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株式会社MIXI
株式会社MIXIは、「スポーツ」「デジタルエンターテインメント」「ライフスタイル」「投資」の4つの事業領域をもつIT関連企業で、友人や家族などと一緒に楽しむ「コミュニケーション」を重視した新しい体験を提供しています。
Official Site1990年代末に求人サイト運営で事業を興した株式会社MIXIは、東京・渋谷を象徴するベンチャーとして、その後、SNSやスマホゲームなど、次々と新たなビジネスを広げていった。会社設立から25周年を迎えた今、従業員数は1600人以上(連結、正社員のみ)と大企業に成長した。そこで手狭になったオフィスを刷新するため2020年3月に本社を移転するとともに、分散していた拠点を統合した。今回はMIXI社が展開する事業や働き方、オフィスについて人事本部 人事戦略部 人事企画グループの間宮彩花さん、はたらく環境推進本部 せいかつ環境室の熊坂勇刀さん、経営推進本部 広報部 企業広報グループの曽我部早紀さん、持田愛さんに具体的な話を聞いた。
目次
近しい人との強いつながりを重視
――まずは現在の事業内容について教えていただけますか。
間宮:当社は多岐にわたってさまざまな事業を展開しておりますが、それらに共通するのが、友人や家族などと一緒に楽しむ「コミュニケーション」です。
主な事業領域は4つあります。1つ目は「スポーツ」。ベッティング事業においては、競輪やオートレースのネット投票ができる共遊型スポーツベッティングサービス「TIPSTAR」など、コミュニケーションを重視したソーシャルベッティングという独自の要素を磨き上げて、新しい体験を生み出しています。また、観戦事業ではプロサッカークラブ「FC東京」やプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」などの運営にも携わっています。
2つ目は「デジタルエンターテインメント」。スマホゲーム「モンスターストライク」に代表されるように、親しい友人などと一緒にスマートフォンで遊べるプロダクトを提供し、ゲームに留まらないコミュニケーションツールとして展開しています。最近は他社IP(知的財産)や異業種とのコラボレーションなど、メディアミックスをより積極的に行っています。
3つ目は「ライフスタイル」です。事業の柱である子どもの写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」は海外展開にも力を入れており、多くのユーザーから愛されるサービスに育ってきています。
そして最後は、「投資」。近年の投資活動の拡大と重要性を勘案し、2022年からスタートアップやファンド出資などの投資活動を事業化しております。
――キーワードであるコミュニケーションに関して、MIXIの独自性とはどういったものでしょうか?
間宮:家族や友人といった近しい人とのコミュニケーションにフォーカスしている点です。不特定多数というよりも、親しい人との温かいつながりを強めていくことを大事にしています。
当社は「mixi」という当初招待制のSNSで大きくなりましたし、「モンスターストライク」も、ネットゲームの対戦が流行り始めた中で、友人と一緒にスマホを出してプレイする形にこだわってヒットしたという経緯があります。SNSで面識のないフォロワーが1000人増えるような世界線ではなく、認識している同士のつながりを強固にしたいという考えがベースにあります。
――どのような企業理念を掲げて事業運営をされているのでしょうか?
