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マツダ株式会社
マツダは、「前向きに今日を生きる人の輪を広げる」ことをパーパスとし、人々に「生き生きとする体験をお届けする」ことを目指し企業活動を行っています。人間中心の開発思想に基づく独自の技術とデザインを追求し、「CX-5」や「ロードスター」などが同社の主力製品となっています。かつてのロータリーエンジン、現在のスカイアクティブ・テクノロジーなど、飽くなき挑戦を続ける独創的な企業文化を持ち、日常に動くことへの感動や心のときめきを創造し、一人ひとりの「生きる歓び」に貢献することを目指しています。
Official Siteマツダは2025年6月、東京・麻布台ヒルズの49階に「マツダR&Dセンター東京」を開設し、東京本社も移転しました。新オフィス構築にあたって同社が掲げたのは「誰もが笑顔で通いたくなる/ここで働きたいと思えるオフィス」というコンセプト。その背景には、SDV(Software Defined Vehicle)人材の採用強化という明確な経営課題がありました。 移転プロジェクトを主導した東京総務部の藤高浩一さん、人事本部の石鍋秀幸さん、そして実際にソフトウェアエンジニアとして働く瀬長孝久さん、君嶋良太さんに、新オフィスの魅力などを聞きました。
目次
社内チームとパートナー企業が一体となって成し遂げた移転プロジェクト
──まずは「マツダR&Dセンター東京」の開設、および東京本社オフィス移転の経緯について教えてください。
藤高:目的は大きく2つです。一つは首都圏機能の強化、もう一つはソフトウェア人材の採用強化です。自動車業界全体でデジタル化が進む中、当社も広島中心の体制から、より多様な人材を獲得できる体制へシフトする必要がありました。
これまで東京本社があった霞ヶ関オフィスはスペースの問題もありましたし、SDV人材にとってあまり魅力的な場所とは言えませんでした。そこで2024年5月ごろから新拠点の検討を開始し、麻布台ヒルズに移転する決断をしました。
麻布台ヒルズを選んだ理由として、1つ目はこのエリアの歴史と立地です。武家屋敷があった地域で古くから外交の中心にありながら、今なお進化を続けていることに加えて、都心なのに喧騒から少し距離があって緑豊かな環境が整っています。2つ目は49階という高さです。約260メートルの位置から都心の広がる景色や東京タワーを望む環境は、社員一人一人が集中して仕事に取り組めるし、SDV人材のように創造力が豊かな人にとっては生産性向上につながるのではないかと考えました。
──約1年の移転プロジェクトを振り返り、特に印象深いことはありますか?
藤高:まずはスケジュールですね。2024年5月から物件を探し始め、広島本社の経営陣などにも承認を得て、7月末には麻布台ヒルズと契約しました。そこから約1年という短納期の中で、移転に向けた準備から工事着工までのプロセスを行いました。
次に、プロジェクトマネジメント(PM)を外注しなかった点です。通常、この規模の移転プロジェクトは外部に委託するのが一般的ですが、我々は社内で完結させることを選びました。東京総務部はプロジェクト全体のサポート役としてデザイン本部、MDI&IT本部、人事本部、統合制御システム開発本部など必要な部門を素早く巻き込み、社内の協力体制を築きました。その連携があったからこそ、スピード感のある意思決定と移転準備が進められたと思います。
最後は、コンセプトとQCD(品質・コスト・納期)を意識してプロジェクトを進めたことです。マスタースケジュール上、工事見積入手から発注までのリードタイムが極めて限られていたため、事前に多くの情報を整理・集約し、コンセプトとQCDの両立を図りながら最適な判断を下す必要がありました。
調整の難しい局面も多々ありましたが、工事業者やデザイン会社の皆さまから専門的な知見と温かいご支援をいただき、非常に助けられました。
──なぜPMを外部に委託しなかったのでしょうか?
藤高 経営陣への報告や意思決定の迅速化、広島本社を含む現場との密な連携が求められるため、スピード重視の観点から社内内製で進めることにしました。
また、チームとしてこれまで東京本社移転などの大規模プロジェクトを経験していたこともあり、必要なプロセスやクリティカルパスを含む情報をタイムリーに把握できたことも大きな強みとなりました。
エンジニアファーストを体現する設備
──先ほど眺望の話がありましたが、それ以外に新オフィスの特徴やアピールポイントは何でしょうか?
