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Ubisoft Osaka
世界96カ国で事業を展開し、グループ全体で約2万人の従業員を抱えるゲーム会社、Ubisoftグループ。各国に30カ所以上ある開発スタジオのひとつとして、約15年前にスタートしたのがUbisoft Osakaだ。
Official Site現在、90人ほどいるメンバーのうち、半数くらいは日本人、もう半分は海外から来たメンバーだ。さまざまな国や地域から集まり、多様な価値観を持ったメンバーが協働することは、ゲーム開発においてメリットになるという。スタジオマネージャーの小保田宏幸さん、アートディレクターのSidonie Weberさんに、チーム作りにおいて意識していること、Ubisoft Osakaでゲーム開発に携わる醍醐味について、インタビューした。
目次
世界中の国と地域からクリエイターが集まるUbisoft Osaka
——Ubisoftグループと、Ubisoft Osakaの事業について、教えてください。
小保田さん(以下、敬称略):Ubisoftは1986年、フランスで創業した家庭用ビデオゲームの会社です。『アサシン クリード』や『ウォッチドックス』『レインボーシックス』など、世界的に有名な大型ゲームを数多く手がけています。現在は96カ国で事業を展開し、グループ全体で約2万人の従業員が働いています。カナダやヨーロッパ、アジアなど、世界中に30カ所以上の開発拠点があり、Ubisoft Osakaはそんな開発スタジオのひとつとして、約15年前に誕生しました。
Ubisoft Osakaでは、本物のギターを使ってプレイする音楽ゲーム『Rocksmith+』や、スピード感溢れるアリーナシューター『XDefiant』などの開発を担当しています。グループ内では比較的小さいスタジオで、メンバーは現在90人ほど。そのうち半数くらいは日本人、もう半分はヨーロッパ、北中南米、アジアなど日本国外から来たメンバーです。国籍にかかわらず、社員の6〜7割は2カ国語以上を話すことができるバイリンガルやトリリンガルです。
——多様な国や地域から来た方が集まっているのですね。Sidonieさんはどこから、どんな経緯でUbisoft Osakaに加わったのですか。
Sidonieさん(以下、敬称略):フランスで3Dアーティストとしてキャリアをスタートしてから、27年間、ビデオゲームにかかわる仕事をしています。二十数年前、ヨーロッパで経済危機が起こったことをきっかけに、Ubisoftの大きな開発スタジオがあるカナダのモントリオールに移住する決意をしました。
モントリオールでは、ひとつのゲームに2千人ものスタッフがかかわってプロジェクトを動かすこともありました。とても楽しかったのですが、大阪にチームがあることを知り、もともと文化に興味があった日本で新しい挑戦をしてみたい、という思いから転籍しました。
——さまざまなバックグラウンドを持つ人たちと一緒に働いてみて、いかがですか。
Sidonie:学ぶべきことはたくさんありますが、たくさんの文化が溶け合った環境で働くことは日々発見があり、とても面白いです。同僚たちはそれぞれ、個性的な価値観やスキル、仕事のスタイルを持っています。彼らから得たインスピレーションを、料理をするように組み合わせ、バランスを取りながら、アートディレクターとしての仕事に活かしています。
多様な価値観が混ざり合って起こる化学反応が、ゲームをより面白くする
——多様な価値観を持つ人たちが集まることは、ゲーム開発の上でもメリットがあるのですね。
小保田:Ubisoftの製品は、日本国内のみならず、世界中のプレイヤーを意識して開発しています。そういった意味でも、いろいろな国や地域の人が話し合って作ることで、製品の厚みが出てくると考えています。多様な価値観が混ざり合ったときに起こる自然な化学反応が一番面白いですね。
みんなでひとつの製品を作るというゴールについては、誰にでも伝わるようしっかりと共有しますが、それ以外の部分、働き方のスタイルや仕事以外の場面での行動などは、それぞれ自由であっていいと考えています。
——チームづくりの上で、難しさを感じる場面はありますか。
