インタビューを受けてくださった、代表取締役社長の徳澤さん。

次代のニーズを見据え、女性に特化したビジネスを展開

エクシーズジャパンは、「エステ」という言葉が世間に浸透していない時代から女性に特化したビジネスの可能性に注目し、エステティックサロンに卸す商品を軸に事業の幅を広げてきた。そのはじまりは、1本のクレンジングジェルだったという。

 

――まずは創業の経緯について教えてください。

 

現在の代表取締役会長である前田種彦が、1972年にエクシーズジャパンを創業しました。当時はまだ化粧品のラインナップが限られていましたし、「エステ」という言葉もあまり知られていない時代でした。

 

ただ、「これからは女性の時代になる」ことをお世話になった方々から教えていただいて、女性を対象にしたビジネスを模索し続けたと聞いています。その結果たどり着いたのが、クレンジングジェルの販売です。

 

ーークレンジングジェルがはじまりだったのですね。

 

そうです。心から満足できるものがまだないのなら、自分たちでつくればいい。そんな想いから、最初の商品である「MÁJOR(マジョール)」のクレンジングジェルは誕生しています。ただ、その頃の日本はまだエステティックサロンが広く展開される時代ではなかったので、そこに行き着くまでには、会長自ら美容室を一軒ずつ訪問して、洗顔料を置いてもらうことから始めました。

 

その後、美容に対する世間の関心が高まっていき、エステティックサロンの数も増えていきました。当社もそちらへの卸販売をビジネスの軸にして、扱う商品やサービスを増やし、事業を広げてきました。宮崎にある本社のほか、東京、大阪、福岡にも支社を展開しています。

 

――商品の卸販売以外には、どんなサービスを提供されているのでしょうか?

 

現在は化粧品や健康食品の卸販売のほか、自社製品の技術を伝えるインストラクターを育てて、エステティックサロンの運営をサポートする事業も行っています。サロンのお客様の声を活かした新商品の企画・開発も、積極的に進めています。

 

ーー商品の開発からサロンの運営サポートまで、幅広く展開されているのですね。

 

商品の販売も自社で行っていますし、商品を発送するデポ管理センターも本社と同じ敷地内にあります。また、サロン運営のサポートだけでなく、サロンスタッフの教育にも関わっています。一貫した事業体系は当社の強みですね。

 

ほとんどの社員が、営業しながら開発に携わったり、インストラクターをしながら企画したりと複数の業種を兼務していますし、部署間のコミュニケーションも活発です。現場の意見が共有されやすい環境で、それが商品づくりにも活かされています。

より良いサービスを目指し、全社員で意見を出し合う

取材中も、徳澤さんと社員の方々が気さくに声を掛け合う場面が見られ、その打ち解けた会話に和やかな社内の雰囲気を感じることができた。そうした良好なコミュニケーションは、どのようにして育まれているのだろうか。

 

――社内のコミュニケーションが活発に行われている印象です。そうした環境をつくるために、何か工夫されていることはありますか? 

 

宮崎の県民性もあるかもしれません。誘い合ってバドミントンをしたり、何人かで集まってゴルフを始めてみたりと、交流は盛んなほうだと思います。

 

パンデミックが起こる前は年に1度、運動会をしていました。徒競走をしたりするんですが、普段の仕事では見られない一面が見えて楽しいんですよね。もちろん、私も走ります(笑) 全社員が集まる機会はなかなかないので、そこで生まれるコミュニケーションは貴重でしたね。

 

――コロナ禍ではじめてテレワークを導入されたとうかがいました。そこでも、普段のコミュニケーションが活かされたのではないでしょうか?

 

そうなんです。休業されるサロンも多かったので、サロンに通われるお客様が商品を入手できない状況になってしまって。それで、どうすればいいか、リモートで社員全員の意見を募ったんですね。

 

そこで、ご依頼のあった個人のお客様に商品を直接発送するというアイデアが出てきました。今はサロンに行けないけれど、「いつも使っている化粧品を使いたい」「自粛期間中に自宅でケアを始めたい」といったお客様のご要望に応えるための取り組みです。

 

――サロンに行けない不便さを、逆に活かしたアイデアですね。

 

はい。お届けするお荷物には、日頃の感謝の気持ちを込めてパッケージした1合のお米とお手紙を添えるようにしたのですが、これも社員の意見から生まれたものです。

 

環境への配慮から、15年ほど前に化粧品の使用済みボトルを回収していたこともあります。「感謝されることをやっていこう」という創業者の理念が、社員の意見や企画に反映されているのだと思います。今でも製品のパッケージを環境に配慮したのものにしたり、災害時には寄付を行ったりもしています。

 

ーーそうしたマインドは、どのようにして社内で共有されるのですか?