間宮:先ほどもお伝えしたように、コミュニケーションの量や頻度よりも、熱量の高いエモーションといった質の部分を大切にしていきたいというものが前提にあります。そのため、パーパスは「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」。それを実現する上で、「『心もつながる』場と機会の創造。」というミッションを掲げています。
この創造につながる意思決定の軸が、「ユーザーサプライズファースト」というミクシィウェイであり、それをより具体的な行動に落とし込むための指針として、バリュー(発明、夢中、誠実)を定めています。当社ではこれらの企業理念体系を総称して「PMWV」と呼んでいます。2022年にコーポレートブランドをリニューアルするとともに、企業理念を再定義しました。
「マーブルワークスタイル」で生産性を高める
――社員が働きやすい環境づくりに注力していると伺いました。具体的な取り組みを教えてください。
間宮:事業が広がり、社員数が増えたこともあって、多様な価値観だったり、生活スタイルだったりと、それぞれのライフステージに合わせた働き方の選択肢を提供したいという考え方があります。それらを通じて幅広い人材が活躍できる環境を整備しようとしています。
その一つが「マーブルワークスタイル」制度です。オフィスワークとリモートワークの特性を生かし、それぞれの働き方を融合させて、生産性を高めていくことを目指しています。この制度では、部署ごとに最適な出社回数を選択できるほか、正午までに本社オフィスに出勤できるという条件を満たせば、日本国内のどこでも居住していいことになっています。
マーブルワークスタイル以外では、2023年4月から「フルフレックス制度」を試験的に導入していたり、働く場所の柔軟性を高めるため、サードプレイスでの就業を可能とする「マーブルロケーション」制度の運用を開始したりしています。
――マーブルワークスタイルが制度化されたのはいつですか?
間宮: 2020年7月に試験運用を開始しまして、2022年4月に正式に制度化しました。事業のフェーズや特性によって出社回数や頻度、タイミングが異なるため、試験運用期間中に社員へアンケートやヒアリングを行いました。その結果を元に、厳格に回数などを絞らず、部署ごとで自由に決める方法に着地させました。ですので、週2回の出社をルールにしている部署もあれば、特に縛りを持たせず必要な時だけ出社するような部署もあります。
元々はコロナ禍前、時短勤務の方だったり、育児や介護などに関わる方だったりと、一定の事情がある社員を対象に働き方改革を進めていこうといった議論がありました。ところが、コロナ禍以降は働き方がガラリと変わり、誰でもリモートワークが当たり前になりました。それであれば限定的ではなくて、もっと多くの社員が自律的に働き方をコーディネートできるよう、全社でマーブルワークスタイルを導入するような動きが出てきました。
執務エリアのデスク環境を統一する理由
――2020年3月には本社オフィスを移転しました。経緯を教えてください。
熊坂:旧本社オフィスに関して、2011年時点では3フロア、約1000席の規模でした。2013年にモンスターストライクをローンチして以降、採用が急拡大し、オフィスのスペースが足りなくなりました。従って2015年、2016年とサテライトオフィスを構築し、2017年には旧本社オフィスを増床。2019年には新たなサテライトオフィスを設けました。最終的には渋谷界隈で5拠点もある状況になりました。
そこで散らばっていた拠点を集約し、自社におけるより良いコミュニケーションのあり方を再構築するとともに、渋谷の街からコミュニケーションサービスの新たな価値を創出していくという目的で、2020年3月に現在の本社オフィスへ統合・移転したわけです。
――新しい本社オフィスはどういったフロア構成になっているのでしょうか?
熊坂:36階が「交流の場」、35階が「驚き・発見の場」、そして28〜34階が「つながりの場」というコンセプトを掲げています。
36階は来訪者にとってメインエントランスのフロアで、ミーティングルームが並んでいます。35階はさまざまな文化が混じり合う、渋谷という街のカオスな雰囲気を意識した作りになっていて、社員食堂やコンビニエンスストア、セミナールーム、撮影スタジオなどが設置されています。28〜34階は主に社員が働く執務エリアです。ここには電動昇降デスクとアーロンチェアをセットにして2,900席を配置しています。
――コミュニケーション再構築とありましたが、以前はどのような課題があったのでしょうか?
熊坂:オフィスの物理的な距離が離れていると、社内ミーティングだけでも移動に4、5分かかるなど、無駄なコストが発生していました。また、今のように社員食堂などはなかったため、社員が皆で集まれる場所も少なかったです。
曽我部:例えば、別の建物にいるメンバーにちょっと話しかけたいと思っても、社内チャットでなかなか捕まらないことがあったり、書類の受け渡しだけのために移動をしたり。そういうところが結構ストレスになっていましたね。
ーーそれ以外にも課題は?
