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日本ロレアル株式会社
日本ロレアルは、1996年に設立されたロレアルグループの日本法人で、化粧品の輸入・製造・販売を行っています。東京に本社を置き、アジアで初の研究開発施設を有し、革新と「美」の創造を追求しています。
Official Siteフランス・パリに本社を置くロレアルグループは、言わずと知れた世界最大の化粧品会社である。同社が掲げるパーパスは「世界をつき動かす美の創造」。その意思はオフィス環境などにも強く反映されている。その仔細について日本ロレアル株式会社でコーポレートアフェアーズ&エンゲージメント本部長を務める七尾藍佳さんをインタビュー取材した。
目次
——日本ロレアルは2023年度に2桁台成長と、過去最高の売り上げを記録しました。その要因は何でしょうか?
七尾:日本の化粧品市場の成長率は当社調べで1桁台ですので、市場平均を超える成長を遂げました。とはいえ、日本の化粧品市場自体も拡大を続けています。拡大の理由は2つありまして、一つは旺盛なインバウンド需要。もう一つは、競争の激化です。
群雄割拠が進み、トップ集団にいるメーカーがここ数年でシェアを減らす一方で、新しいブランドの力がどんどん伸びています。その結果、各社がより競い合い、イノベーションを盛り込んだ商品が生まれてきています。インフルエンサーマーケティングも進化しており、より多くを求める消費者ニーズに応えていく形で、市場が活性化しているのです。
その中で日本ロレアルが成長できたのは、コロナ禍で起きた変化にうまく適応したためです。近年の成長ドライバーであるメイクでいうと、マスクをしていた時代に、日本の若い世代のメイクや髪のカラーリングの嗜好性が変わりました。見せる部分が少なくなり、アイメイクにカラフルな色をたくさん使うようになりました。それに伴い、メイクアップの売り上げが伸びて、当社の「メイベリン ニューヨーク」や「シュウ ウエムラ」は昨年、今年と非常に好調です。
加えて、国産ブランドが根強かったスキンケア市場においても、2021年に美容皮膚科から生まれたスキンケアブランドの「タカミ」を買収し、経営統合に成功したことで業績アップにつながりました。
起業家精神を尊重
——経営理念について聞かせてください。社員一人一人が大切にしている価値観みたいなものはありますか?
七尾:当社はパーパスとして「世界をつき動かす美の創造」を掲げています。美(ビューティー)は、衣食住に比べると生活において必要不可欠ではないと思われがちですが、実はそうではありません。例えば、英国の黄金時代を築いた女王・エリザベス一世は自分の顔を白く塗ることで、君主の聖性を演出していました。美というものは政治にも社会にも関わっていますし、個人の内面においても自尊心に強く影響を与えます。人間の存在において根本的なニーズを満たすものだと私たちは定義しています。
また、当社の企業カルチャーに関しては、起業家精神に富んでいるという点が挙げられます。創業者のユージェーヌ・シュエレールは化学者で、髪を傷めない染毛剤を開発したことが事業の始まりです。これが原点にあるため、常にイノベーションによって成長をドライブすること、起業家精神を尊重することを今でも大切にしています。
それらを前提に、すべての社員の行動指針となるのが5つのキーワードです。
まずは「AMBITION」。日本語で野心的と言うと、あまりいいイメージがないですが、大きく自分の目標設定をできて、限界を常に越えようとチャレンジできる人が求められています。
次は「EMPATHY―共感」。例えばある社員が介護をしていたり、子育てをしていたりと、何らかのトラブルやチャレンジを家庭内で抱えている場合、たとえそれが人事制度になかったとしても、適宜一人一人の社員の状況を見て、会社として対応するようにしています。
そのほかには、変化していく状況に柔軟に自分を合わせて、必要なものはどんどん吸収して学ぶ「LEARNING AGILITY」、直感と分析のバランスをとり、複雑な状況を切り抜け、的確な決断を下す「JUDGEMENT」、粘り強く、立ち直るエネルギーを持続させる「RESILIENCE」が重視されています。
——起業家精神という話がありましたが、新規事業の提案なども社内からよく出てくるのでしょうか?