藤高:一つは「エンジニアファースト」の設備です。エンジニアの働き方は、ABW(Activity Based Working)を導入している部門とは異なり、個人用のデスクに長時間座り、デュアルディスプレイで作業するスタイルです。そのため、机上空間を広く確保し、電源を6口用意しました。
特にこだわったのが椅子です。集中力を持続できるよう、疲労軽減を考慮したものを選定しました。広島本社に6種類の椅子を送り、実際にエンジニアたちに座ってもらい評価シートを作成してもらいました。その結果、上位2種類を導入することにしました。
加えて、エンジニアファーストにおいて絶対に妥協できなかったのがネットワーク環境です。エンジニアは大容量のデータをやり取りします。将来的に200人のエンジニアがこのオフィスで働けるよう、10Gbpsの高速回線と200本の有線LANを敷設しました。安定性の高いネットワーク環境を整備することで、業務効率と生産性の最大化を図りました。
もう一つ、職場の特徴として挙げたいのは、オフィスDXとITツールの活用です。顔認証による入退室管理や、Microsoft 365と連携した会議室予約システム、モバイルバッテリーの常備など、デジタルツールを積極的に導入し、業務の円滑化と利便性向上を図りました。そのほか、社員同士の交流を図るためのオープンな共用スペースも設けています。
ゲーム業界など異業種から飛び込む
──ここからはエンジニアのお二人に話を伺います。はじめに現在の業務内容をご紹介ください。
君嶋:統合制御システム開発本部 情報制御モデル開発部 コネクティッドソフトウェア開発グループに所属し、GUI(Graphical User Interface)の開発と最適化を担当しています。具体的には、車両の状態を3Dグラフィックスで表示したり、タッチパネルによる直感的な操作を可能にするようなインタフェースの設計をしたりしています。
瀬長:最近立ち上がったUnityチームの一員として、主に新しいユーザー体験、価値創出のための実験的な開発業務を行っています。また、社内の関係者と協力して開発環境やフローの整備も行っており、ある意味では創業期のスタートアップのようなこともしています。
──これまでのキャリアと、マツダに入社された理由は?
君嶋:私はゲーム業界出身で、前職ではバーチャル空間でリアルなコミュニケーションができるメタバースプラットフォームの開発に携わっていました。マツダに入社したきっかけは、Unity社とのパートナーシップ契約のニュースを見たことです。
Unityは私が長年扱ってきた開発ソフトウェアで、今までの経験がバーチャルだけではなくリアルのプロダクトにも生かせる可能性に魅力を感じました。また、子どもの頃から実家の車がマツダ車だったこともあり、個人的にも縁を感じていました。
瀬長:私はプログラマー(テクニカルディレクター)として広告業界やゲーム業界、VRアプリケーションの開発会社などを渡り歩く中で、一貫して「テクノロジーを用いた新しいユーザー体験の追求」をしてきました。マツダに入社したきっかけは、Unityエンジニアのポジションの求人を見かけたことです。自動車という歴史の長いプロダクトにおいてもまだまだ新しいユーザー体験創出の可能性があるのではないか、そして自動車という巨大なシステム、プロダクトに関われる機会は滅多にないはずだという思いがあって飛び込みました。
──異業種から自動車業界に転職されてみていかがですか?
君嶋:ゲーム業界で培った最適化技術やUI・UX設計の知見が、クルマのHMI(Human Machine Interface )/GUI開発に生かせる場面が多く、非常にやり甲斐を感じています。特に車載ハードウェアの限られたリソースの中で、リアルで直感的な表現を実現するためには、ゲーム業界でのテクニックが要求され、技術的にも面白いと感じています。
瀬長:最初は専門用語がまったく分からず困りましたが、周りの方々に助けてもらいました。製造業の良くも悪くも安定しているイメージとは違い、世間的にも話題である「自動車業界の変革期」を内側から見ることができ、刺激的な日々を過ごしています。
49階の眺望が変えた視点
──新オフィスになって、仕事の進め方やコミュニケーションにどのような変化がありましたか?