熊坂:当社は部署の異動や再編成が多く、席替えがかなり頻繁に起きます。以前は建物が別々だから引っ越しも大規模で、負担がありました。
今のオフィスの執務エリアをシンプルなレイアウトにしたのは、それが関係しています。たとえ部署の大きさが変わってもレイアウト変更せずに荷物の移動だけで済みます。今も半年に1回程度は部署異動があるのですが、以前と比べると格段に楽になっていますね。
加えて、先ほどお話ししたように全席のデスクとチェアを統一したのは、どこへ異動してもまったく同じスペックの環境で仕事ができるためです。前は「このデスクじゃ働きにくい」「椅子が違うから変えたい」といった声がありましたが、一切なくなりました。社員にとってストレスがない環境を作れたのかなと思っています。
用途に応じたコミュニケーションの場を提供
――コミュニケーションの改善によって成果が生まれているものはありますか?
熊坂:コミュニケーションを取りたい時に取れる環境をオフィスとして整える必要があると思っていて。例えば、懇親会をしたければその場所があるし、打ち合わせしたければミーティングスペースがある。用途に応じて使える場所を我々としては用意しているつもりです。
実際に成果も見られます。内階段の周りに「ミニコラボエリア」と呼んでいるスペースを設けているのですが、そこに無料のドリンクバーを置いているので、さまざまな部署の人たちが集まって休憩したり、活発にコミュニケーションを取ったりしています。人が行き交う場所をそのように設定したわけですが、狙い通りうまく活用されていると感じています。
後は、先ほどお伝えしたように社員食堂がなかったことや、コラボレーションエリアと呼ぶ休憩スペースも今よりはやや狭いこともあり、社内で各部署の懇親会などはほとんど行われていませんでした。でも今はコラボレーションエリアを貸し切って「千葉ジェッツ」の応援をしている人たちがいますし、つい先日は社内部活動の「模型部」が皆で集まってプラモデルの組み上げを行っていました。
――ちなみに、皆さんがお気に入りの場所はどこですか?
熊坂:新しいオフィスは仕切りがほとんどなくてオープンな一方で、実は一人でこもって作業したり、静かに休憩したりする場所はありませんでした。そこで2024年初頭に工事をして、31階の一区画に個人向け休憩エリア「REST ZONE」と、集中エリア「DEEP ZONE」という場所を作りました。私はそのREST ZONEに休憩時間は毎日いますね。
間宮:私は36階の会議スペースです。通常は窓が1面しかないのですが、中には2面の部屋があって、外の景色を眺めながら会議ができるのです。気分が上がるので気に入っています。
持田:私は35階の「ディシジョンルーム」。大型のLEDモニターがあって、よく部署の懇親会や歓送迎会などを行なっています。社内でこうした会が開けると、業務が立て込んでいても少しだけ顔を出すこともできるのでありがたいです。
曽我部:「スクエアガーデン」という緑が溢れるスペースがあって、私はそこによく出没します。デスクワークで疲れた時などに、緑に癒されに行きます。置いてあるソファもいろいろな種類があるので、その日の気分によって使い分けながら、コーヒーを片手に一休みしたり、作業したりしています。執務エリアと休憩スペースの中間という場になっていて好きですね。
――本日はありがとうございました。
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取材のウラ側
MIXIが新本社オフィスを開設したのは2020年3月。思い起こしてみれば、まだ新型コロナウイルス感染拡大の初期段階であり、渋谷の街を行き交う人もまばらだった。そんな最中の移転プロジェクトはさぞかし苦労があったはずだが、インタビューからはそれを微塵たりとも感じさせず、むしろコロナ禍のタイミングによってさまざまな制度が生まれたことをポジティブに捉えていた。その様子を見て、これが渋谷のベンチャーを牽引してきた会社のチャレンジ精神なのだと納得した次第である。
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