七尾:外資系企業はしばしば、グローバル本社で決められた方針が下りてきて、そのまま型通りに展開することが多いと思います。もちろんそうした側面もありますが、当社はブランドのメッセージングなどについて、ローカライゼーションの自由度が高いのが特徴です。
現在の日本ロレアル社長は元々、ラグジュアリー部門のマーケターとして活躍してきたキャリアなので、今までのやり方を踏襲せずに、とにかく「お客様響く良いもの、かっこいいもの」を作れと言っています。実際に、イヴ・サンローラン・ボーテのアジア アンバサダーに日本人を起用したり、メイベリン ニューヨークのマスカラに「たそがれブラウン」という日本人に刺さるようなローカライズ名を付けたり、こうした取り組みが日本では推奨されていて、成長を生んでいるので、本社からも日本の成功体験をグループ全体でシェアして各国でやりたいと言われています。
フランス文化である「カフェ」を重視
——日本ロレアルの職場の雰囲気はいかがでしょうか?
七尾:日本のオフィスには31カ国から社員が集まっており、多様性に富んだオフィス環境ができあがっています。どのような雰囲気かといえば、まさに「ONE L’Oréal Japan」のキービジュアルがそれを象徴しています。
オフィスの中心にあるこのビジュアルには日本で育った人、日本国籍だけど海外で育った社員などがいて、アイデンティティは多様です。
左上のアリさんはスーダンにルーツを持つ日本人で現在はパリ本社で活躍してます。一番左のマティルダはフランス人ですが、海外育ちで日本で研究者をしています。右端のヤンさんは在日コリアンで、東京を拠点に国内外でクリエイティブ活動をされているシュウ ウエムラ メイクアップアーティストです。
これが現代日本をよく反映している多様性の形ではないかと私たちは思っています。日本はより多様で進歩的な価値観を持つ方が増えていて、そういった個性豊かな才能が活かされる、ロレアルだからこそ提供できる環境があります。「美」のニーズもどんどん多様化している今、まさに時代の空気にフィットしている人を受け容れるオフィスです。
——2020年から2年かけて日本ロレアルの本社オフィスを改修しました。どういった目的があったのでしょうか?
七尾:本社を構える新宿パークタワーに入居したのは2006年です。最近の新しい商業施設に比べると、ビル自体がちょっとバブルの時代を感じさせる作りで、改装前はフリーアドレスではなく、各自決まった机があり、パーテーションで仕切られていました。
そこでコロナ禍の2020年から2年がかりでオフィスをリニューアル工事しました。一番重視したのが「コネクト(縁)」という価値観。それを具現化した代表例がカフェです。
カフェは、いろいろな部門の、さまざまな国の社員が偶発的に出会い、ランダムに会話を交わすことで、イノベーションや新しいアイデアが創出される場として捉えています。そこにはロレアルならではのフランスの文化が関係します。パリのカフェで現代哲学が生まれたと言われているように、当社もカフェでの議論や交流を非常に重視しているからです。
リニューアル前のオフィスにもカフェはありましたが、小さくて、コラボレーションスペースと言えるほどではありませんでした。今はカフェをオフィスの中心に置いて、社内を移動するときに大抵はカフェを通る設計にあえてしています。
実際、カフェはいつも和気あいあいとしていますし、オープンなカウンターになっているティーポットエリアでも、社員がコーヒーやお茶を淹れながら会話が弾んでいる光景をよく目にしますね。
なお、カフェ以外にもコラボレーションスペースは多数用意していて、オフィス全体の約6割を占めています。
——そのほかにも、オフィスのユニーク性を挙げるとしたらどこでしょうか?