君嶋:霞ヶ関オフィス時代は会議室を間借りして仕事をしていましたが、開発拠点として設計されたオフィスではなかったので、通信インフラが整っておらず、速度面でかなり困りました。大容量のデザインデータのやり取りや、クラウドサービス利用のため、通信速度は非常に重要です。麻布台ヒルズになって最新のネットワーク環境が整い、他社とのやり取りやクラウドとの通信もスムーズになりました。
また、対面でのコミュニケーションが取りやすくなり、チーム内外でのフィードバックや意見交換が活発になりました。試作したものを他部署のメンバーにも触ってもらい、ユーザー目線での開発をより活発に進められるようになりました。
瀬長:技術的な話は君嶋さんが語ってくれたので、私は“人間的”な側面を。広島本社だとデザイン部門と開発部門の場所は分かれていますが、ここでは隣にデザイン部門の方がいるので、「今日、一緒に飲みません?」と気軽に声をかけられるようになりました。このコミュニケーションの距離の近さがこのオフィスの大きな相乗効果だと感じています。
──眺望の良い高層階で働くことについてはいかがでしょうか?
瀬長:正直、高いところで働くことには懐疑的なところもあり、「49階からの景色がキレイだからといって、仕事の生産性と関係あるの?」と思っていました(笑)。
でも実際に働いてみると、東京という大都市が一望できる環境にいることで、目先の実装だけではなく、それによって人々にどのような影響があるか、どのように社会を変えるのかという大きな視点を意識することが多くなりました。また、一個人としても、小さなことで悩むことが少なくなり、クリエイティブな発想ができるようになった気がします。
君嶋:上から見ると、横断歩道や地上を歩く人、車の動きがよく見えるんです。人が歩いてきて車が一時停止して、人が渡ってから車が進む。そういう交通の流れを俯瞰して見られるのは、自動車会社のソフトウェアエンジニアとして非常に面白いですね。実際の社会の中で車がどう動いているかを考えながら開発できるのは貴重だと思います。
──オフィスの共用スペースの活用について教えてください。
瀬長:私はオーディオ・ビジュアル表現のコミュニティー活動をしていて、そのイベントを当社のオフィスで開催させてもらいました。外部コミュニティーのハブとしてオフィスを使えるのは嬉しいですし、30〜40人の参加者も49階でのイベントにはテンションが上がっていました。
恐らく外部の人たちを招いたイベントをやりたいという声は、社内で他にもあったのですが、誰に話せばいいのか、どう進めればいいのかわからないという状態だったと思います。私が“ファーストペンギン”として実施したことで、オペレーションや担当者が明確になり、これからもっと増えていくと思います。
君嶋:先日、広島から役員が来た際、共用スペースで懇親会を開いていたのですが、その場で話が盛り上がり、突発的に共用スペースの大型モニターを活用してプレゼンを行いました。結果的に、そこから次の仕事の話が広がりそうなアクションも生まれています。
通常の執務スペースだと、いきなり役員を捕まえてモニターにPCをつないでプレゼンを始めるなんて、なかなかハードルが高いですよね。そういうアクションを起こしやすい場になっていると感じます。
採用への効果は?
──続いて、人事本部の石鍋さんにお伺いします。新オフィスは採用活動にどのような影響をもたらしましたか?
石鍋:まずは認知度の向上があります。もともと横浜にも開発拠点があるのですが、「マツダ=広島」のイメージが強く、首都圏に拠点があることを知らない方が多くいらっしゃいました。しかし、2024年9月末に新R&Dオフィス設立のニュースリリースが出て以降、求職者の方からは「マツダが首都圏に拠点があるなんて知りませんでした」との声も多くいただいています。
また、採用成果にも明確な変化が出てきています。キャリア入社者における首都圏勤務者の割合は、2023年度が15パーセントでしたが、2025年度(9月時点)は33パーセントと倍以上に増加しています。転職において大きなハードルとなる「転居」を伴わない勤務地を提示できたことが、特に首都圏在住の優秀な人材の獲得につながっていると考えています。
──マツダで働く上で、オフィス環境以外のメリットはありますか?
