インタビューを受けてくださった、執行役員コーポレート統括部長の住谷さん。

必要とされる次へ。社会のニーズの先を行く事業を展開

1961年に大阪の地で創業し、現在は日本全国に顧客基盤を持つUSEN-NEXT GROUP。「必要とされる次へをコーポレートスローガンに掲げ、常に先を見据えた事業を展開している。

 

ーーまずは事業内容について教えてください。

 

もともとは店舗向けの有線放送から始まり、現在は日本全国、約75万店舗の顧客基盤を持っています。世の中には300万ほどの店舗があると言われており、その4分の1が我々のお客様ということで、これは非常に大きな強みだと感じています。

 

BtoCの事業としては、U-NEXTという動画配信サービスを行っています。いわゆる、人々のライフスタイルDX(デジタルトランスフォーメーション)です。DVDレンタルが当たり前だったエンターテインメントの時代を経て、今はインタラクティブな動画配信が人々の生活習慣に浸透してきています。そういったライフスタイルDXをエンターテインメントの領域でも展開しています。

 

ーー店舗向けの有線放送を起点に、幅広く事業を展開しておられるのですね。

 

「必要とされる次へ」をコーポレートスローガンに掲げているのですが、そこには、常に未来について考えながら社会に必要とされる価値を提供していくという、強い意思が込められています。例えば今年、新たな事業テーマとして掲げている「まるっと店舗DX」もその一つです。いわゆる、お店のDXですね。

店舗に我々のテクノロジーを用いた新しいITソリューションを提案し、そのお店がよりスマートで快適になり、お客様にとってさらに魅力的になるようサポートします。お店が変わると街が変わり、街が変わると社会が変わる。それも、我々が大切にしているテーマです。

組織文化を象徴するイノベーティブな採用方式

USEN-NEXT GROUPのカルチャーを象徴する仕組みの一つが、独自の採用・選考方式だ。エントリーシートも履歴書も提出する必要はないという。そこにはどんな狙いや思いがあるのだろうか。

 

ーーどういった方が活躍されていますか?

 

新しいことが好きな人でしょうか。言い換えれば、イノベーティブな人が活躍していると思います。コーポレートスローガンの通り、社員にもイノベーティブな挑戦意欲がある人が多いですね。それをよく示しているのが、USEN-NEXT GROUPの採用・選考方法です。

 

ーー具体的には、どんな方法をとられているのですか?

 

例えば、エントリーする際に必要なのは、「名前」「生年月日」「メールアドレス」のたった3つの項目だけです。エントリーシートも履歴書も必要ありません。新卒採用では、その代わりに自己PR動画を投稿していただいて、一人ひとりの個性を見るようにしており、選考回数や選考内容、面接官も自由に選べます。

 

ーー一般的な採用方法と比べ、かなり労力が必要とされそうです。

 

採用の根底にあるのは、「就職活動は本質的にどうあるべきか」という問いです。選考効率のためにエントリーシートだけで落としたり、大学4年生の春から2~3カ月の間に一括採用して全員が翌年の4月1日に入社したり。多くの人は当たり前のものとして受け入れていますが、そうではないことを示したいという思いが根底にあります。

 

我々は3年前からオンライン面接を行っているのですが、今後はAIの面接官を導入することも予定しています。AI面接のメリットは、場所や時間が制約されないだけでなく、面接官の属性による有利・不利がなくなることにあります。そうすると、よりフラットな選考になりますよね。

 

採用活動は仲間になってくれる人を探す行為ですし、そのために企業側が全力を尽くすのはごく当たり前のことだと思います。そして、こうした採用方法を支持して共感してくれる人は、我々の求める人物像に合致すると考えています。

オフィス内の来客フロア/ラウンジは、社員同士のコミュニティハブとして機能している。

グループ内の転職で多様なキャリア形成を実現する

ーー社内はどのような雰囲気ですか?

 

すごく仲がいい社風だと感じます。今はコロナ禍で難しいのですが、以前は仕事が終わってからご飯を食べにいったり飲みにいったり、休日にイベントで集まったりしていました。

 

コロナ禍で現在は休止しているのですが、東京・目黒の本社では月に1回、水曜日の18時~20時に「ハッピーアワーイベント」を行っていて、オフィス内のラウンジでお酒や料理を無料で提供していました。自由参加なのですが、毎回300人~400人ぐらい集まっていましたね。グループ内の人たちが会社を超えて交流する場になっていました。

 

ーーそうしたつながりから、新たなアイデアが生まれることもあるのでしょうか?