七尾:美を専業としている会社なので、オフィスでも常に美に関するインスピレーションを得られるようにこだわっています。一例を挙げると、オフィス15階の南と北をつなぐ回廊を「ビューティーバレー」と呼んでいます。この両サイドにマーチャンダイズのディスプレイ、いわゆる百貨店にある什器のようなものがそのまま設置されていて、自分たちの商品が店舗展開されている状態をつくり出しています。
あとは、カメラや三脚、スクリーンなどが完備されたライブストリーミングの専用ルームが2カ所あります。ここではSNSを活用したインフルエンサーマーケティングを推進できるようになっています。
——オフィスリニューアルの具体的な成果を教えてください。
七尾: オフィスをリニューアルしてから2年連続で2桁台成長を達成できたのは、アピールできる成果だと思います。
現在、当社は月に上限10日間のリモートワークを認めています。最初は出社率が低かったのですが、今では全体で6割程度まで上昇しています。オフィスに来て働くことを強制してはいませんが、できるだけ皆で一緒に協働したいという思いはあったので、それが実現できていて、かつ事業成果にも結び付いているのは嬉しいですね。最近は出社する人がどんどん増えていて、社内のモニターなどが足りないという悩みもあるほどです(笑)。
ビューティーテックカンパニーへと変貌
——社会貢献活動にも積極的です。さまざまなことに取り組んでいる中で、特にロレアルの独自性が色濃く見えるものは何でしょうか?
七尾:ロレアルらしい社会貢献活動として、技術とイノベーションの活用が挙げられるでしょう。
2019年にパリのノートルダム大聖堂が火災で焼失した際、フランスのさまざまな企業が日本円で合計1000億円ほどの寄付をしました。そのうちの3割近くをロレアルを含む有名フランス企業が拠出しています。
もちろん私たちの寄付は建物を再建するために使われているわけですが、それとは別に、独自の貢献活動も展開しています。具体的には、AR(拡張現実)と専用タブレット端末を用いて、ノートルダム大聖堂の歴史、修復に使われた現代技術や伝統技術を学ぶためのコンテンツをつくり、それを世界中で巡回展示しています。2024年11月からは日本でも開催しています(※1)
(※1 特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」は、2024年11月6日(水)~ 2025年2月24日(月・休)の開催となります)
なぜこういった取り組みをしているのかというと、当社は「ビューティーテックカンパニー」へと変貌を遂げているからです。例えば、テクノロジー見本市「CES 2024」では、ニコラ・イエロニムスCEOがキーノートスピーカーで登壇して注目を集めました。
従来、高級百貨店の美容部員によるサービス体験は、特定の顧客にしか享受できないものでした。けれども、テクノロジーを使うことによってバーチャルでのサービス提供が可能になります。テクノロジーの力で一人一人の美を実現し、進化させることで、社会に貢献したいという思いがあります。
ですので、ノートルダム大聖堂を支援するにしても、単に建物を再建するだけではなくて、最新のテクノロジーを活用した形で何か貢献できないかと考えました。そうしてたどり着いたのが、先ほど述べた巡回展示です。
社会貢献に関して、もう一つはユネスコと提携して女性科学者を支援する「ロレアル-ユネスコ女性科学賞」を創設しています。背景にあるのは、世界中の研究者のうち、女性が占める割合は3割程度という、ジェンダーギャップの問題意識です。その状況を何とか変えていこうと、女性研究者を応援する奨学金などに力を入れているのです。
ちなみに、2023年にノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ教授もロレアル-ユネスコ女性科学賞のアルムナイです。日本では「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を設けていて、2025年に第20回の節目を迎えます。
——本日はありがとうございました。
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取材のウラ側
社員同士の交流、コラボレーションの場としてカフェスペースや食堂を設ける企業は少なくありませんが、日本ロレアルの場合、フランスの文化を引き合いに、カフェの存在価値や意義を強調している点が非常に興味深かったです。
また、創業100年を超える老舗企業でありながら、最先端のテクノロジーを取り入れて社会に貢献していこうとする姿勢は、同社が大切にする起業家精神そのものだと実感しました。
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