 

そのための研修を特別に設けてはいませんが、10年、20年と長く働いている社員が多いので、その人たちのマインドが自然に浸透して、今の組織を形づくってくれているように感じます。これも、日頃のコミュニケーションのおかげかもしれません。

同社のインストラクター。

子育て経験を活かした、働きやすい環境づくり

育児や介護など、ライフステージの変化に左右されやすい女性社員も、のびのびと働けるように。そんなワークライフバランスに配慮した働き方の実現には、徳澤さんの子育て経験も活かされているという。

 

――子育て世代が多いとうかがいました。どのようなサポート制度がありますか?

 

育児休業制度や介護休業制度のほか、短時間勤務制度も設けています。男性の育休取得実績もありますし、会社としては男女関係なくみんなに利用してもらいたいと思っています。

 

私自身5人の子どもがいて、下の娘2人はまだ中学生です。仕事と家庭の両立がいかに大変かは経験上よく理解していますし、家庭を尊重しながら仕事に集中できる体制を整えることは、本当に大切だと思っています。それが、結果的に会社の利益にもなるんですよね。育児休暇、介護休暇は、利用しやすいように1時間単位で取得できるようになっていて、有休消化率はほぼ100%です。

 

――ほかにも、働きやすい環境づくりのために工夫されていることはありますか?

 

年に一度、全社員との個人面談を実施しています。社員の意見を私が直接聞いて、制度化できることは取り入れるようにしていますね。最近、子育て中の社員から、子どものお迎えの時間家庭との両立について相談があったので、フレックス制度を導入しました

 

副業についても、来期から解禁する予定です。完全週休二日制で残業もほとんどないですし、社外で副業をして経験を積むことはプラスになると考えています。コロナ禍で導入したテレワークも、本来であれば私たちの業務内容には向かないのかもしれません。けれど、やってみなければわからないですし、やってみたからこそ得られる気付きもあると思っています。

宮崎本社。目を引く外観が特徴だ。敷地内には倉庫も併設している。
意匠的なオフィスは社員のモチベーションアップにもつながっているようだ。
ゆっくり過ごせるようこだわったという休憩室。お昼には社員の皆さんがお弁当を持って集まる。

――数々の新たな取り組みは、いろんな人の意見をもとに生まれているのですね。

 

宮崎の本社をリニューアルして大きな倉庫を併設したことも、働きやすさを考えてのことです。お弁当を持ってくる社員が多いので、お昼休みにゆっくり過ごせるよう休憩室にもこだわりました。建物が目を引くようで、通りすがりの方から「何の会社なんですか?」と聞かれたり、お褒めの言葉をいただくこともあって、社員のモチベーションアップにもつながっているようです。

BtoCや海外にも販路を拡大し、さらなる成長を目指す

次代を読み、社内でアイデアを出し合いながら、これまで新たな挑戦を続けてきた。事業、そして働く場づくりにおいて、今後どのような展開を描いているのだろうか。

全国の注文を受ける、バックヤードのデポ管理センター。

ーーお話をうかがっていると、会社主導ではなく、社員の方たちと力を合わせて働きやすい場を整えているように感じます。

 

そうですね。SDGsが世界的に推奨されていますし、働く環境の改善もその一つです。当社の管理職の半分は女性ですし、女性にも働きやすい場づくりにこれからも努めていきたいと思っています。

 

評価制度においては、目標に対する成果が報酬に反映されるような仕組みを現在構築中です。働き方以外においても、社会の中で事業を行う一企業として、私たちにできる活動を模索し続けたいですね。

 

――最後に、今後の事業の展望についてお聞かせください。

 

実は、展示会でアジア圏の国々からご要望をいただくことが多く、3年前に海外事業部を立ち上げて、海外展開の準備を進めていました。それが、来年ようやく実を結びそうです。

 

また、サロンの専売品に限らず、一般のお客様向けの商品も提供していきたいと思っています。男性向けの化粧品も展開する予定で、どんな反応をいただけるか楽しみです。「全ての人に『綺麗』の種を届けたい」という想いを実現するために、今後もチャレンジし続けたいですね。

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取材のウラ側

代表取締役社長である徳澤さんと社員の皆さんとのフランクな関係性が印象的な取材だった。徳澤さん自身が子育て中で、家庭と仕事の両立の大変さを理解し、社員の声に耳を傾ける中で働く環境の改善を進めている。それは、社内でのコミュニケーションが十分にとれており、自発的に意見を出し合える社風があるからこそ生まれる発想であり、取り組みだと感じた。時流に合わせて変化し続けるエクシーズジャパンの、今後の展開が楽しみだ。