石鍋:マツダは「ひと中心」の企業文化に基づき、従業員一人一人が主役として輝き力を最大限に発揮できるような環境づくりに力を入れています。
具体的には、1つ目として個人のキャリア自律支援があります。従業員と上司が定期的に話し合う「キャリアミーティング」を通じて、個人の成長や挑戦を後押ししています。また、社員の挑戦意欲に応えるため、通年で社内公募制度を実施したり、複数の業務を経験できる社内兼業制度も導入したりしています。
2つ目は、「BLUEPRINT」と呼ぶ組織風土の変革です。従業員一人一人が大事にされ、ひらめきを感じ、安心感を持ち、ありのままで、仲間でいられる職場。リーダーや管理者は、行動を管理するのではなく、自主性を尊重し後押しする。そんな風土作りを目指し、経営陣と従業員全員参加で取り組み続けています。
3つ目が柔軟な働き方の推進です。スーパーフレックスタイム勤務や、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッドワークを全間接部門で導入しており、業務特性に合わせて職場ごとにルールを定め活用しています。また、IT部門など一部の職場ではフルリモートワークも導入しています。加えて、週に1回の定時退社日や午後9時半以降の勤務を原則禁止するなど、メリハリをつけた働き方を支援しています。
──マツダで活躍する社員に共通する傾向や特性はありますか?
石鍋:多様な人材がいますが、共通するのは「自律的に考え、行動できる人」「変化を恐れず、挑戦するマインド」を持っていることではないかと思います。
マツダは、自動車業界の中では決して大企業とは言えません。だからこそ一人一人の担当領域や裁量が広く、部門を超えた共創、他企業との共創の機会がとても多いです。困難に直面したときでも、前向きに捉えて挑戦したり、異なる分野の仲間と協力して課題を解決したり、新しい価値を創造していくことが重要だと考えています。
自動車業界は100年に一度の変革期と呼ばれていますが、その中でマツダは、時代に合わせた「走る歓び」と「生きる歓び」を提供することを目指しています。正解のない時代であり、チャレンジすることも多いですが、その分、新しい価値を生み出せる機会、成長の機会も多くあると思っています。
──最後に、自動車業界を志望するソフトウェアエンジニアの方々へメッセージをお願いします。
瀬長:異業種から製造業、特に自動車業界への転職はハードルが高いと思われがちですが、意外とそうでもないんです。ソフトウェア中心の開発を行っていた、いわゆるITエンジニアにもぜひ挑戦してほしいですね。
君嶋:私たちのチームは、コンシューマーやソーシャルなどのゲーム業界のみならず、メタバースや体験型デジタルコンテンツなど、さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアが集まっています。自動車にまったく関係ない業界から来たメンバーばかりですが、自動車というプロダクトに興味があれば、これまで培ってきた技術や感性を発揮できる土壌はたくさんありますので、ぜひ一緒に自動車の未来を切り拓いていきましょう。
──ありがとうございました。
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取材のウラ側
麻布台ヒルズ49階からの景観は、まさに圧巻。東京タワーを見下ろし、眼下に広がる壮大なパノラマは、これ以上のオフィスはないと思わせるほどです。特に夕方から夜にかけての息をのむような夜景は、何時間でも見続けられる美しさ。社会全体を見渡せるこの非日常的な空間は、働く人の視野を広げ、創造性を最大限にかきたてます。自分自身が小さく感じられる場所だからこそ、より大きな視点で物事を捉え、革新的で質の高い仕事を生み出すことができるでしょう。
編集部が推したい福利厚生や支援制度
| 1. 選択型福利厚生制度「マツダフレックスベネフィット」 | 毎年付与されるポイントの範囲内で、従業員が必要なメニューを自由に選択し、補助金を受けられる制度です。年間数万円分のポイントが支給されます。 |
|---|---|
| 2. マツダ車の社員割引価格の適用、社員車両購入支援制度 | マツダ車購入時に、社員割引価格の適用を受けられるほか、低利の社員車両購入融資の利用や、特定の支払いプランにおける手数料の補助があります。 |
| 3. 柔軟な働き方を支える制度 | 一部職場を除き、コアタイムのないスーパーフレックス制度を導入。また、業務内容に応じてリモートワークも利用でき、柔軟な働き方を支援しています。 |
気になる

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