ハイブリッド勤務、スイッチワーク。働き方は社員が自分で選ぶ

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インタビューを受けてくださった玉木さん(写真右)と脇さん(写真左)。

——カオナビの働き方の特徴について教えてください。

玉木穣太さん(以下、玉木さん) カオナビでは、会社に与えられるのではなく、自らが選ぶスタイルを重視しています。そのため、働き方についても、自分のパフォーマンスを最大限に発揮できる選択をそれぞれが行っています。

 

取り組みとしては、働き方制度「MY WORK STYLE」と総称している、勤務する場所(出社 or 自宅 or 許可された就業スペース)を自分で選べる「ハイブリッド勤務」、「スーパーフレックス制度」、そして、家事や育児などにより、まとまった業務時間を確保できない場合、スイッチのようにON/OFFを切り替え、時間を柔軟に組み合わせて働くことが可能な「スイッチワーク」を導入しています。また、スペシャリストとしての道を突き進むか、マネジメントに力を入れるかなど、自らのキャリア形成も自分自身で選択できます。

 

出社時間や働く場所を会社側が指定するのではなく、出社するかどうか、どこで働くかはその人次第。リモートワークにしても、出社時間にしても、会社がそれを勝手に決めるのではなく、その選択肢は社員に持ってもらうようにしています。一人ひとりの個性や、その人が尊重したい働き方をできるだけ大事にしたいですね。

——ハイブリッド勤務やスイッチワークが広がると、柔軟に働ける一方で、コミュニケーションがとりにくいという話も耳にします。

玉木さん コロナ禍で環境が変わってしまった当初は、部署ごとにオンラインランチ会やお茶会などを企画したりもしましたが、基本的には社員同士が自分たちでコミュニケーションを取るようにしています。

 

脇みずきさん(以下、脇さん) 会社として、全社員に参加を強制するようなことはしたくないんです。必要な人たちが必要な範囲で声を掛け合いながら自分たちで進めていく、そういう主体的な形を目指したいですし、そんな組織でありたいと思っています。私もそうですが、座っているだけでいろいろ与えられると、思考が止まってしまいますよね。目的に対しどうすればいいか、ポジティブに周りと話し合いながら形にしていく組織を目指しています。

 

玉木さん 弊社が提供する「カオナビ」のプロットの醍醐味もそこにあって。もちろん社内でも「カオナビ」を活用しているのですが、弊社ではプロフィールに自分の趣味嗜好を入力できる欄を設けています。例えば、オンラインゲームをキーワードに探すと、誰かには行き当たるんですね。でも、そこで声をかけるなどの積極性がないと何も始まりません。

脇さん ただ、新入社員の場合は、誰に声をかけたらいいかわからないですし、なにかニーズがあっても声をあげにくいかもしれません。ですので、任意参加ですがコミュニケーションの場を案内したり、社長や人事との面談を設定したり、オンボードプログラムでコミュニケーションのサポートをするようにしています。

——自由度が高いと、一人ひとりの判断軸が必要になりますよね。そのあたりはどのようにお考えですか?

玉木さん 少しかたい言葉になってしまうんですが、裁量と責任はセットだと考えています。自由と裁量を与える代わりに、その中で事業に貢献してほしいですし、そのために会社として気持ちよく働ける環境を用意しなければならないと思っています。

脇さん そこで言う責任って、やっぱり成果だと思うんです。リモートワークなど働き方が多様化し、業務プロセスが見えにくくなる中で、社員としてはより一層「見える成果」を出していく必要がありますし、会社としても成果をきちんと測る仕組みを整えなければならないですよね。

兼業を推奨し、外部の活動も多角的に評価する

当たり前のように決まった時間に出社するという従来の働き方は、近年大きく変わりつつある。そこで生じるのが、社員をどう評価するかという問題だ。例えばリモートワークの場合、個人のプロセスや業務に対する姿勢が見えにくくなるが、カオナビではどのように対応しているのだろうか。

——評価のお話が出ましたが、働き方が多様化すると、プロセス重視の評価基準では測れない部分が出てくるかと思います。貴社ではどのように評価を行っていますか?

玉木さん 部署によって違いますが、やはりプロセスではなく成果を見ていますね。例えば私が管轄する「ブランドデザイン本部」では、一緒に働くメンバーのモチベーション維持を重視しています。その上で、何をしているかではなく、何を成すかを指標にしています。

脇さん 全社としては、3軸で人事評価を行っています。「ミッション(業務の達成度)」「バリュー(バリューに沿った働き方の体現度)※」「スキル(自己の専門領域を活かした会社への貢献度)」という、3つの指標を総合評価しています。

※カオナビのバリュー:カオナビは、相手の言葉を鵜呑みにせずその背景や理由を考える「仮説思考」、自分ができることを他の人でもできるようにする「仕組み化」、必要なものを見極め、捨てる重要性を知る「シンプル」の3つを掲げている。

——評価はときに定量的になりやすいかと思うのですが、どう克服されていますか?