小保田:例えばチーム内に日本語が話せない、または英語が話せないメンバーがいる場合など、ミーティングの形式によってはコミュニケーションコストがかかることはあります。以前はプロジェクトマネージャーが専任の通訳のような役割を担って解決していましたが、最近はスタジオにバイリンガルの人が増えたり、英語に対する意識が高まってきたおかげで、自然に通訳のような役割を担ってくれる人が現れ、メンバー同士サポートし合う体制ができあがっています。
また、世界各地に散らばったスタジオが共同でひとつのプロジェクトを進めるのも、Ubisoftの特徴です。例えば『Rocksmith+』の開発は、大阪に加え、サンフランシスコやプネー、ブカレスト、上海などのスタジオがかかわっています。物理的な距離に加え、各国の時差もあるので、意図が不明瞭になって誤解を生むことのないよう、コミュニケーションの上でもさまざまな工夫をしています。
プレイヤーの人生を豊かに。ディテールへのこだわり
——異なる文化や価値観が混ざり合う、刺激的な雰囲気が伝わってきます。事業を通じて、どんなことを実現したいと考えていますか。
小保田:「ゲームを通じてプレイヤーの人生を豊かにする」というミッションを掲げています。プレイしていて楽しい、熱中できる面白いゲームを作ることはもちろんですが、プレイすることで新しい発見があり、これまでに味わったことのない体験ができるようなゲームを生み出すべく、メンバーが力を合わせ取り組んでいます。
例えば『アサシン クリード』というゲームを開発する際には、舞台となる時代の雰囲気を味わってもらうため、とことんディテールにこだわっています。歴史学者と一緒に、細部まで綿密なリサーチを行っています。
『Rocksmith+』は、本物のギターを使ってプレイするゲームです。楽しみながらテクニックや演奏法を知り、気づいたらギターが弾けるようになっている。ゲームだけれど、プレイするうちに色々な曲に出会い結果として人生が豊かになる…そんな事を’意識して作っています。
Sidonie:アートディレクターとして『ウォッチドックス』の開発を担当したときには、舞台となる街へ何度も取材に行き、街並みや風景の写真を撮って、徹底的なリサーチをしました。サンフランシスコを舞台にしたバージョンがあるのですが、夏のサンフランシスコの風物詩と言えば「霧」です。ゲーム内でも霧を忠実に再現するため、気象の専門家の協力を得て、霧が発生するメカニズムへの理解を深めました。
——ディテールへの圧倒的なこだわりが、世界中のファンを惹きつけるひとつの理由なのですね。
考え方や文化の違いを尊重し、助け合うインクルーシブな社風
——Ubisoft Osakaで活躍しているのは、どんな方が多いですか。
小保田:本当にさまざまな人が、それぞれの個性を活かして働いているので、なかなか一言ではまとめられないのですが……あえて言うならば、違う考え方や文化を排除することなく尊重し、助け合おうという「インクルーシブ」な精神を持った人は、自然に溶け込むことができると思います。
また、「誰かが決めてくれるだろう」と待つよりも、自分から積極的にコミュニケーションをとれる人のほうが楽しく働けるのではないでしょうか。典型的な日本企業では、同じグループ内でも、別の会社に何かを尋ねたいときに、まずは上司を経由して正規のルートで手続きを進めなければならない場合が多いと思います。Ubisoftには、プロセスは大切にしつつも、気軽に担当者と直接連絡をとり合いながら、物事を進めていく文化があります。
——小保田さんご自身は、英語を使って海外の人たちと働くことに、もともと抵抗がなかったのですか。
小保田:私はもともと、日本のゲーム会社で働いていました。ワーキングホリデーに参加できる年齢のうちに海外へ留学したいと思い、上司に相談したところ、アメリカ支社に異動させてもらえることになったのです。初めはシリコンバレーで、その後サンフランシスコにあるUbisoftの拠点で働くうち、自然と今の働き方に馴染んできたという感じです。私自身の経験から、何事もまずは環境に「飛び込む」ことが一番重要なのかなと思っています。
チームのメンバーを家族のように大切にする「ファミリー・マインドセット」
——Sidonieさんは、Ubisoftの社風についてどんなふうに感じていますか。
Sidonie:いいところはたくさんありますが、一番好きなのは「ファミリー・マインドセット」でしょうか。チームのメンバーを家族のように大切にする、あたたかい雰囲気があると思います。一度Ubisoftを離れた人も、別の仕事を経験してまた戻ってくるくらい、居心地がいいんですよ。