 

それもありますが、もっと大きいのは自分の新たなキャリアを考えるきっかけになっていることです。我々はHDも含めたグループ24社でワンカンパニーだと考えており、グループ内の事業会社間で転職ができます。

 

就職した時点ではその気持ちがずっと続くと思っていても、実際には今やりたいことと5年後のやりたいことが変わる人のほうが圧倒的に多いんです。グループ内の事業領域は多岐にわたるので、その中でいろんなキャリア形成をしてほしいと思っています。部署や会社を超えたカジュアルな交流は、それを考える大きなきっかけにもなります。

 

ーー同じカルチャーを持つグループ内で転職できると、キャリアチェンジに挑戦しやすくなりますし、可能性が広がりそうですね。

 

例えば、人事部で中途採用を担当している6年目の社員は、もともと営業部門に4年ほどいたんですね。その中で、いつか仲間を増やす仕事に携わりたいと考えるようになって人事部に志願し、現在に至ります。制度を利用した社員の中には、異動して3カ月で社長賞を受賞した人もいます。2018年にスタートした制度ですが、半期で約200名の社員から応募があったりと、広く活用されています。

本当の意味での“働きやすさ”を追求するために

USEN-NEXT GROUPでは「働くこと」の意味を見つめ直し、その質を変えていく取り組みとして、2018年に「Work Style Innovation」をスタートした。スーパーフレックスタイム制度やリモートワーク勤務制度など、いきいきと働ける環境を整えるべく新たな施策を取り入れ続けている。

「かっこよく、働こう。」を働き方改革のスローガンに掲げる、同社のオフィス。

ーーオフィスに対する考え方をお聞かせください。

 

我々の特徴は、オフィスにもよく現れていると思います。目黒の本社だけでなく、全国各地の拠点でも2年前からリノベーションを進めるなど、力を入れています。

 

リモートワークの普及で「オフィス不要論」のような議論もありますよね。だからこそ「なぜオフィスが必要なのか」、その必然性をしっかりおさえた上でオフィスに投資しなければならないと思っています。

 

我々が考えているポイントは3つです。1つ目は「Productivityプロダクティビティ」。すなわち、仕事がはかどり、生産性が上がるということ。2つ目は「Meet upミートアップ」。そこに行くと仲間がいて、話やディスカッションができるということ。3つ目は「Engagementエンゲージメント」。素敵なオフィス環境があることで、「良い会社で働いている」と思ってもらえる、帰属意識が高まるということ。

 

この3つの要素を備えなければ、オフィスは不要と考えます。我々はオフィスが必要だと思っているので、3つの要件を満たすオフィスをつくり続けています。

 

ーーリモートワークについてはいかがですか? コロナ禍を機に導入した企業も増えています。

 

働き方改革の一環で、2018年に「Work Style Innovation」というプロジェクトを立ち上げています。コアタイムやフレキシブルタイムを設けない「スーパーフレックス制度」などの施策を取り入れており、「リモートワーク勤務制度」もコロナ禍以前から導入しています。

 

パンデミックの影響もあって、現時点で完全リモートワークの人は全体の15%くらいでしょうか。本社で言うと、オフィスへの出勤率は7割くらいですね。任意でリモートワークを選択できますが、オフィスに来る人が多いようです。

サステナブルに社会貢献できる取り組みを

必要とされる次を見据えて、事業を拡大してきたUSEN-NEXT GROUP。今後、どのような未来を描いているのだろうか。

 

ーー社会に必要とされる価値を提供し続けるというお話がありましたが、社会貢献に関わるような活動は行っていますか?

 

2021年8月に「サステナビリティ推進室」を設置し、これまで事業会社ごとに進めていたサステナビリティに関わる取り組みを、グループ全体で統合的に行うようになりました。

 

また、音楽を扱う会社なので、音楽を通じてSDGsにも貢献したいと考えています。例えば、オフィスに音楽を提供することが人々の生産性を上げ、働く環境の価値や質を上げていく。そうしたことにも貢献できるかもしれませんし、音楽が持つ健康への効用に関する研究にも取り組んでいます。

 

ーー最後に、今後の展望について教えてください。

 

会社として大きく目指すところは同じでも、その解釈や表現の仕方は一人ひとり異なります。

 

個人的には、もっと大きな会社になっていきたいと考えています。働く人とその家族の人生が、働くことを通して豊かに幸福になっていく、それは会社が果たすべき役割の一つだと思います。大きな会社になれば、より多くの人たちの人生が豊かになるかもしれません。そのために、我々は新しい事業やビジネスをこれからも開拓していきます。

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取材のウラ側

働き方改革、ニューノーマル、SDGsなど、時代や社会状況に応じて企業は様々な取り組み・改革の必要性に迫られる。そうした中でも、常にその背景にある本質を問いながら、採用方式や各制度にしっかりと落とし込んでいる姿勢が印象的だった。日本全国に顧客を持ち、多岐にわたる事業を展開するUSEN-NEXT GROUPは、これからも柔軟で革新的な取り組みを行い、さらなる飛躍を遂げていくのだろう。筋の通った企業カルチャーの力強さを改めて感じた取材となった。