジニア職から牛のお世話まで業種が多岐にわたっていますが、どのように人事評価を行っていますか?
半年に一度、二つの目標を設定しています。一つは自分がどうなりたいのか、もう一つはそこへ向けて何を達成するのかという具体的な指標です。半年ごとに本人が振り返りを行い、それに対して上司がフィードバックをしています。
特徴的な取り組みとしては、半年ごとに各社の代表が社員全員と個別面談を行っています。その時間を使って、振り返りや来期に向けたメッセージのほか、代表に直接話したいこと、聞きたいことを伝えています。
ブレーキを踏むことなく、本来の力を発揮するために
グループ全体で、酪農・畜産業界への強い課題感とあわせて重視しているのが、「人としての成長」だ。事業を通して、社員の成長に貢献できるような仕組みが整えられている。
ーー個人の成長やスキルアップに関して、特徴的な取り組みはありますか?
会社の文化になりつつある取り組みとして、「ビジョナリーリーダーズ」があげられます。代表の小林が私塾として始めたもので、任意参加で開催しています。
簡単に言うとリーダーシップについての勉強会なのですが、リーダーシップの定義が一般のものとは少し異なります。ビジョナリーリーダーズでは、いわゆる統率力や指導力ではなく、周囲の力を借りながらいかに「自分のビジョン」を実現していくかを学びます。
ーー具体的にどのようなことを行うのですか?
はじめに取り組むのが、自己認識についてです。自分がどんな人間なのかを知り、自分の大切なものや価値観を明らかにする一方で、苦手なことやこれまで目を背けてきたことにも向き合っていきます。参加者が互いの体験をシェアする場面では、仲間の考えや想いに触れることで自分自身への気づきも生まれます。リーダーになるためのテクニックを学ぶのではなく、自分自身と徹底して向き合うんです。そして、最終的には自分のビジョンが現れます。
ーー自分に向き合うことで何を得られるのでしょうか?
心の中に不安や恐怖があると、達成に向けてアクセルをグンと踏み込むべきときに、無意識のうちにブレーキを踏んでしまうんです。けれど、不安や恐怖の正体がわかっていれば、そのブレーキを緩めることができますよね。自己認識を高め、本来の力を発揮できるようになるのが、この勉強会の狙いの一つです。
事業を通して「生きる」をつなぐ
人、動物、そして自然に対して真摯に向き合うその先に、どのような未来を描いているのだろうか。最後に、社会貢献に関する取り組みと、将来の展望について尋ねてみた。
ーー社会貢献に関する取り組みは行っていますか?
和牛ブランドや乳製品に対する需要は高い一方で、酪農、畜産業界は現在も人手不足や後継者不足に悩まされています。持続可能な産業にするため、私たちがどのように貢献できるのかを常に考えています。
例えば、牛の糞尿の再活用に関する取り組みもその一つです。牛が排出するメタンガスが環境を害する要因とされていることもあり、うまく循環できるような仕組みをつくりたいと現在、模索しています。
ーー最後に、これからの展望について教えてください。
私たちが目指すのは、事業を通して豊かな地球の持続に貢献することです。それは、私たちのミッションである「『生きる』を、つなぐ。」に通じます。
そして、ミッションとあわせてグループで大切にしているのが、「事業を通して人の成長に貢献する」ことです。地域と連携しながら事業を成長させて社会課題を解決する、そして社員一人ひとりが働きながら自身の成長を実感し、会社が目指すビジョンを達成する、これを実現したいと思っています。
社内だけでなく、お客様や関連する企業の方々、さらに周辺の学生の方たちや農業、IT、あるいは社会課題の解決に興味がある方など、様々な形で様々な人が成長できる機会をつくり出せる企業になりたいですね。
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取材のウラ側
生命産業である酪農や畜産に対し、重労働で大変な仕事というイメージを持つ人は少なくないだろう。ファームノートホールディングスをはじめとするファームノートグループは、深刻な後継者不足、人手不足問題を抱える酪農・畜産業界において革命とも言えるIoTソリューションを生み出し、自らも生産者となって業界全体の課題解決に取り組んでいる。従業員のサポート体制においても、「働く」を超えて「生きる」ことそのものを豊かにするようなまっすぐな姿勢が胸を打つ取材だった。「帯広から、世界へ」は、そう遠くない未来なのかもしれない。
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