小保田:一般的にアメリカの会社は、まず株主を重んじ、従業員とは対等な関係を築くという価値観を持っている場合が多いと思います。一方、Ubisoftはフランスの会社です。株主のみならず、顧客や従業員、銀行など、関わるすべての人を大切にしようとする文化が、グループ全体に根づいています。社員の雇用を守り、個人を尊重する土壌があるので、その点が働く人の安心感につながっているのではないでしょうか。
——2万人もの従業員を抱えるグループ会社で、家庭的なカルチャーを維持できているのは興味深いです。外国から日本へやってくる人たちに対して、仕事以外の面でのサポートはあるのですか。
小保田:色々な国から来た仲間に気軽に相談したり、自然にお互い助け合ったりできる風土があることがまずは大きいと思います。日本では、例えばマンションの契約ひとつとっても、世界の常識に比べかなり特殊です。最初の1カ月間くらいは会社が借りている住宅に住み、新生活を立ち上げてもらうなど、会社としても日本文化に馴染んでもらうための工夫をしています。日本語教室にも無料で参加できます。
——逆に、日本人のメンバーへのサポートにはどんなものがありますか。
小保田:グループ内では英語を話すメンバーが多いので、これから入社する方にも、積極的に英語でコミュニケーションをとってほしいと考えています。英会話教室もありますし、オンラインで英会話を学ぶ場合の費用も補助しています。
新旧の文化がミックスされた街・大阪で、世界に羽ばたくゲーム作りに挑戦する
——働く場所についても教えてください。海外からやって来るクリエイターは、日本、中でも大阪という街で働くことをどうとらえているのでしょうか。
小保田:日本は昔から、ビデオゲームの聖地として有名な地域です。アニメなどユニークな文化があり、日本で働くことに魅力や新鮮さを感じる方は多いようです。中でも大阪は、都会のすぐ近くに落ち着いた住宅地があり、京都や奈良など、日本の伝統的な文化に触れるにも便利です。実際、京都から通勤している人もいるんですよ。
——リモートワークで働く方もいるのですか。
小保田:コロナ禍になって間もなく、リモートワークを取り入れました。リモートでの開発環境が整っていることもあり、最近の出社率は平均3割程度に落ち着いています。個人の事情や希望に合わせつつ最高の仕事ができるようなワークライフバランスを実現できるよう、自宅とオフィスの両方で仕事ができるハイブリッドなワークスタイルを目指しています。
——最後に、Ubisoft Osakaが今後目指したい未来像についてもお聞かせください。
小保田:かつてUbisoft Osakaは、チームの中で完結する小規模なプロジェクトを手がけることの多いスタジオでした。現在はチームメンバーも増え、Ubisoftグループの一員として、各国のスタジオと共同でプロジェクトを進めることが多くなっています。今後はさらに、ほかのスタジオから助けを求められたとき、すぐに対応できるような体制を整えていきたいです。
そしていずれは日本から世界へ、Ubisoft Osaka主導で作ったゲームを発信していけるようなスタジオに成長できればと思っています。
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取材のウラ側
「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉をあえて掲げる必要がないほど、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが自然に活躍しているUbisoft Osaka。多様性から生まれる化学反応が、Ubisoftが手がけるゲームの奥深い魅力につながっているのだと納得する取材だった。ゲームとしての面白さを実現するのみならず、プレイヤーの人生を豊かにするゲームを作るため、徹底的な取材やリサーチを重ねるというエピソードも印象的だ。大阪を拠点に世界とつながり、日本にいながら世界各地のメンバーと一緒にひとつのプロジェクトを形にする。そんなスケールの大きな夢も、同社でなら描くことができそうだ。
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