脇さん 3つの軸は、S、A、B、Cの4つのランクで評価されるんですが、ではそれが報酬に直結するかというとそれだけではないんですね。特にバリュー評価は会社の掲げるバリューの体現度なので、定量的な評価というよりも日々の業務の中でどんな工夫やこだわりを成果につなげることができたか、定性的な面も評価できる軸だと感じますね。また、人事評価とは少しずれますが、例えば兼業している人については、社外の活動を含めて、個の成長を見るようにしています。

制度としても、兼業を推奨していますし、社外で自己啓発したいことがあれば応援しますし、そのための制度も整えています。サポートするからこそ、最終的にカオナビの事業に還ってくるものがあると信じています。

 

 

カオナビに共感する人々が集まる、アイコニックなオフィス

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カオナビの本社オフィス。15階はミーティングブースやソファー席などで構成されている。写真はラウンジ。
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同じく15階。芝生スペースではリラックスしながら談笑やミーティングができる。奥にはテントに覆われたスペースもあり、秘密基地のようだ。
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15階の執務スペース。各席にパネルが設置されており、集中しやすい環境になっている。
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セミナールームから見える東京タワー。意匠的な什器が採用され、カフェにいるような居心地のよさを感じる。

上の写真は、2020年11月にオープンした、東京虎ノ門グローバルスクエアの新しい本社オフィスだ。このような開放的な空間は、一体どのような考えをもとに生まれたのだろうか。

——オフィスが開放的で驚きました。オフィス・ワークプレイスへの取り組みについて教えてください。

玉木さん 弊社では、オフィスを「仕事をする場所」ではなく、「カオナビのサービスや思想に共感する人たちが集まる場所」と捉えています。リモートワークが普及する一方、育児や作業環境など、様々な事情で自宅で働くことが難しい社員が「避難場所」として活用できるような、誰もが心地よくオープンな空間を目指しました。

 

社員が働く場所を選んでいますし、そもそも働き方が多様化する中で、みんなそれぞれの使い方があって当然なんですよね。必ずしも出社する必要はない。そうなると、わざわざオフィスを設けるのであれば、その価値を転換しないと無理があると考えて、十人十色、個性や多様化を尊重したデザインになっています。

——コロナ禍による働き方の変化も、オフィスのデザインに影響していますか?

玉木さん コロナ禍ではなく、カオナビのあるべき姿を体現できているか、そこを重視しました。実は、最初は全員席があるようなデザインだったんですが、ちょっと考え直そうとなりまして。

 

弊社の思想として、「社員と会社は対等であり、互いに選び選ばれる存在」というのがあります。「相互選択関係」と呼んでいますが、それを掲げていながら、進行中のオフィスはその思想が十分に反映できていませんでした。それで、家具一つ、壁の色一つにしても議論を重ねていきました。あと一歩でゴールだったのですが、そこは妥協できませんでしたね。

例えば、個人のパーソナルスペースを増やしたのもその一つです。コロナ禍になり営業は外回りだけではなく、オンラインでお客様と商談する機会も増えたので、そのための部屋が必要でボックス席を設置したり、テレブースを置いたりしました。

あとは、「仕事をしにいく」という感じをなくすため、どれだけ公園っぽくできるかなど、議論を重ねながらマイナーチェンジを加えていきました。

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15階にはカウンタースペースもある。このように、様々な場所でカジュアルに話が弾む。

——ラウンジやカフェスペースなど、リラックスした雰囲気で会話も弾みそうです。

玉木さん 本社オフィスは15階と16階に入っているんですが、セミナールームやラウンジがある15階を、社員だけでなくカオナビの思想に共感する人なら誰でも使っていい空間にしようと考え、整備しているところです。様々なステークホルダーとの出会いが生まれて、新しい機会や体験が自動的に提供されているイメージですね。

カオナビの社員であれば、オフィスに行くだけでたくさんの人と出会える。オフィスがタッチポイントになっていくという、そんな空間を思い描いています。

——会社の取り組みとオフィスがまさに合致していますね。

玉木さん 学歴や年収など、これまで日本で重視されてきたようなレッテルを越えた関係を築きたいですし、さらに個を追求していきたいですね。肩書きだけでその人が評価されるのは、すごく苦しいですから。

人を多角的・多面的に捉えて、その人を表現する方法をもっともっと掘り下げていきたい。それをシステムとして広く社会に提案するとともに、「人を考える」企業であり続けたいと思っています。

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取材のウラ側

カオナビの本社オフィスに入った瞬間に感じた解放感。それは、個を尊重し、自らが選ぶ姿勢を重視する同社の取り組みにもしっかり反映されていた。自由な選択には責任が伴う。けれど逆に言えば、自分の意思で選び、責任を持って成果を出すための環境やサポート体制がその企業に整っているからこそ、“自由”を与えることができるのだ。多様な働き方に対応する制度はつくったものの、成果をどう評価するかが後回しになっている企業も少なくないかもしれない。そうした課題にも率先して取り組む同社の動きに、引き続き注目していきたい。